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稲守任三郎とダンジョン戦記  作者: 正方形の木箱
第二章 笹山楓と高須芽愛里
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58話 笹山楓と高須芽愛里⑧

「教官!今の!同じ事すれば私たちもできるんですか!?」


「うちもしたい!」


「まぁまぁ落ち着いて、とりあえず端末に身体強化魔法の詠唱文が見れるようになってるから読み上げてみて」


「「了解!」」


2人は端末を開き、知らないうちに追加されていた詠唱一覧と書かれたアプリを起動する。


「アプリの中には色々魔法に関する資料とか詠唱文があるけど、初めは初級1の魔法までにしなさい。発動しない上に物凄く疲れるから訓練に響くわよ」


2人はアプリを操作し、試しに腕部限定身体強化魔法を使ってみる事にした。


「「みゃくけつりゅうわんげんこんごうじゅうこうきんしんせいかいたい四拾しじゅうとき、腕部時限身体強化!」」


体内から今まで感じた事のない何かが溢れて破裂するのではないかという感覚が全身に、心臓、首、肩、腕、指先と隅々まで広がっていく。


「「・・っ」」


初めて感じる身体中の違和感と圧力に加え、息苦しさに耐えられずしゃがみこんでしまう。


「大丈夫、限定身体強化は時間制限があるから。40秒だけそれに耐えて」


2人はまだ過労や、痛みに対する耐性が無い。

加賀等の自衛隊や、稲守のように1人で山に籠れるような人とは違い、2人はついこの間まで学生だったのだ。

40秒という時間ははたからみればとても短く、歩いて40m程しか進まないが、その40秒が何分にも何十分にも感じる。


10秒、20秒と時間が過ぎる頃には、2人もなんとか身体強化の余波に慣れては来るが、立てる程ではない。

そして40秒が経過し、身体強化が自動で解除された。


「「はぁ、はぁ、はぁ」」


吹き出る汗。


腕で身体を支える事ができず、寝転んでしまう。


「さ、今日はもう休みなさい。今後は肉体活性訓練、そしてこの身体強化魔法順応訓練の毎日だから、覚悟しておいてね」


代わり映えのしない日々に飽きが来ていた2人。「「りょ、了解…」」


寝転ぶ2人がなんとか立って歩けるまでに1時間もかかった。


2人はもうその日は訓練できるほどの気力が無く、自室に戻りベッドに寝転びすぐに眠ってしまう。


次の日からは、無酸素運動、有酸素運動、射撃訓練、ダンジョンでのゴブリン、サハギンの討伐による実射撃訓練をしつつ、身体強化魔法を行使する日が続く。

もちろん訓練続きではなく、たまの長い休みを挟みつつ、順調に訓練と魔法に慣れ始め、3ヵ月が経過した。


卒業まで残り半年、ゴブリン、サハギンの討伐も加賀と同等とは行かないが、以前のような醜態は晒さずに素材も剥ぎ取りまでできるようになった2人は、今後のプログラムについて、加賀に相談する事にした。


「教官、今後についてなのですが…」


「オークに挑戦したいです」


「んー、正直、私もゴブリンとサハギンで時間を無駄にするのはって考えてたの。一応上官にも相談したのだけれど、他校と足並みを揃えるって事で却下されてるのよ」


「他のダンジョンはどうなのですか?」


訓練とゴブリン、サハギン、身体強化魔法と代わり映えのしない日々に飽きが来ていた2人。


「飯岡ダンジョン以外の千葉県にあるダンジョンは、限定版じゃない通常の身体強化が前提なの。それにはオークを倒す必要があって、私も意見具申はしてるけど、足並みを揃えるの一点張りでね」


加賀としても未来の調査員を育てろという命令でこうして教官をしているにも関わらず、先へ進めないのはもどかしかった。


「実は他の訓練校でも一部の生徒が頑張って当初の予定より早く訓練課程を達成したのに先へ進めないっていう声が上がっているの。今色々協力者集めて先へ進めるようにかけあってるから、少し待ってもらえる?」


