共鳴する何か
「………」
その紫髪の少女を見れば生きていることはすぐにわかる。涙を流しているからだ。
「大丈夫ですか?」
そう声をかけるのは彼方だ。
「………」
「いったんこの子を保護した方がよさそうですね」
「でもこの少女が犯人という可能性があるんだが…お前はどう思う?」
そういう俺の言葉にも、その少女は何も言わない。
「もし犯人ならこの場にいませんよ…殺人現場にとどまっても犯人からしたらデメリットでしかないですからね!」
確かにその通りだ。
「どうなんだ?」
俺は少女に聞いてみるが少女は何も答えない。その涙の意味も分からぬまま俺たちは少女を連れて1度学校に帰るのであった。
結果的に手柄は俺たちのものになった。彼女こそが手掛かりになるかもしれないとの判断なのだろう。
でも俺はそうは思えなかった。
~学校 保健室~
俺はその少女に彼方とともに話をかけようとしていたが、俺たちの言葉は彼女に届いていないように見えた。
彼方は彼女に話しかけるのが無駄だと感じたのか、保健室から出ていく。取り残されたのは俺と、その少女だ。
なんだろう…めっちゃきまずい…
「な…なぁ」
「何でしょう?」
「!?」
俺は言葉が出なかった。え?今の今まで無表情だった少女が表情を見せ、言葉を吐いたのだ。当然だと言える。だが…話せるのなら事情を聴くだけだ。
「あの館で何があった?」
「そのままですね…」
呆れたように少女はいうが、やがて言葉を紡ぐ
「男が入ってきて…気づいたらああなっていました」
「男…か…」
これは貴重な証言だ。彼女が無事に生きていたことに少し安堵する。でも…なんで彼女だけが生きているのかが分からないが考えてもわからない。それにしても、証拠を残さない犯人はどう考えても手練れだ。殺人現場に行ったときの生徒の反応を見てみると不安しかない。
「どうしたんですか?お兄ちゃん?」
一瞬空気が凍った。
「???」
混乱する俺を見て少女が言う
「お兄ちゃん?」
聴き間違いではなかったようだ。
「まて…お兄ちゃんとはどういうことだ…」
俺は頭を押さえながら言うが、少女は言う
「だって名前聴いてませんでしたし…それになんかお兄ちゃんから私と似たものを感じるんですよね…」
「できればその呼び方をやめてほしいのだが…俺にはそんな趣味はないのでな…というか、何で今更になって会話をしたんだ?会話ができるんならもっと前に話せただろ?」
「……あの人がいたから…」
「彼方の事か?」
「そうです…あなたには何か…共鳴する何かを感じるんですよね…でも彼女には感じなかった」
「だから…か…」
「今もあなたからにおいますよ?孤独の匂いが」
孤独の匂い…か…そうか…てっきり落とし切れていると思っていたのだがな…