「よし、ここから逃げようか俺」~聖剣から逃げて旅に出ます~
分の構成がおかしな可能性がありますがそこは皆さんの読破パワーでお願いしたします。
俺は別に完璧に強い人物では無かった。
物語に出てくる勇者のように沢山の人を魔法や剣を使い、仲間たちと世界を救うそんな憧れに。
だが俺には勇者の様な強い存在にはなれなかった。
それどころか俺は一流にもなれなくて二流止まりだったの才能ではあったが、たった一つだけ優れるものがあった。
「剣」だけは誰よりも優れていた。
この世界には沢山の種族に生き物がいる。
けれど種族全部が仲が良いわけではない。
それでも彼らは協力をしなければならなかった。
魔物なる存在が世の中に存在し人々を襲っていたからだ。
そして全種族は一時休戦とし、それぞれが力を合わせて魔物に対抗するようになった。
その結果様々な物が生み出されていき中には、世界を変えるような武器やスキルなどが生まれたのだった。
世界を変えるような力には「極位」と名付けられた。
こうして人類側は徐々に魔物達を押し返していった。
けれど中には何人もの「極位」の存在を犠牲にしなければ倒せないような魔物達も現れだした。
けれど俺は切る事だけは自分の中でも何にも負けない気がした。
だから俺は「剣」の極意に値する聖剣を与えられることになった。
それから俺は、魔物を狩りつくしていった。
基本的には一人で狩る日々を送ってはいたが一人の力だけでは倒せないような魔物が出た時にはその場に居合わせた奴らとも協力し倒すなんて事もあった。
そんな魔物を狩りつくしていく生活を送っていると俺は次第に周囲に「死神」なんて呼ばれるくらいには恐れられるようになっていった。
そして……
魔物の王と呼ばれる存在との対決に人類はたどり着くことが出来た。
その戦いには大勢の死者を出したうえで人類は勝利を手にした。
そこでも俺は戦いに生き残ることが出来た。
人類にを脅かす存在はこれにていなくなり俺はここで歪ながらも夢を叶えることが出来たと思う。
だが俺には周りの評価というのは考えては無かった。
「極位」の剣を持ち、戦場に現れては魔物達を切り殺していく姿から俺は人類に恐れられていたようだ。
その結果俺は世界を救った筈なのに今度は俺が世界の敵になっていた。
様々な種族が俺を殺しにやってくる日々が訪れた。
俺という存在は魔物達がいるころには良かったが平和になった今には必要無い物、らしい。
別に俺がみんなに何かしたわけでもないのにも関わらず毎日毎日毎日毎日誰かが襲いにやってくる。
そんな生活が俺は嫌になった。
誰だっていやだろうそんな生活、だって俺は勇者のようなみんなを救う慕われるような人になりたかっただけなのに。
「はぁ、ただ毎日剣を振るっていて勇者を目指していた頃が恋しいよ」
今日も何者かに襲われ殺したくもない殺しを行い逃げてきたところだ。
いつまで俺はこんな生活を送ればよいのだろうな。
「やり直せるなら聖剣を手に入れる試験受けなければ良かったよ」
「極位」に属する武器などは国が管理しているので保有者がいない武器に関しては年に一度、適合
者を選ぶ場が存在する。
俺はそので聖剣に選ばれたことが全ての切っ掛けだったな。
やっぱこうなってくると人間やり直したいと思うよな。
「あーあ、戻れるなら聖剣に選ばれることないただの剣士になって世界を回りたいな」
そんな言葉を言いながら俺は瞼を再び開けると過去に戻ってくれないかな、なんて甘い期待を胸に抱きながら俺は少しばかり休憩するのだった。
「はっ」
俺はそんな光景を最後に目を覚ました。
「いてて、ここ何処だってなんだ宿か」
俺は確か聖剣に選ばれて魔物の王を倒して世界に狙われるようになった筈なんだが。
