親友と質問攻め
身近に犯罪者が出ると、テレビ関係者がやってくるというのは本当だったようで。
どうやって知ったのか、唯も登校前に捕まった。
目立つのは嫌いだし、人見知りだしで、向けられるマイクの数に辟易したけれど、離してくれそうにないから諦める。
ちょっとだけ、原因である親友を恨んだ。
「ご友人がこのような事件を起こしたことをどう思いますか?」
「加害者の少女はどんな人物でしたか?」
「彼女の言う神様に心当たりは?」
矢継ぎ早な質問攻めに閉口して、どう答えるべきかと逡巡する。
多分、こういう時は当たり障りのないコメントをするのが正しいのだろう。普段は大人しかったとか、優しい子だったとか。
でもどんなに思い返してみても彼女は大人しくなかったし、優しくはあったけど基本的に意地悪だった。明るい、とも違ったと思う。
彼女を表す言葉を探して、少ない語彙力を捻り出して、ようやく一つ見つかった。
「一途なやつですよ」
声に出してみたら思った以上にしっくりきて、あ、これだ、と自分でも納得する。
「は…?一途、ですか?」
普通のコメント────すなわち、「優しい」「大人しい」「明るい」などのコメントを予想していた彼らは面食らったらしい。ぽかんと、口を開けていた。
「だから、仕方ないんじゃないですか?」
そうだ。彼女はどうしようもなく一途だった。
だからきっと、この事件を起こしたのも仕方のないことなのだと思う。人を一人殺しておいて、しかもそれが肉親で、その凶悪さは「仕方ない」の一言で済ませていいものじゃないけど、それでも。
それでも、彼女を。アイツをよく知る唯にしてみれば、本当に「仕方ないこと」なのだ。
彼女が心酔した“かみさま”を、目の前の人々は理解し得ないのだろうなと、唯は思う。多分、大抵の人は理解できない。
ネット上でも親友は好き放題に叩かれていて、頭のおかしな奴として色々言われていたけれど、ツイッターとかインスタとか、そういうアカウントを持っていなかったからか、そこまで酷くもなかった。
「じゃ、学校遅れるんで、失礼します」
そのまま校舎へ逃げ込めば、流石に記者は入ってこなかった。
親友ということで、唯にも結構な数で注目が集まっていた。彼女はそれなりの人と交友関係を築いていたけれど、ほとんど毎日登下校が一緒で、よく喋って、遊びにも行くのは唯だけだったから、唯が一番注目されるのだ。
「おはよー」
「おはよ。記者の人に囲まれなかった?」
「囲まれた。もーマジふざけんなアイツ。私は人見知りだって知ってんだろーが!」
「いやそこ?」
同じクラスの友人に気遣われ、文句を言えばツッコまれる。唯が割とショックを受けていないことが不思議だったのか、友人は首を傾げた。
「…あんまり気にしてない?」
「いやだってさ、アイツならやりそうなんだもん」
「あー…」
確かに、と思わせる程度には、彼女はちょっと危うかったから、友人も納得する。
「え、まさかそのまま言ってないよね?」
「言わない言わない。仕方ないんじゃないですかって言った」
「いやそれもそれでアウトだよ!人死んでるんだよ!?」
「そうなんだけどさぁ…アイツ見てるとどうしても…」
「わかるけど…ていうか、何でそんなことになったの?動機は聞いたけどよくわかんないし」
「私も詳細は知らないけど、あの理由聞けば何となく想像はつく」
さっすがぁ、と感心したような、呆れたような声で苦笑されて、チャイムが鳴った。同時に放送がかかる。
『深海唯さん、深海唯さん。至急校長室まで』
なんで校内放送で呼び出すかなぁ、と顔を顰めて、唯はクラス中の注目の中立ち上がった。
杜鵑草と申します。
一日クオリティの小説なので、不備があったらすみません。
勢いだけで書いたので正直かなり適当です。