昔話
「懐かしい」
それは人影が放った一言。そんな感情は目の前のそれにはあるはずないのにそんなことをこぼしていた。
「お前がまさかここまでしぶとく残っているとは思わないだろうな…」
殺意を俺に向けながらそう言い放つと人影は地を蹴り俺の首を刈り取ろうとしてくる。
「お前に過去を語られる必要はない」
俺は身を引き攻撃をよけるとすぐさま距離を取る。
「時間はある。少し罪状についてはなそうか」
人影の顔は見えない。だが雰囲気からそいつが笑っているのは分る。
「天使と悪魔と人間…それぞれの種族には絶対に破ってはならない掟があった」
俺はその言葉を聞いた瞬間ナイフを握る手に力を籠める。 一刻も早く目の前の脅威を排除するために動く。だがそれは攻撃の形をとった回避であり、意味などなく人影はが口を閉ざすことはない。
「その掟は3種族の線引きを明白にすること。それぞれはそれぞれの役目がある。ゆえに混血など許されてはいなかった…だがある時問題が起きた」
「やめろ」
こぼれ出た言葉は意味をなさない。
「天使と悪魔の長がそれぞれ子孫を残す前に死亡したことだ」
「口を…閉じろ」
「そんな中愚かな天使と愚かな悪魔の間に3名の混血が生まれた」
「………」
その先の言葉を語らせてはいけない。そんな思いに突き動かされ俺は詠唱する。決して詠唱してはいけなかった魔法を
『シャイターン』
その詠唱を聞いた人影は歓声を上げる
「やっと本性を見せたか罪人…いや…混血の堕天使」