でもここにいる俺の体は聖剣に選ばれたころの昔の体だ。
確か、聖剣適合者を選ぶ選定が行われるからその街までやってきて受ける為に宿に泊まったんだったな。
でも俺はベッドから落ちて首を痛めている様だった。
「でもあの光景は確かにリアルだったんだけどな、ん?」
そういう俺のがベッドから落ちて寝ていた所付近にここにやってくるまでの護身用に持っていた木剣が落ちていた。
「まさか、あれは未来だってのか!?」
そう。俺にはなぜか才能が極振りされているのか剣に関しては異常な才能を持っていた。
というか剣さえあれば夢の俺は何でも出来ていた気がする。
「ってか俺確かに昨日の夜、手入れをしてそのまま寝落ちしてしまったのか。てか俺このままだとあの未来を辿るのかよ」
ぶっちゃけ今の時代、魔物達が蔓延ってはいるがでも俺がいなくても他にも強い奴ら一杯いたしな。
あとこのままだと世界から命狙われるしな。
「よし、ここから逃げようか俺」
別に予約などもないしただ適正かどうかを選ぶだけなので俺以外の適合者が聖剣を使えばいいや。
そうして彼は宿を出る支度を済ませ宿の親父に別れを済ませそのままの勢いで街を出て行った。
「折角ならこのまま世界を冒険する冒険者になってみるのも面白いかもな。てかさっきの街で登録しておけば良かったぜ」
今の彼は木剣とはいえ腰に携えている剣に触れながら森の中を高速でかけている。
ただその速さはとても早く走るのが簡単な平坦な道でも出すことが出来ない程の速さで、時には気にぶら下がるツタを利用し森を抜けていく。
その姿はまるで猿のように。
「まてよ、俺街で聖剣の選定を受けたら帰る予定だったな。って事は俺野宿することも着替えとかもなんも持ってないってことか?……早く街に着かなきゃいけねーな」
そんな事を口に出しながら彼は森をかけていった。
暫く、森の中にいると奥から声が聞こえてきた。
彼自身が今いるところは道でもなんでもない所なので近くに森を抜ける道があるのだろう。
でこぼこの道を走っていくよりかは平らな道を走った方が早く着くと思い声のする方へと走り出した。
「キャー!助けてー!!」
声が聞こえてくる方向へ行くと高い叫び声が聞こえてきた。
「誰か襲われてるのか!?」
そのまま足音を消しながら彼はその騒ぎがする所の様子を窺うように身を潜めた。
そこには盗賊と思われる奴らが誰かを囲んでいる様だった。
「お前さん、随分有名らしいじゃねーか。命が惜しければ金品寄こしな」
「いやよ、誰があんた達みたいな盗賊なんかに!」
「じゃあここで死んでもらうかな!」
そういうと盗賊たちはその真ん中の人物に襲い掛かる為動き出した。
刹那その盗賊たちが持っていた武器が全て根元から切られていた。
「はぁ?なんじゃこりゃ」
次に気が付いた時には今自分たちが襲い掛かろうとした人物の前に誰かいるのに気が付いた。
「お前、何もんだ!?」
そう聞かれた彼はただその質問に答えることなく逆に問いかけた。
「あなた達、これ以上襲わないのなら今回は見逃しますが?」
そういいながら彼は手に持っている木剣を盗賊たちに向けて真正面から構えた。
そう聞いて盗賊の長ら人物は本来ならこのまま戦いを続けるだろうが自分たちが気づかぬ間に武器を全て壊すなんて芸当を行うこの男にこれ以上戦うのはマズイと判断し何も言わずにその場を去っていった。
盗賊たちが去っていったのを確認すると彼は襲われていた人に向いた。
そこには良い素材で作られた服にとても健康そうな体。
とても手入れが届いている髪を三つ編みにしている、男がいた。
男がいた。
(別に可愛い子を期待したわけじゃないけどあの悲鳴は偶々高い声だったのか)
なんて考えを顔には出さずにその人物に近り声を掛けた。
「大丈夫ですか?」
