おかしな転生
思ったより長くなってしまいましたが今回で転生です。
朦朧としていた意識が徐々に目を覚ましてゆく。
「ここは天国か?」そんな声がこぼれる。
地平線までつづく雲の床、その広大な地を惜しみ無く使いたてられた神殿を思わせる石作の建築物。
それは白を基調としており雲と共にこの空間を満たす黄金色の光によって僅かに光っていた。
そして何より此所は涼しい。だから天国に違いないのだ。
少し現実逃避気味にそんな事を考えていた藤田は先程から目を反らしていた事象に視線を向ける。
土下座をする老人。銀色の髪、袖に物が入りそうなほどの空間と床に届きそうな程長いロングスカートのようなズボンが縫い目なく繋がているような服。(訳:いらすとやの神の服装)
決して見えていなかったわけではない。俺は起きたのではこいつによって起こされたのだその圧倒的な存在感によって。
目の前に壁があるかに思えるほどの圧迫感、一つ一つの動きに感じる生命の危機。背中にある見てはいけない感じの光を出す球体。
「その、後光の正体見えてますよ」
声に気づいた老人が土下座したまま上目遣いでこちらを覗いてくる。
嬉しくない。
かなり歪んだ表情をしていたはずだが何を考えたのか安心したような様子で正座まで体制を起こす。
「いや~誠にあいすまんがお主あの機械のバグで死んでしまったんじゃ。まあ初日じゃからのう、その当たりのバグが完全にはとれていなかったんじゃろう。」髪を撫でながら今の状況を…って、
「はあぁぁぁ!?いや、え?ここゲームの中じゃないんですか。それよりバグで死んだってどういう事ですか!?オタクの夜明けは?オタクの夜明けはどうなるんですか!!」
「うるさい!!」
素早く指をこちらに向け何かを放ってくる。
「むぐ」
あ、あれ?声がでない、喋ろうとしても口が動かない!?
「ふう」
困惑する俺をよそに、何かをやり遂げたように汗をふく動作を行う老人。
「さすがに可哀想なのでこちらで協議すれば、生き返らせることもできるだろうが。」
遂には立ち上がりそんな事を行ってくる。
「その場合一旦心臓などが止まりまた動き出した。そんな事になるだろう。」
「じゃが…」何かを思い付いたのだろうかこちらをにらむ。
「何の因果かお主には力がある。多少武道も心得てるようじゃし、異世界に行ってその世界を救ってはくれないか?
あっちで死ねば生き返らせる事はできんが、成し遂げたのであれば死んでいたこともなかった事できようぞ。」
嘘だ、お前協議が面倒くさいって顔に書いてあるぞ。ただ条件次第では……
「ふん、覚悟は出来ているか。それでこそ勇者だ。さっそく準備をしよう。」
お前自分で黙らせたの忘れたの!?それともわざとなの、ねえわざとなの!?
必死の身振り手振りが通じたのか先程から異世界行きの準備をしていたであろう手が止まる。
「ああ、異世界の事じゃな。あそこはな主の知っているレメゲトン・オンラインの世界に酷似しておる。言語は日本語だしあんなに熱心に列に並んでおったのにまさかわからぬことなかろう?」
や、ヤバイ。だって列並びの猛者が熱中症で運ばれてくような熱気なんだぞ。確か、妖精が~、72柱の悪魔とか、伝説の武具と、勇者に魔王、魔法とかあって、えーとあと~
「それと、どこからともかく天恵が聞こえてきた巫女を酒場に用意しとくから、後はそいつに聞くんじゃぞ~」
突然立っていた雲が消え底が見えない真っ暗な穴が開き、落ちる。
聞こえない事は分かっているが叫ばずにはいられないだろう。
ちょ、ちょっと待てクソジジイィィ!
藤田くんあんまり喋って無かったからね、うん。黙らした。