還魂の儀
体調が良いうちに書き上げました。
よろしくお願いします。
今後は不定期になるかもしれませんがご了承ください。
~魔王城最上階~
「もっと集まると思ったのだが・・・ハンター共もやりよる・・・・」
魔王は紫に輝く長い髪を掻き揚げ、豊満な胸をさらけ出すかのような大きく胸元が開かれた漆黒のボディースーツに燃えるような深紅のマントを翻し玉座に腰を下ろす。
妖艶な笑みを浮かべながら、虹色に輝くその珠を掌に転がしながら優雅に眺める。
それは今回の魔王軍襲来イベントでハンター達から奪ったデスペナルティの経験値を凝縮して、溜め込んだ「不屈の魂」というアイテムだった。
「とりあえずは一人分の珠は完成した。さて誰にこれを授けるか。」
赤い髪を総髪に結い太い吊り上がった眉に金色に輝く眼は、その見る者を眼光だけで威圧する、魔王軍きっての剛腕の魔将ベルナルドか。
はたまた長い黒髪を優雅に靡かせ、漆黒のドレスを纏い、その黒き眼は全てを見透かしていると思わせるような笑みを浮かべる、美を司り夜の支配者でもある副官リリスか。
「どちらも我の側近中の側近だが、今回はリリスに授けよう。どうせすぐにベルナルドにも渡せよう。」
「リリスよ前に参れ!」
「はっ御身の前に!」
「これより還魂の儀を行う、受け取るがよいリリスよ!」
「ハッ、有難く頂戴いたします!」
深々と頭を下げ「不屈の魂」を受け取るリリス。その直後リリスの体が眩い光に包まれリリスの体内へと収束する。
リリスはこれまで見ていた景色が一変するかのような錯覚を得た。
煌びやかに灯される室内の燭台に、魔王城より見える夜景、その夜空に輝く星と月。
全てが初めて見るかのような感動が襲ってきた。
そして目の前に座する自身の絶対なる支配者であり、仕えるに値する魔王を直視した瞬間に電撃が脊髄を走るかの様な衝撃にとらわれ、改めて跪き無意識に涙がこぼれた。
「無様な様子をお見せして申し訳ございません!」
リリスは自我の芽生えに明らかに戸惑っている様子だった。
「何が無様なものか、そなたは美しいぞ。これでさらに美しく、そして共に語らうことができる。」
「魔王様この胸の高鳴りと溢れる高揚感は、何なのでありましょうか!?」
今までは命令されることに忠実に受け答えし、それについて考えることも何もせず、ただ実行に移すだけの存在だったリリス。それが頭の中にいろいろな思考が張巡り、目に映るものに色々な反応をみせる。
「フフッ、そう思案するのが自我であり、それが心だ。」
「これを・・・魔王様が・・・わたくしめに・・・」
「そうだ、これからは友のように存分に語らおうぞ。」
「もったいなきお言葉、有難き幸せ。一層の忠義に励みます。」
「よい、楽にせよリリスよ。」
「ハッ魔王様。」
「その魔王様というのは硬いな・・・しかし私は生まれ持っての魔王で、これまでに魔王としか呼ばれた事もない、どうしたものか。」
「今ここで魔王様の新たなお名前を拝聴頂きたく思います。」
「そうだな今日より私はアリスと名乗ろう、これからはそなたには、アリスと呼ぶことを許可する。」
「ハッ、アリス様、ご拝命頂きありがとうございます。」
「フフッ、アリスか、いい響きだ。もっとそう呼ばせる仲間を増やそうぞリリスよ。」
魔王アリスは、この退屈な魔王城で唯一語らう事の出来る側近を得た喜びに満足していた。
そしてそれは更なる、語らう事の出来る仲間を増やす欲望へと駆り立てるのであった。
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(ふぁ~心臓に悪いよロッくん・・・)
〔楽しかったな。〕
(楽しかったのかなぁ、スリリングすぎるよ、私が動かしてたら第一波で10回は死んでる自信がある。)
〔そうかもな。もっと強くならないとな。〕
イベントが終わり人気の少なくなった東門前広場には、一陣の涼し気な風が吹いていた。
彩音は見ているだけで心底疲れ果て、そこで寝ころんだロックスを眺めながら休んでいた。
(これからこんな戦闘が続くのかなぁ?)
〔もっと熾烈を極めるかもな。〕
(そうなの・・・)
彩音は今回のイベントでも相当激しい戦闘を目の当たりにしたばかりで、これ以上の戦闘となると一体どうなるんだろうと少し不安に思うところもあった。
そうしているとクレイジーギアのマスターの、やんやんさんが近づいてきた。
「今日はお疲れさまでしたロックスさん。」
「あぁ、やんやんさんお疲れさまでした。」
「ロックちゃんのがいいのかな、すごいね女の子であの技術は、今日も感動したよ。」
「あぁ、あれは私であって私ではないような・・・その・・・」
〔あまり余計な事は言わない方がいいぞ。〕
(わかってるよ、ロッくん・・・でも・・)
「なんか事情がありそうだけど、これからも頼りにしてますよ。今日はお疲れさまでした。」
「お疲れさまでした。」
魔界も解放されPvPも実装され、戦闘はより過酷なものになっていくことは彩音にも容易に想像できることだった。
そしてこれはMMORPGというゲームであるかぎり、進むしかないということも頭では理解してるつもりだが、ロックスという特別なキャラとの出会いが、彩音にとっては嬉しくもあり、またそれを失う怖さが、これ以上の過酷な戦闘に対しての不安という複雑な心境だった。
(でも進むしかないんだよね、立ち止まってはいけないんだよね。)
〔そうだな、進むしか道はねぇ〕
彩音はまた立ち上がり前を向いた。
その一方では魔王アリスが、着々と次なる計画を立ててることに誰も知る由はなかった。
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