依頼の始まり
「まったく…一体いつになったらあなたは遅刻しないんでしょうか…」
そうため息をつくのは彼方だ。俺は校長と話していたために少々遅刻をしたのである。
「まぁ、遅刻は申し訳ないと思っているぞ?これでもな」
「嘘ですね」
眉を細め、見透かすようにして彼方が言う
「なぜばれた!?」
彼方はエスパーの才能があるかもしれない。
「まぁ!喜んでください!私のおかげでその遅刻はなかったことにできますよ!」
俺の背中に悪寒が走る。この学校で遅刻判定にならないときは大体決まっているからだ。それは…
「依頼を受けてきました!」
「前言撤回、遅刻した方がいいわ」
「何でそんなことを言うんですか!」
「めんどくさいからだ。学生の本業は勉学だ。犯罪者を捕まえるような、警察のまねごとではない」
「いいじゃないですか!連続殺人事件なんですから!もし捕まえたら手柄が大きいですよ!」
その言葉に俺は一瞬思考が停止した。
「待て待て待て!お前今なんて言った?」
「もし捕まえたら手柄が大きいですよ?」
「違うその前、依頼の内容のことだ。」
「連続殺人事件」
そう蔓延の笑みで答える彼方に俺は恐怖を覚えた。
「そうか…頑張れよ!俺はここで寝てるから!」
そう俺は彼方に言ったのだが、彼方は俺の首根っこをつかんでずるずると依頼を受ける者たちの集合場所である事務所に行くのであった。
~事務所~
今俺は学校の事務所にいる。そもそも学校に事務所があるのかっていう問題なのだがここは普通の学校ではないので割とどうでもよくなるのだが…
「めっちゃ注目されていないか?」
周りを見ると、多くの生徒がこちらを見ている。
「そりゃー私のような期待の新人が来たから当たり前でしょう!」
と彼方は自信満々に宣言する。それを聞いていたのか、一人の生徒が俺に話しかける。その生徒は昨日俺の部屋に来た女子生徒だった。
「貴方の相棒さん…ポジティブなことはいいけどあんまり注目を買わないようにすることをお勧めするわ。そもそもEクラスがここにいるから見られているんだから」
そう言われ、周りを見渡すと、校長室で見た紙に書いてあったAクラス以上のせいとしかいない。それを知ってさらに俺は切実に教室に帰りたい衝動に駆られるのだが、ドアが開いて校長が入ってきてしまった。
「よく依頼を受けてもらったね。では今回の依頼を説明する」
そう校長は宣言し、僕らにピンでとめられた資料を配る。俺と彼方にも、紙が配られたのでそれを見る。
~依頼内容~
今回3件同じ手口で殺人が起こっている。被害者は主に裕福な家庭の肩が多い。何かしら金銭的目的で殺害されたと思われていたが、荒らされたような痕跡がないことから、強盗殺人の可能性は薄いと判断された。また、犯人につながる証拠を一切残していないことから、念入りな計画の元行われたと思われる。また上の理由から犯人を拘束することは難しいと判断されるため、今回は犯人につながる証拠・痕跡の発見を目標とする。
~殺害方法~
殺害方法は能力によるものとしかわかっていない。被害者に死に至らしめるような外傷はない{かすり傷などはあり}ことと、目に光がなく、生気が失われていることから、魂を奪わ得たのではないかという推測が出ている。それを確かめることはできないが、十分注意が必要な相手だということに変わりはない。また、単独犯ではない可能性もあるため注意が必要である。
~被害者について~
被害者は3件とも裕福な男性であり、家の召使と思われる人々も同じように殺害されている。共通点などは見つけられていないが、妙な噂が流れていたことがあったという。だが従者も家主も同様の殺害方法であることからして、噂の件は関係ないと思われる。
俺と彼方はそれを読み終え、顔を上げる。
「では、各生徒は3件の被害者宅に行き調査を行ってくれ」
そう校長が言う。周りは緊張感に包まれている中一人手柄しか見えていなさそうなウキウキした顔で話す生徒がいた。
「さぁ!行きましょう!」
それは俺の相棒の彼方であった。
やれやれ…と俺は頭を抱えつつ、指定された場所へ向かうのであった。