「ありがとね、見た目以上にアナタ強い人なのね」
「ええ、剣だけは強い自身がありますよ」
そうして彼はその人物と一緒に街に向かう事になった。
どうやらその人はマーチャさんと言い、世界を又にかけるくらいの人物で服や宝石、音楽に美術など多方面での才能から世界中で名が知られる人物らしい。
「アナタ本当に私を知らないの?これでも有名になったとは思ったのだけれど」
「いや、俺が世間に疎いだけだから知らないだけだと思うよ。にしてもそんなあんたがこんな森を一人で歩いていたんだ?」
「それがね、途中まで運んでくれていた馬車が壊れたから私一人で街まで向かおうとしてたのよ。ここら辺は盗賊とかはあまり出ないって聞いてたけどまさか遭遇するなんてね。でもアナタのお蔭で助かったわ~」
ここからは街までそう遠くは無いようなので、それから他愛もない会話をしながら森を二人で歩いて行った。
「そういえばアナタ一体どこから来たの?救ってくれたのはありがたいのだけれど横から急に現れたからびっくりしたわ」
「それはあれだ。俺は村出身だが昨日は聖剣がある街にいてね。そこから王都にでも行ったら世界中でも回ってみるのもありかなーって思って。だから森の中を突っ切ってたんだ」
「なるほどね、それなら横から現れたのも納得だわ。それじゃ魔剣でも狙いにここへ?」
「魔剣?」
「あら?知らなかったの?この先の街には魔剣があってよくこの季節になると聖剣に選ばれなかった人たちが魔剣を求めて流れてくるのよ。まだ早いから誰も来てはいないと思うけど」
「へー魔剣か」
この世界では魔物達を倒すために作られたもの聖装と魔装が主にある。
聖装は才能あるものを選抜し武器になる。とはいえ、世界を救う目的に作られたもの。
魔装は力があるものを選抜し武器になる。こちらは何らかの恨みを目的を達成するために作られたいわば復讐のための強力な武器って所だ。
「まあ、俺は魔剣には興味はないよ。ただの王都に行くまでの旅路で寄るだけさ。」
「アナタくらいの強さなら選ばれそうな気もするけどね~」
そういいながら俺たちは街の門まで来た。
別に門での騒ぎなどはなくなんの問題もなく街には入ることが出来た。
「そういえばここで旅の道具を買っていかなきゃいけないし、飯も食べなきゃいけねえ」
「なら今回はアタシがこの街の案内をするわ。お礼よお礼」
という事でまずは道具屋に連れてきてもらった。
随分大きな道具屋に連れてきてもらった。
まあ村からあまり出ないからここがどれ程の規模なのかはわからないが。
「じゃあ今回は特別に、マジックバックに全部に買い物全部入れた旅の商品をアタシが払うわ」
「そんな、マジックバッグってそれなりに値が張るものじゃ」
「いいのいいの命の恩人の特別なんだから」
そういいながらはマーチャさんは店員にパッと話をつけて商品を買ってくれた。
本当に申し訳ないとは思いながら世界的に有名な人は懐が広い事が分かった。
そのまま飯でも食べに行こうとするとある店の前に人だかりが出来ているのに気が付いた。
どうやら武器屋のようでもしかしてあそこがさっき言ってた魔剣があるっていう店なのかな。
「もう魔剣チャレンジが始まってるのね、どうする?あなたもチャレンジする?」
「いや、興味は無いがどんなものかだけは見てみたいな」
そういいながら俺たちはその武器屋に近づいていった。
中には一本の黒い剣がありその前に冒険者や騎士などが列を作ってまるで面接のような状況になっていた。
『あなたじゃ駄目ね。全然私を使いこなせないわ、もっと強くなりなさい』
「くっそー」
なんて言いながらそんな店の雰囲気を楽しんでいると店の奥から大男が出てきた。
「おおマーチャじゃねーか、なんだこっちに来てたのか」