「わかりました。何か進展ありましたら直ぐに教えてください!。それでは失礼します!」


「失礼します」


その後2人は資料室に行き、最近見ているとある映像資料データを開く。


2人が見ているのは、稲守任三郎がオークやワーウルフと戦っている映像だ。


現状資料として保存されており、閲覧できるのは、富山にある滑川ダンジョンの上野の3層踏破、千葉にある飯岡ダンジョンの稲守の4層踏破までだ。

他のダンジョンでは調査員が録画していなかったり、そもそも4層どころか2層踏破までな事が多く、相手もゴブリンやウルフで、オークより弱い相手では参考にはならない。


「そういえばこの稲守って人、この時は身体強化魔法使ってなかったんだって」


初期の頃の資料を読んでみると、魔法が使えるようになった頃と、身体強化魔法を使いだしたころは大分離れていることがわかった。


「うちも調べた。スケルトンの時に使ったみたい。しかも部分強化もまだ作られてなかったらしいよ?」


「てことはこの人が作ったとか?」


「かも。でも公開されてないよね魔法の発見者もそうだし、作った人も」


「私だったら自慢しちゃうかも」


「わかる」


それから数週間、訓練と調査、資料室に通う日々を過ごし、残り4ヵ月が迫った頃。


「2人ともごめんね。オークの挑戦無理かも」


「「えー」」


「実は会議があってね?」


~2週間前、訓練校進捗会議~


「事前にお渡ししている各県の進捗について、何か意見のある方は」


訓練校進捗会議は、ネット通話にて行われた。

画面には47都道府県の各校のカメラ画面と、議長である訓練校連盟会長の48画面が広がっている。


「発言よろしいでしょうか」


声を上げたのは、石川県訓練校だ。


「どうぞ」


「石川県調査員訓練校、副校長の藤木です。進捗について、一部突出した生徒がいる事について、説明をして頂きたいです。富山県、千葉県、鹿児島県の3校が現状突出しており、プログラムの改善の要求をしていると聞いております。同様のプログラムな筈が、何故これほどまでに差が出ているのか、何か特別な事をしているのではないかという声も上がっていますので、どういった事をしているのかご説明を要求します」


事実この3校の生徒は、既にプログラムを消化しており、卒業の目標となる内容も達成済みで、1層ボスエリアへの調査を希望している。


「富山県訓練校副校長、野島副校長から説明を」


「はい。他の訓練校との差を認識したのは今回の事があっての事ですので、原因等はわかりかねます。我々はプログラム通りの訓練と、AIによる評価を基準として進めています。もちろん、特別な事等は一切おこなっていません」


「それでは答えに…」


「藤木副校長、まずは皆の意見を聞きましょう。では続いて、千葉県訓練校副校長、日野副校長から説明を」


「千葉県調査員訓練校、副校長の日野です。まず、我々としましては、なぜプログラムの改善ができないのかをお聞きしたいです。富山県と同様にプログラム通り訓練をこなし、AIによる評価を活用し、公平になるように進めておりました。そもそも、個人差があるのは当たり前ではないでしょうか。我が校では生徒が4人いましたが、自主退学をした生徒もいる状況です。その残った生徒の成長に対する意欲を無くすような事の方が問題と思います。以上になります」


「鹿児島訓練校副校長、山田副校長、説明を」


「おいら共としましては、千葉、富山同様で、プログラム通り進めただけじゃ。強かていうなら、他校ん一部にないごてプログラム消化に遅れが出ちょっとかをお聞きしよごたっ」


石川県を筆頭に、47都道府県中、25県に遅れが出ており、7校に至っては生徒が全員自主退学となっている。


「自主退学にしては仕方なか。個人の選択じゃ。しかし遅れはどうか」


それからはAIを用いての評価や、差ができた原因等を調べるが、結局のところは生徒次第であるというのが結論だ。さらにはAIとしても何故プログラム改善をしないのか、生徒の自主性を重んじるのであれば、先へ進ませるべきというのがAIの意見だ。


最終的に多数決によって、プログラムの改善は行われず、現状のままとなってしまった。


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