Operation:MKRN
シグレは絶句した。なぜなら、絶対にあるはずのないものがそこにあったからだ。
「ただいまー」
彼女は勢いよく玄関のドアを開いた。帰ってくるや否や、靴を乱雑に脱ぎ捨て、階段を駆け上がり、2階にある自分の部屋へと一目散に向かっていく。彼女の瞳は光に満ちて、頬はピンクに染まっていた。上下に揺れる肩を落ち着かせながら、クローゼットに向き合い、深呼吸。彼女は意を決してその扉を開いた。
次の瞬間、彼女を取り囲む風景が瞬く間に変化していった。近代的なビル群、崩れ落ちた古代遺跡、一面広がる万緑と、穏やかに揺れる色とりどりの花畑。世界中の景色が目に飛び込んでくる。そして、全てが渦を巻く様に一点に吸い込まれ___________________________
気付くと彼女はとある一室にたどり着いた。
ダークブラウンの木材を基調とした室内。隅に積み上げられ、埃を被った異国の書物。部屋の中央と、四方の壁に沿って置かれたガラスのショーケースの中には、七色に煌めく小瓶がいくつも丁寧に並べられている。照明はなく、浅葱色のカーテンから透ける光が、さらに怪しげな魅力を醸し出していた。
そう、ここは、彼女が営む魔法道具屋なのだ。
途端、彼女の目はカウンターに釘付けになり、そして、冒頭へ戻る。シグレは絶句した。なぜなら、絶対にあるはずのない一冊の本が、そこに置かれていたからだ。その本は、昨日、彼女が1日かけて強力な封印を施し、誰の目にもつくはずのない店の奥の奥に仕舞い込んだはずだった。
「ど…………どう……して………………」
頭の中がぐちゃぐちゃになり、全身の感覚を忘れてしまった彼女は、ただ呆然と立ち尽くすことしか出来なかった。しかし、はっと我に帰り、血眼になって本の中を調べ始める。
「…ない………ない…………………」
真っ白になった彼女の頭の中には、今にも飛び出しそうな心臓の音だけが忌々しく響いていた。
「1カ月に5食限定、食べた者はその美味しさに思わず昇天しそうになるという、やっとの思いで手に入れたマカロンがない!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
こうして、「シグレの!ドキドキ☆マカロン奪還大作戦」が幕を上げた。
しかし、この時の彼女はまだ知らなかった。この出来事は始まりに過ぎず、影には強大な悪意が蔓延っていて、後に人々を大混乱に陥れる大事件へと繋がって行くことを。
ここまで読んでくださってありがとうございます!小説家になろうを始めたばかりで、試しに投稿してみます。続くかは…分かりません…!