「おら親父さん、久しぶりね。ちょっと用でこっちに寄っただけよ」
いかにも鍛冶師の親父さんっぽい人がマーチャさんに話掛けに来た。
どうやらこういった業種にもマーチャさんは通用するらしい。
「それで隣の男は一体?」
「ああさっき命を助けてくれた恩人よ」
そういわれては俺も会話に参加せざるをえない。
隣にいるとはいえ影を薄くしていた俺もその親父さんに向き顔を合わせた。
「どうも命の恩人です」
「ハハハ、命の恩人か。そりゃーめでたい事だな!それでここには何の用でぇ?」
「ちょっと噂の魔剣がどういったものなのか見たくて来ました。凄い気配を感じる剣ですね」
「そりゃーそうだ。うちの先祖が聖剣が作られてそれを超えることが出来る業物を造れたら最高の鍛冶師になれるって望みから出来た逸品だからな」
へー。そりゃあ、強いわけだ。
世界を救うために作られた聖剣を越える為に作られた魔剣。
相当な強さがあるはずだ。
「特にうちのは、かなり人格?いや剣格が相当人を選ぶから作られてから一度も正式な担い手が現れていないのもある意味第二の聖剣の様な感じになっているんだ。ほら、丁度人がいないことだからお前さんも近くで見てみろよ」
そういいながら親父さんとマーチャさんは俺の背中を押して無理やり魔剣の前へと送り出した。
改めて近くに来ると佇んでいるだけなのに恐怖感を感じるほどの魔を感じる。
「おう、魔剣よ。このあんちゃんは恩人らしいがどうだ担い手になれるか?」
『うん?親父さん、もしかしてその若い男の事?まったく私のお眼鏡に叶うような強さを感じないけれど?本当に?』
「……あんちゃん、命のマーチャの命の恩人なんだよな」
「はい」
「そうか、すまんな。無理やり連れてきてしまって」
確かに無理やり連れてこられたのもあるけど親父さんに後ろにいるマーチャさんも申し訳なさそうな顔をしているので正直かなり俺も心に来るものがある。
そうして心に傷を負わされながらも俺とマーチャさんはご飯を食べに店をでた。
さっきの事もあり、またしてもマーチャさんは俺にご飯代を奢ってくれた。
今回は俺も遠慮なしに高い食べ物を注文した。美味しかったです。
「じゃあね、本当に今日はありがとう。まだ数日はここにいるとは思うわ」
「俺は明後日には王都に向けてまた旅に出るとは思いますから、それまでにまた会えたらいいですね」
「そうね、また会えたらね」
そういい俺たちは別々に宿屋に向かった。
まあ俺は宿で向こうはホテルの様な所に向かいはしたが。
翌日、俺は食料などの買い物に出かけることにした。
買ってもらったマジックバッグには時間が止まるそうで生ものでも痛むことが無いのがとてもありがたい。
そんな買い物をしながら俺は昼になるとそこらの定食屋にお腹を満たしに入った。
そんな街の近くの空を飛んでいる大きな影があった。
『お、随分沢山の人間があの街にいるようだな。ちょっと人間たちでも殺しに行くか』
そんな事を言いながら影の正体である魔物は街へと降下を始めたのであった。
先ほどまでは騒がしかった街に静寂が訪れた。
それはそうだろう、突如いかにも恐ろしい見た目の魔物が街の真ん中に空から現れたのだから。
『さーて、ちょっと俺が遊んでみるか。ホレ」
そういう魔物の指先からはレーザーが飛び出し当たった建物が粉砕された。
その爆発と共に人々は再起動し、悲鳴と共に民間人は逃げ出し戦う力を持つ人達は武器を構え魔物との戦いに向いた。
建物の煙が消えるころにはその魔物を囲むように様々な人が敵意を向けていた。
聖剣の流れによって魔剣を求めにこの街に来た人たちもいるので人数はかなりいる模様。
『こちらが初めに仕掛けたのだから次はあなたえ達が攻撃しても構いませんよ』
ふざけた口調で魔物は挑発した。
そんな態度を切っ掛けに人々は襲い掛かった。
