与えたもの
俺がその言葉を詠唱した瞬間、人形が光る。その光が弱くなったときその人形は目を開けた。
「あ………ぁ…」
口を開け、言葉をこぼす目の前の少女。その少女に俺はその名前を付ける。
「大丈夫か?モノ」
その名前で呼ばれた少女は困惑を見せる。
「君がモノだ」
と、彼女の頭に手を置いた。モノはその手を持ち、気持ちよさそうな顔をしている。そして俺はそれらを与える。
「共鳴:人格付与」
その言葉をつぶやく。また、同じように光が当たりを包む。また、少しずつ光が小さくなっていき、やがて光が消える。
「気分はどうだ?モノ」
「最高だよ?お父さん」
「!?」
これは俺も予想外だった。まさか同い年ぐらいの少女にお父さんと言われるとは…
今俺が彼女に与えたのは、命と、人格、だ。例えば…自分を作った=自分の親だという概念も…だ。
モノは頭の上にある俺の手をつかみ、自分をなでるように動かしている。ふと後ろに目をやると、明後日の方向をむいている校長がいた。なぜだかはしらないが、無性に校長を殴りたくなったが、つかまれた片腕がそれを許さない。俺の力の約半分を与えたため、とんでもなく身体能力が早いのだ…
そんなこんなで、モノの拘束を逃れようとしていたとき、校長が言葉を吐いた。
「実は…だな」
その瞬間俺はぞっとした。校長の声音が申し訳なさそうだったからだ。
「まだ、その子の入学手続きが終わったばかりでな…まだ寮を用意してないんだ」
「つまり…?」
俺は恐る恐る聞いた。話は読めたができればそれを否定してほしいと願いながら。だが、現実は残酷だ。
「お前の部屋で寝かせてやれ」
「却下だ!!」
俺は即答した。情欲しないとはいえ問題しかない。何より1人用の寮に2人が…特に異性がいることを誰かに目撃されたら、俺は目立ちまくることになる。目立たないようにしてくれるんじゃなかったのか?
「し…仕方がないだろ…急だったんだ。それに、モノもそれがいいだろ?」
「うん!」
そう元気よくうなずくモノ。俺は頭を抱える。
「第一、俺がモノと同じ寮に住んで何も得がない」
「私という美少女と住めるっていうことがあるじゃん!」
えっへんと胸を張るモノ
「それは俺に足しては得ではない」
その言葉を言った瞬間、モノは後ろに雷が落ちてそうな表情をして、膝から崩れ落ちた。それを見て苦笑いをしながら校長は言った。
「得ならあると思うが…お前はこの子にいろいろ与えるつもりなのだろう?それならば、身近に彼女を置いていて損はないはずだ。それに彼女はあくまで”付き人”だからな…それに、お前がいろいろ教えなければいけないんじゃないのか?」
その校長の言葉に俺は反論ができなかった。核心をついてるからだ。
「私もお父さんと一緒がいい!」
目をキラキラさせながら言うモノ。こうなった以上俺には止めることはできないと判断する。
結局俺はしぶしぶ了承するのであった。