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よくある朝の風景
「ちこくちこくぅー!!」
食パンを咥え玄関のドアを乱暴に閉め、(ママ何で起こしてくれなかったのよぉ!!)とぷりぷり怒りながら走っている少女。ピンク色の髪をサイドで三つ編みに結い、少し赤みのかかった茶色の目と八重歯が覗く口元、怪我をしているのか、はたまたファッションなのか、脚の付け根(ちょうどおしりの辺り)に絆創膏を貼った、いかにもドジっ子と言わんばかりの見た目をしている彼女が「花咲といろ」だ。
新学期早々ツイてないなぁ…と思いながらも今はそれどころではない。通称地獄の坂を上りあの角を曲がると学園がある。あと5分の予鈴が鳴ると、その足は更に強く地を蹴っていく。地獄の坂を駆け抜け、角を曲がった時、急に現れた白い何かにといろはバランスを崩した。
(転ぶっ!!)
そう思った瞬間、まばゆい光がといろを包み込んでいった。あまりのまぶしさに目を瞑ると、一瞬ふわっと体が軽くなったような気がした。