剣や槍に弓、炎に水に風。様々な攻撃が魔物へと向かうがそのどれもが魔物の体に触れるとはじかれてしまう。
そして攻撃が終わるとそこには傷一つない魔物が佇んでいた。
その体は光輝いて見えるくらいには無事だった。
そんな魔物に人々は次第に恐怖を覚えだすが魔物は次はこちらの番だと言わんばかりに近くにいた戦士を爪で刺していった。
助けに行こうが攻撃が通らない魔物を相手に攻撃を続けてがいるが攻撃は一切通じていない。
ただ一筋の攻撃が魔物に向かい行われた。
流石の魔物も何か感じるものがあったのか攻撃をやめ距離を取った。
その様は強敵にあったかの様だ。
「なんだ、そのまま切られてしまえば良いものを」
その男は屈強な肉体に恐怖を感じるほどの剣を持っていた。
そう、武器屋の親父さんである。
『魔剣か、そんなものがこんな所にあるとはな。だが見たところ覚醒は行われていないようだが』
「ほう、そこまでわかるとは中々やれる魔物と見た。まあこんだけの人数相手にやれるなんてよっぽどの魔物だろうがな」
『上物ならその魂はきっとおいしいでしょうね』
二人はそういい向きあったまま動かない。
周りも自分たちでは相手にならないとわかっているので動くことは決っしていない。
そんな静寂を破ったのは魔物の方だ。低く構えた姿勢から一気に親父に爪を振るう。
勢いよく、振るわれた爪を魔剣で受け止めると火花が散る。
そんなまま魔物が攻撃を行い、親父はその攻撃を迎撃する。
そのやり取りがずっと行われるかと思われたが再び魔物が距離を取った。
その二人の様子はやりあう前とは違い、何の変化もない魔物に比べ肩を大きく動かし明らかに疲れている様子での親父さん。
本来親父さんは鍛冶師であり剣を振るうものではない。
だが魔剣を作り出した一族であるからこそ魔剣が一時的に使わせているだけで本来の力も発揮することなく戦いに挑んでいる。
『残念だがお前は俺の相手にならない』
「はぁはぁ、そうだな。だがそれでもお前さんをここで放っておくわけにはいかないんだ」
『……そうか、ならもう死んでくれ』
親父さんの目にはその言葉が耳に入って来た時にはもう爪が頭に振るわれていた。
親父さんが認識した時には体が動くことなくただその光景を見ていることしか出来なかった。
ガッ!
っと音が鳴りその音がける頃には若い男が木剣でその魔物の爪を受け止めていた。
「お前さんは昨日の……」
「ええ、今日はあなたの命の恩人らしいですけどね」
店で食事を終え、温かい飲み物を飲みながらゆっくりしていると遠くで大きな音がしその後に大勢の人々がこちらに逃げ出していた。
俺はお金を払い店の外に出てその様子を確認しようとした。
そんな俺にマーチャが近づいてきた。
「そうやら広場に凄い魔物が現れて今から戦いが行われるそうよ」
「なるほど、魔物が街に」
もう俺にはあまり戦う意味はないが、傍で行われる命のやり取りを無視するというのも些か嫌なので歩きながらその広場に向かう事にした。
「アナタ、広場に向かうのね」
「はい、別に自ら戦いたいわけではないが見捨てる事はやっぱり嫌いだから」
「そう、ならアタシも一応見ておくわ。アタシは戦うきは一切ないから危なくなったら頼むわね」
俺達は流れに逆らうように広場に向かって歩いて行った。
近づくたびに争いの音が大きく響いてくる。
そして音がやんだ。
音がやんだ原因はどうやら親父さんがその魔物に向かって戦いを仕掛けた様だ。
親父さんは魔剣を持ち戦いに挑んでいるようで、そこから行われる戦いは街中で行われるような規模での戦いでは無かった。
そんな攻防が続くように思われたが魔物が距離を取る頃には親父さんの疲労が見られた。
「親父さん、厳しそうね」
