スイッチ押したら不幸が爆発しそう
例えば、帰り道のブロック塀に
赤いスイッチがあったとしたら、
貴方は押すだろうか?
第十五話 お届けです!
「ああああ!! どうしよう? 私はこういうのが一番苦手なんですよ! くそっ! 分かるはずがない! これは未知だ! 知らなくて当然だ!」
「えっと、先生、どうしたんすか?」
「見えないかい六股君。私の目の前にあるんだ。謎のスイッチが……はくしっ!」
「へぶしっ! スイッチすか。試しに押したらどうっすか? はぶっ!」
「私も、状況から判断するに、押せという事だと思うのだけど、ど、どわっくしょん!! その後の結果が、まるで想像出来ないし、責任も取れる気がしない。だから押すのを躊躇ってるんだ」
「難しく考え過ぎじゃないっすか? へっくし!」
――く、くしゃみの音が邪魔過ぎる!
先生と六股君の声が聞こえてくる。何やら謎のスイッチを見つけて、取り扱いで意見が割れているようだ。
僕もスイッチを見てみたいと思うと、その思いに答えるように頭の中に映像が浮かびあがった。
――おんや?
「はぁ、はあっくしょん!! な、何これ? スイッチの頭に、あ、【兄】て書いてある!」
「靴下君にも見えたかい? へぶしっ! ず、ず、この場合【兄】って何だろうか?」
先生が戸惑っている理由が良く分かった。まるで最終兵器を発射するためのような、もしくは、非常事態に押して緊急停止を促すような、赤くて大きなスイッチだった。押せば何かが起きるのは間違いない。そんな雰囲気がプンプンするスイッチ。どうせ手詰まりの状態だから、一か八かで六股君が押せと主張しているが、スイッチの頭にゴシック文字で、【兄】と一文字書いてある。これが判断を迷わせた。
――兄って何?? なんで兄?
僕は頭を抱えて悩みに悩んだが、そんな男性陣をみかねて、オハナさんが痺れをきらす。
「早くしないと……くしゅん! カティアも私達もやられちゃうわよ! もう押したらいいんじゃない!」
カティアがスイッチを押せと命令したわけじゃない。僕達は自然に、そうすることが、事態を打開する方法だと思い込んだ。
「さぁ~てと、こちらもいくぞ!! 気持ち悪い人形め!! この世界に、おのれの様な醜悪の居場所は無いぞぉ!」
神木の精霊が吠えると、腕が急に圧力を増して来た。巨人の膝が力に屈して曲がり始める。このまま潰されてしまいそうだ。いよいよ時間がない。僕は腹を決めた。
「先生、スイッチを押して下さい!」
「よし、分かった! 押すよ。皆は構えて! せえ~の! はっくしょん! ああっ!」