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目覚め、そして…



 「………っ…」



目がはっきりしない。ぼんやりしすぎている。此処がどこかすらわからない。光が眩しい。あの絵があった部屋じゃないことだけはわかるが。この感触、ベットか。でも、いつもの無駄にきらびやかな天蓋がないし、こころなしか部屋も狭い…。ん?視線の先に誰かいるのか。



「坊っちゃん、お目覚めですか」



ロザリーが俺の顔を覗き込む。

目が少しずつ慣れてきた。ロザリーじゃないか。でも、どうしてロザリーがいるんだ。



「坊っちゃん、目は見えていますか?私の指を見てください」


ロザリーが俺の目線の先で指を動かす。俺はそれを追うように見た。これが一体何の意味があるんだ?


「目は大丈夫そうですね、脈も正常。どうやら山場は越えたようです。でも他の器官がどうなっているか分からないので確認していきましょう」


この言葉を皮切りに、はじめに体が動くかどうか確認作業が始まった。ロザリーの話によると俺はなんと、あの日から5日も寝ていたようで、体はバキバキだった。でも、動かないや反応が鈍いなどの症状は見られなかった。まあ、本格的な運動をしたわけではないので完全にはわからないのだが。


そして、その後聴覚や触覚など五感のチェックが行われた。そこで、一つ問題が生じた。


「痛覚が感じにくくなっているようですね」


ロザリーの言葉通り、俺は痛覚がないとはいかないものの、以前よりは感じにくくなっているようだった。

しかし、他に今のところは目立ったものはなかったので、不幸中の幸いと言ったところか。


しかしだ。今まで、完全な寝起きで頭が回ってなかったが、俺はなぜこうなったのかをちっとも知らない。あの時の感覚は正しく異常だった。あれは一体何だったんだろうか。


「ロザリー」


「どういたしましたか、坊っちゃん。何か異変が?」


ロザリーが本当に心配した顔でこちらを見る。済まないロザリー、心配だよな。急に調子悪かったやつが話しかけてきたら。少しクマも出来てる。きっと、真摯に看病してくれたんだろうな。本当にありがたい。って、こんなこと思ってる場合じゃない。あの時のことを聞かなくては。


「ちがうんだ、ありがとう。少し聞きたいことがあってさ。おれがたおれる前に声をかけてくれたのはロザリーだったの?」


「…ええ、覚えていらっしゃたのですね」


「うん。あと、ここはロザリーの部屋?はこんできてくれたの?」


「はい、此処は私が普段使わして頂いている部屋です。…でも、坊っちゃんを運んだのはベール様ですよ。あの時、ベール様も偶然お通りになって。私は医療道具を持って来なくてはならなかったので、ベール様に坊っちゃんをお運びしてもらうよう頼んだのです」


ベール?あぁ、シリルのことか。でも、あいつ普段、訓練場かキッチン以外にはめったに行かないのに、そのどちらからも通ることのないあの廊下に、()()居合わせったっていうのか?そんな偶然…まあ、これはロザリーに聞いても仕方ないしな。


「ねえ、おれはなんで5日も寝込んでたの?」


ロザリーの顔に緊張が走る。俺が今回のことを聞くたび少し間があくのも、子供には聞かせづらい何かがこの裏にあるということだろう。そして、この反応からして…。俺は一体何なんだ。不治の病なのか?余命が短いのか?俺はそういうの事前に言ってほしいタイプだから、是非躊躇わずに言って欲しい。健康診断のお医者さんのなとも言えない顔見るときが一番緊張するんだ。さあ、一思いに切ってくれ!


「ロザリー、言って」


「坊っちゃん、気にやまないでください。私達、使用人は本当に坊っちゃんのことを大事に思っておりますし、坊っちゃんの成長を本当に嬉しく思っているんです。だから、その……」


ロザリーが必死に訴える。俺はそっとロザリーの背をさすった。相手を傷つける真実を、分かっていて伝えるのは辛いものがあるよな。


「大丈夫だよ、ロザリー。ちゃんと知ってるよ、みんながだいじに思ってくれていることくらい。だから、大丈夫だよ」


ロザリーは沈痛な面持ちであった。けれど、同時に覚悟を決めたようだった。


「毒…なんです」


なるほど…。病気系かと思ったが、まさか毒か。しかし、毒だ。ダークファンタジーには揃って登場するあの毒だ。この一言により、俺の中である程度の推測がたった。


「なる…ほどな」


「でも、その!」


ロザリーは慌てた顔をしている。それもそのはず、だって余りにも犯人が明確すぎる。


「大丈夫だよ、あとは本人から聞くから。いるんだろ?」


先程からドアの外に気配を感じていた。勝手知ったるこの気配を間違えるわけがない。犯人はドアの外で盗み聞きをしていたらしく、ゆっくりと部屋の中へと入って来た。





「どういうことだ、シリル」





我らがコック長 シリル・ベールの登場である。

この時、俺は少しも驚かなかった。あの日のこいつの分かりやすい態度故じゃない。


なぜなら、こいつは…。





すいません、キリが良かったので今回は少し短めです。次話は長めになっています。

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