お前の判断ミスだ
こわっ!
百ゼロですね?
あなた百ゼロ求めてくるタイプですね!?
で、では、どうぞ~!
「ゲヘナ……。返事をしろよゲヘナ」
薄暗い天幕に響いた声を、椅子に腰かけている美しい少女からだと認識するには少し時間がかかるだろう。
声は悪魔が発したように陰鬱で、脳にこびりつくような嫌な感じがするからだ。美しい金髪を持つ少女は、退屈そうにひじ掛けに肘を乗せてから足を組みなおす。
ゲヘナと呼ばれた人物は、天幕の入り口付近に立って少女を見詰め返している。紺色の髪と赤い瞳を持つ青年だったが、病人のような、かすれた声を出した。
「なんだニーチェ。僕に何か言いたいのか?」
「山にダストン以外の勢力が現れたようだ。恐らくあれは、最南の田舎領主、第十三書記のカティアだ」
「それは本当か?」
青年は目を見開いた。少女は、よく回る舌を更に回した。
「私は嘘が嫌いだ……。時間の無駄だからね。カティアとダストンは、どうやら潰し合うこともなく共存しているようだ。あちらで仲良く手を組まれたら、二対二で条件は同じになるな」
少女は、はぁ、と溜め息をつく。
「さっさとダストンを仕留めて支配下におけば良かったのに、お前がぎゃあぎゃあ五月蝿いから……。お前の判断ミスだ。お前の責任だ。さあ、どうする?」
「ダストンは戦わないと知らせてきた。この土地からすぐに立ち去って、玉座を目指すべきだと僕は言ったのに――」
青い髪の青年――ゲヘナは、少し不機嫌になって答えた。年季の入った鎧を着込んでいる。かなりの重装備だ。
「ゲヘナは馬鹿なのか? それとも猿の提案を鵜呑みにするお人好しなのか? それを信じて川を渡ってみろ。敵に背中を向けることになるぞ。渡河中に攻撃を受けたら軍は、ひどいダメージを負うことになるな。果たしてどれだけが対岸に着けるのか……」
まるで人形のように美しい少女は、似つかわしくない増悪の感情を顔面に浮かばせた。今の状況が、相当頭にきているらしい。
ゲヘナはその雰囲気に、少し飲まれたようだ。
「……そんな事にはならないと、僕は思っている」
「フンッ……。もういいよゲヘナ。お前の甘ちゃん具合はいつもの事だ。いちいち腹を立てて悪かったなぁ」
「…………」
「私は、背中の憂いを取り除くために今から進軍するが、お前も来てくれるよなぁ? まさか私を、一人で行かせたりはしないよね?」
少女は椅子から降りた。水色を基調とした白のフリルが、ますます少女を人形のように着飾って見せた。
ゲヘナは歩いて行って、その前に膝まづく。
「一人で行かせたりはしないよニーチェ。君が行くのなら地獄の果てまでお供しよう」
今度はうっとりとした表情をニーチェは浮かべた。
「やっぱりお前は馬鹿だね。私は地獄へは行けないよゲヘナ。地獄に行くには少々殺し過ぎた。地獄の王も、私のような者は手に余るだろう……。行くとしたなら何も無い所だ。何も無い所に行って、永遠に囚われる」
「だとしても……」
言ってゲヘナは、ニーチェの手を取って甲に口づけした。
「僕の献身は変わらない。その場所へ僕も行けるよう、君と罪を分かち合おう」
ありがとうございます!