「悪いが親父さんじゃ勝つことは出来ない」
俺は腰に携えている木剣にそっと触れた。
『……そうか、ならもう死んでくれ』
その言葉が聞こえた時には既に魔物の爪が親父さんに振るわれているように見えただろう。
だが俺にはその動きにも見切れている。
だから俺は動き出した。
魔物の爪が振るっている所に俺は割り込みその爪を剣で受け止めた。
木剣で受け止められない、なんてものは俺には不要。
俺が剣を持つって事は絶対に負けないんだから。
そしてガッっと音が周囲に響いた時に、周囲の人も魔物もそして守られた親父さんさえも目を見開き驚いていた。
そして直ぐに魔物は俺から距離を取り、先ほど以上に警戒しているように見えた。
改めて魔物の様子を見た。
二本足に羽が生えており、その体には光沢が感じられるくらい堅そうに見える。
そしてその堅さよりもっと硬そうに見えた。
『お前、一体何もんだ!?俺の爪を受け止めるなんて!?』
魔物の声を無視し親父さんに振り返ることなく声を掛けた。
「親父さん、大丈夫ですか?」
「あ、あぁ。無事だけどもお前……」
『あんた昨日店に来た』
「俺がこっからは殺りますよ」
そういい俺は木剣を魔物に向けた。
「お前さん、何でここにきた?」
『あぁ?別に深い意味はねえよ。ただ人が多くいたからちょっくら人でも殺しておこうかなって感じだ。いや、そんな事はどうでもいい、お前は一体何者だ?』
別にこの世界では俺は聖剣を持っているわけでもなんて存在でもない。
だから、
「別に、これから世界を回ろうとする何でもない人だよ」
『そうか、ふざけているんだな。ならお前も殺す。穴が開くところがないくらいに開けてやる』
「お前、あいつと戦うのか!?やめておけそれにお前のソレは木剣じゃないか!」
『そうよ!才能無いんだから今は逃げなさいよ』
「まあ後ろで休んでいてくださいよ。あいつはここで殺しますから」
そういい俺は前へと歩いて行った。
そのまま俺は歩いていく。
別にこの程度の魔物は聖剣がなくても問題はない。
そんな歩いてくる俺に魔物は突っ込んできた。
爪を振りかざす。その爪には気づかなかったが赤いものが付いていた。
辺りを見れば遺体があるのが見えた。
そうか、もう既に人を殺していたか。
その爪を木剣で受け流していく。
何度も何度も。別に大変ではない。すべて見切れているのだから。
攻撃が通らない俺に大きく手を振りかぶったので俺は蹴りを一発入れた。
『グゥ、この人間ごときが!!』
魔物は先ほどよりも体が大きくなった。
正確には筋肉がついて大きく見えているようだが。
『全部流されるのなら流せないくらいにお前が潰す!』
先ほどよりももっと早い動きで俺に詰め寄って来た。
早くはなったが避けることは簡単なのでその攻撃のすべてを躱していく。
それは魔物が疲れるまで行い今度は俺も剣を振り始めた。
確かに、丈夫な身体だが俺の前では無意味だ。
腕や足などに致命傷にならないくらいに傷をつけていく。
相手が攻撃しようものならすれ違いに攻撃を行っていった。
そんなやり取りは魔物の身体に数々の傷をつけた。
『お前、真面目に戦え!』
「そうだな、いつまでもお前を虐めるのは面倒くさいしな。それに親父さんお分はもうやれただろうし、じゃあ次で止めだよ」
そして俺は剣を後ろに構えた。
魔物の方もどうやらまだ力を出せるようで命を絞り出すが如く体に魔力を走らせる。
『死ぬのはお前だーー!!!』
地面を蹴った煙が起こるよりも早く動き俺に爪を向けてきた。
俺はその動きを認識し、その上でそれよりも早く動き奴を切った。
俺と魔物が次の瞬間には通り過ぎているように周りには見えただろう。
実際、この場で今のを認識した人はいない。
そして魔物は縦半分にずれ始めるとそのまま静かに身体が分かれ地に落ちた。
