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小さな悪意が生まれる時 3話
お師匠様はいつも夜遅く帰ってきてくる。しかも帰ってくるお師匠様は目が暗かった。
「お師匠様…大丈夫ですか?」
私がそう声をかけると、作り笑顔を私に見せる。
「お前はもう9になるんだ…俺が少しいないからって別に平気だろう?」
「………」
お師匠様が何をしようとしているのか、私にはわからない。けれど、お師匠様は出かける前はとても真剣な顔をしていた。きっと悪いことじゃない。それにここには私以外にも多くの人がいる。その人たちはみんな不思議な力を持っている。そんな人たちから慕われていたお師匠様たちなら、たしかに少しいなくっても問題はない…けれど…
「平気じゃありません」
私はきっぱりと言い切った
「私に声をかけてくれたのがすべての始まりでした。お母さんとお父さんがいない今…頼れるのはお師匠様だけなんです」
さすがに私でもこの時には、死んだ人間がよみがえらないことを知っていた。だから、私はよりいっそうお師匠様についていくことになっていた。
「!?」
私の言葉にお師匠様は驚いたような顔をしたがすぐに我に返り、私に言う
「なら…今日はもう遅い…明日はここにいるよ。それでいいだろ?」
お師匠様が私にそう言ったとき、それは私がここにきて、初めて笑った瞬間だった。




