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稲守任三郎とダンジョン戦記  作者: 正方形の木箱
第一章 稲守任三郎とダンジョン
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5話 稲守任三郎と初ダンジョン②

警戒しつつ池へと近づき、様子見の為に空の薬きょうを池に投げ込んでみる。


トポンと音を出しつつ沈んでいく薬きょう。


しかし池の様子は変わらない。


慎重に池のふちに近づき、のぞき込み、池の状態を見る。


(先ほどの音はなんだったんだ?)


音の正体を探るべく池を見ていると、岩場に何か生き物が潜んでいるのが見えた。


(・・・魚か?)


エサになるようなものも釣り竿もない為、正体はわからないが、現状襲ってくる気配がないことから敵性生物ではないと判断した稲守は、水の採取を行うことにした。


鞄に入れていたプラスチック容器を池に入れ、水を採取する。


(さすがに成分分析せずに飲むのはバカすぎるな)


水分補給用のゼリーもまだある為、危険を犯す必要はない。


(さて、モンスターもいないし先に進みますか)


先に進もうと池に背を向けた瞬間。


ザバァァン!


「キシャアアアア!」


(まずい!背後を取られた!)


モンスターを避けようと前に飛び出し、前転しつつ受け身を取る。


(くそっ!)


銃は間に合わないと判断し、ナイフを取り出しつつモンスターを見る。


モンスターは見た感じ、ゲームに出てくるサハギンといったところか。

魚の頭部に人間のような四肢、手足には水かきがついている上、筋肉質な体格だ。


(ナイフはまずい!隙を作ってライフルで倒すしかないが・・・)


「キシャシャシャ!」


何かをこちらに向けながら怒るように声を出すサハギンらしきモンスター。


よく見ると、稲守が捨てた薬きょうに見える。


(もしかすると・・・)


警戒しつつ、懐に入れていた薬きょうを池に投げ込む。


するとサハギンは、投げ込んだ薬きょうを追いかけ、再び池に潜っていった。


(今だ!)


ライフルを持ち直し、ボルトを操作し、すぐに撃てる準備をする。


そして――


「キシャー!!!」


再びサハギンは池から飛び出て、こちらに薬きょうを見せつける。


その瞬間。


ドンッ!


ライフルの引き金を引き、サハギンに銃弾が命中する。


「キシャ!?」


音と衝撃にびっくりしたのか、両腕を交差するように顔を守るも、秒速300メートルを超える銃弾を防ぐことはできず、直撃を受けたサハギンは両腕を交差させたまま、前のめりに倒れた。


(危なすぎるだろサハギンめ・・・)


先ほど薬きょうを捨てた時は即座に池から飛び出てきたが、その前は池の底にいた為、水面に出るまでに時間がかかったのだろう。


とりあえず先ほどのゴブリンと同様に、サハギンの検証をすることにした。


まずは討伐してからの時間を計る為、死体が消えるのを待つ。


しかし10分、15分と経過するが、サハギンの死体はそのままだ。


(とりあえず持久戦ってことでこのまま待たせてもらうぞ)


食料を食べつつ、銃の手入れをしながらサハギンの死体を観察する。


「うーむ・・・」


倒してから2時間が経過した。

サハギンの死体は相変わらずそのままで、検証の為、新たに薬きょうを1時間に一度のペースで投げ込むが、新たなサハギンは現れず。


(もしかするとこのサハギンは一度きりなのか、それとも討伐証明として体の一部を取ると消えるのか・・・)


そのままさらに2時間待ち続けるが変化はない為、サハギンの死体から討伐証明となる物を切り取ることにした。


(とりあえずは大きなヒレと・・・水かきか)


ナイフで頭部にあるヒレのような物、そして手足の指を水かきごと切り取る。


(よし、このまままた検証だな)


15分、30分と様子を見るも、サハギンに変化はなく、1時間が経過しようとしたその時、

サハギンの死体が地面に吸い込まれ、消えていく。


(なるほどな、つまりサハギンは最低でも4時間は体の一部を切らなければそのまま。そして切り取ると1時間って感じか)


新たなサハギンが生まれてくると予想し、警戒をする稲守。


(薬きょう以外の物も試すか・・・)


食べ終わった後のエナジーバーの袋ゴミを池に投げ込む。


そして1時間、2時間が経過するがサハギンは現れず、袋は水面に浮いたままだ。


(このままいても時間の無駄か・・・)


残弾はまだあるが、このまま進んだ場合のことを考えた結果、検証不足になるのが嫌な稲守は、一度ダンジョンから出ることにした。


(一度戻ろう。物資も補充したい。それと体力よりも精神的にきついなこれは)


来た道を再び警戒しつつ戻り、ゴブリン広場を討伐しつつ通り抜け、入口へと歩く。


(ゴブリンは相変わらずだったな・・・)


討伐証明であるゴブリンの耳4つ、サハギンのヒレ、水かき付きの手とヒレ、池の水と周辺の土と草を持ち、初のダンジョン探索を終了し、地上に戻ることにした。


ダンジョンの入口にたどり着いた稲守は、閉じられている扉の前に立ち尽くしていた。


(これどうすんだ?)


とりあえず、インターホン的なものは無いか周囲を探しても何もない。

あるのは土や岩でできた壁と、人工物でできたゲートだけだ。


(そうだ、ここなら携帯端末の電波届くか?)


携帯端末を取り出し、アプリ一覧から電話機能を呼び出し、「担当者」と書かれた番号へと電話をかける。


プルルル。


『稲守様!? 今どこにいらっしゃるのですか!?』


「うぉっ!!」


大きな声で話しかけられ、びっくりする稲守。


「えっと、今ダンジョンの入口で、閉まってる扉の前にいるのですが・・・」


『わかりました! すぐに行きます!』


ツーツーツー・・。


「なんなんだ一体・・・」


体感的には1日も経っていないはずだが、担当者の慌てぶりからして、少し嫌な予感がした。


数分後、扉が開き、外から担当者の加賀と、見慣れた軍服を着た2名が出迎えた。


「ご帰還お待ちしておりました。まずはこちらへ」


「え? あぁ、はい」


急かすようにタクシーではなく、政府が手配したであろうオフロード車に乗せられ、どこかへと移動する。


「稲守様、あなたの様子から気づいてはいないようですので、状況を説明します。あなたは2056年11月25日にダンジョンへ入られました。そして、今日の日付ですが――11月27日になります」


「なんだって?」


「端末の日付を確認してください。自動更新されているはずです」


言われた通り、携帯端末を開くと、先ほどまで11月26日と記載されていた時計は、11月27日の表示がされていた。

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