俺はそのまま木剣を腰に戻すとその魔物から落ちた魔石を手に取るとそのままマーチャさんの元に戻っていった。
「じゃあ、戻りましょうか。マーチャさん」
「アナタやっぱりとんでも無かったのね。アタシ一生この光景を忘れないと思うわ」
俺がそんな会話を始める頃に周囲も動き始めた。
周囲は魔物が倒されて事により喜んだり、死亡した人の知り合いなのかその遺体の傍で泣いたりと色々な様子だ。
俺達の所に親父さんがやって来た。
「お前さん、本当に強かったんだな。ありがとうな」
「これで今日から親父さんの命の恩人ですね」
そうだな、なんて言いながら俺達は笑いあった。
『あの』
「どうかしたか?」
魔剣が俺に対して話しかけてきた。
『貴方が私の担い手になってはくれませんか?』
突然の発言にその場にいた三人は固まってしまった。
それもそうだろう。
昨日であった瞬間に酷評を告げた人物に担い手になってくれと言うのだから。
「俺は、君の担い手にはならないよ」
『もし昨日の事で起こっているのなら謝罪します。私は貴方の剣として振るってほしいのです!』
「別に昨日の事を怒ってはないよ。けど俺には君のような世界を救うような物は必要ないのさ」
『……』
そんな会話をしていて時間がたったのか次第に魔物を倒した俺の存在が気になるのか周囲からの視線が感じられるので鬱陶しくなりこの場でそれぞれ離れることになった。
その後は次第に店なども行えるように戻っていったのでそこで再び旅の準備を進めていくことにした。
だが先ほどの戦闘が伝わっているのか住民たちには感謝をされるのだが他の冒険者たちなどからは奇異な目で見られるのがいやなので今日の夜のうちにここを出て行こうと思った。
マーチャさんがいるホテルに向かい、マーチャさんに夜のうちに街を出て行く事を伝えた。
「またどこかで会いましょ」なんて言い俺はホテルを去った。
次に親父さんの元に親父さんにも伝えることにした。
親父さんは「ありがとな」と言い「元気でな」とも言ってくれた。
この時に魔剣がいなかったのは少し疑問には思ったのだが、最後に後味悪くなく街を出れるのならそれはそれで良い。
そのまま店を出て行く彼を親父さんは見送っていった。
「お前も行くのか?」
『はい。今までありがとうございました親父さん。私は彼にに担い手になってもらう運命だと思うので私も行きます』
そして魔剣は独りでに宙に浮かび彼の後を追うように店を出て行った。
「すまんな恩人さんよ、俺にあいつを止めることは出来ないんだ。まあ頑張ってくれ」
その夜俺は静かに街を出て行った。
そして王都に向かうために俺は再び森の中へと入っていった。
実は彼は覚えてなかったが今回街を襲った魔物は彼が聖剣の試し切りを行った魔物だったこと。
そして聖剣の選定に行かなかったこと。
そういった出来事が運命を変えた。
一番彼の運命を変えたことは
『待っててください、担い手さ…いえご主人様、今、私が向かいます!!』
ストーカーの様に勝手についてくる魔剣と知り合ったことが彼の人生を大きく変えることになった。
「お前何してくれてんだ!?」
『これでご主人様は私を使うほかありませんね!!』
そんな会話が後にあったとか
彼 田舎の村で普通の過程で生まれた青年。未来で聖剣を使い世界を平和にしたように滅茶苦茶強いが人と接することが無さ過ぎたため自分の強さがどのくらいかなのかわかっていない。
木剣 彼が幼い頃から一緒に育ってきた木剣。ずっと一緒に過ごしてきた唯一の相棒(幼馴染)である。街を出た後、魔剣の手(刃?)によって……
魔剣 ご主人様を見つけ後をつける。ヤンデレの素質あり。街を抜けていった彼の後を追い……
聖剣 今回も選ばれる人物はおらず寂しく待っている。