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稲守任三郎とダンジョン戦記  作者: 正方形の木箱
第一章 稲守任三郎とダンジョン
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4話 稲守任三郎と初ダンジョン

「1週間・・・わかりました。ありがとうございます」


「ご武運を・・・」


女性の表情が少し悲しいような、悔しいような表情に見えたが、気にしたらダメだろうと思い、何も言わずに稲守はゲートへ向いて歩きだす。


「行ってきます」


ゲートが開くと、そこには洞穴の様な、岩や岩石、土で造られた洞窟のような入口が出迎えた。


(さて鬼が出るか蛇が出るか・・・あぁゴブリンはいるから鬼は出るのか)


ゲートが閉じるのを確認した稲守は、進む前にヘッドライトを装着し、持ってきていたランタンを付け、散弾銃の弾を取り出し、弾倉に込めていく。


(さすがにホテルでいじるのはダメだしな・・・ここでやるしかないってなると正直不便だな)


ジャケットに弾が込められた弾倉を入れ、一つは持っているM220散弾銃へと装着する。


「よし、行きますか・・・」


ダンジョンマップによれば、進んで直ぐに分かれ道に到達すると記載されている。


(確か左側は未探索だったな・・・)


端末でマップを確認しつつ、左へと進路を取る。

端末には各種センサーがマップと連動しており、歩くだけでマップが更新されるのはありがたい。

ライトだけだともし切れた場合に暗闇を進む事になるので、道しるべがあるなら帰れることは帰れる筈だ。


(しかし暗いな・・・ヘッドライトも高輝度広角タイプを選んで正解だ)


壁面には何もなく、灯りすらない暗闇の中、ライフルに付けたライトとヘッドライトを頼りに進行する。

5分程歩き続けると、少し先の方に灯りらしきものが見えてくる。


(なんだ・・・?)


銃を構え、用心しながら進むと、かがり火のようなものが壁に設置された入口とその先の広い空間が見えた。先の空間はある程度明るいようで、ライトはいらないようだ。

ライフルのライトとヘッドライトを消し、広場の様子を伺いつつ、歩みを遅くする。


(ここがモンスター出現ポイントか)


足音を立てないようにゆっくりと時間をかけて広い空間へと侵入する。

広さは直径目測40m程の円形、そして、奥へ続く道を塞ぐように、何者かがいるのが見えた。


「ギャギャ?」


(恐らくあれがゴブリン、数は一体か)


ライフルのボルトはすでに操作してあるので狙いを付けて引き金を引くだけで撃てる状態だ。

アキュートリガーを押し込み、いつでも撃てる準備をし、狙いを定める。


「ギャー・・・」


ゴブリンはこちらに気づいていないのか、こん棒を眺めつつ唸るように声を出している。

内部は響くのか、遠くにいるゴブリンの声が聞こえるという事は、こちらの音もあちらに聞こえる筈。

近づくのはリスキー過ぎるのでゴブリンに気づかせる為、わざと脚で地面を蹴りつけ音を出す。


タンッ


「ギャ? ギャギャー!」


音に気付いたと同時に稲守を発見したゴブリンは、こん棒を構えつつ、こちらに近づいてくる。


目測40m


「ギャギャー!」


声を出しながら歩きながら近づくゴブリン。


「ギャー?」


目測30m


こちらが動かない為か様子を伺いながらも、ゆっくりと近づくゴブリン。


一歩、一歩と近づき、有効射程距離である25mを切ったその瞬間、稲守はトリガーを引く。


ドンッ! と音と共に発射されるスラッグ弾は、ゴブリンの頭部へと命中。


「ギ・・・ギャ?」


命中と同時にボルトを操作して次弾の準備をしつつ、ゴブリンの様子を伺う。

倒れてピクリとも動かないゴブリンに慢心する心を押し殺し、警戒を続ける。

いつ動くかわからないゴブリンを見つめ、5分程経過した頃、ゴブリンは死んだと判断した稲守は、トリガーから指は離しつつ、銃をゴブリンへと向けたまま近づく。


青い血が頭部から流れており、表情はきょとんとした表情だった。


「ふー・・・」


息を吐き、緊張をほぐしつつ、ゴブリンのすぐそばまで近づく。


(さて、ゴブリンの討伐証明は耳だったか?)


ナイフで耳を切り落とし、ビニール袋へ入れ、バッグへとしまう。


(しかし、この広い空間に一体だけって贅沢過ぎないか?)


周囲を見渡しても、新たにゴブリンが出現する様子も無い。


(そういえばこいつの死体はどうなるんだ?)


周囲へと向けていた目線をゴブリンへと向けると、ゴブリンの死体が地面に吸い込まれるように地面へと沈んでいく様子が目に入る。


(なるほど、こういう事か・・・つまりは・・・)


「ギャギャーーーー!?!?」


上から鳴き声と共にゴブリンが落下してくる。


ドスン。


「ギャー・・・、ギャ?」


(幸い後ろを向いてくれている、これなら間に合うな)


銃を構え、先ほどと同じ様にゴブリンの頭部へと銃を向け、引き金を引く。


ドンッ


「ギュア・・・・!?」


今度は前のめりにゴブリンが倒れ、絶命する。


(これなら森で熊狩ってる方が緊張感があるな)


それからゴブリンが再出現する条件を探る為、検証する事数時間。


結果、ゴブリンが絶命してから10分が経過すると、ダンジョンは新たにモンスターをエリア内に放つ。

そしてゴブリンの討伐証明である耳を削いだ場合は、30秒以内にゴブリンが地面へと吸い込まれ、全身が沈むと同時にゴブリンが上から降ってくる事がわかった。


再び降りてきたゴブリンを着地と同時に倒して、奥の道へと進む。

道中は先ほどの分かれ道からゴブリンがいたエリアと同じで、何も無く暗い道が続く。

警戒しつつ進行していると、奥から水の流れる音が聞こえてきた。


(水生生物でもいると厄介だな・・・)


水の音がするエリアに入る前に、軽食を取りつつ、携帯端末にゴブリンの情報や再出現の条件を打ち込んでいく。


(銃だけだと不安だし、近接戦も視野に入れないと)


先ほどの戦闘を脳内で振り返りつつ、帰ったら近接武器の講師がいないかダンジョン庁に確認すると決めた稲守は、携帯端末をしまい、銃を構えながら、水の音がするエリアへと進む。


(おいおいおいなんだこれ・・・)


次のエリアは、壁からは滝のように水が流れ、その水を受け止めるように池が広がっていた。

陸地は池を囲むようにあり、そこを通れと言わんばかりだ。


(くそっ、滝の音が邪魔だ)


先ほどのエリアのように何もない場所なら索敵や察知する事は簡単だが、このように環境音が大きいと足音も聞こえない為、索敵が一気に難しくなる。


とりあえず目視でモンスターが居ないかを確認する稲守は、壁を伝いながら奥へと向かう。


(壁を背にしておけば、少なくとも背後からは来れないだろう。出たら死ぬしかない)


銃を構えつつ、ゆっくりと歩く。

池の周りには草花が生えているが、虫はおろか生物の気配がない。


そのまま壁伝いに歩いていると、奥に続くエリアの出口が見えてきた。


(本当になにもいない? いや、まだ池を見ていないな)


周囲を警戒しつつ、池へと近づく。


ビチャンという音と共に、水面に波紋が広がる。


(何かいる!)


銃を構える力が強くなり、一気に警戒度を上げ、周囲へと視線を動かす。

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