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小説『シェリーの伝言』   作者: 一乗寺浩詩
1/6

第一話その朝突然シェリーは消えた・・・。


いつものように僕は目を覚ました。

その朝突然、シェリーは消えた。

朝僕が起きたら、すでにベッドはもぬけのから。

不思議に思って部屋を調べてみると、

彼女の周辺の荷物だけが見当たらない。



いったいシェリーは何処へ消えてしまったんだ。

テーブルの上には僕に宛てた彼女のメッセージが残されていた。

そのメモ書きには、“さようなら”の文字。

ただそれだけ。



3年もシェリーと一緒に住んでいるのに“さようなら”それだけだ。

シェリーはきのうの夜、僕に何も言ってなかった。

僕たちは別れ話だってした事がない。

シェリーと出会って、すぐに一緒に暮らした。

今までケンカなど一度もした事がなかった。



ところで僕は、寝覚めがすごく悪い。

朝は一杯のコーヒーを飲むまでは、落ち着かないんだ。

挽いた豆をコーヒーメーカーに入れ、コーヒーを沸かす。

沸いたブレンド・コーヒーをマグカップに注ぐ。

僕は一杯の命ともいえる、ブレンド・コーヒーを一口飲む。

マグカップを手に持ってキッチンのテーブルに腰掛ける。

一本のタバコに火をつけ、ぼけーっと部屋の窓越しに外を見る。



彼女の名前はシェリー。

本名は古谷詩織。

シェリーというのはニックネームだ。



彼女の父親がシェリーと名付けた。

そして僕の名前は、小林聖きよし

昨夜寝ている間に彼女に逃げられた。

おそらく世界で一番、不幸で間抜けな男だ。



僕がどうしてシェリーに捨てられたのか考えてみる。

刑事コロンボのように、小さな事にこだわってみよう。


その1、まず僕が、シェリーが大好きなフルーツが大の苦手。

フルーツが食べられないこと。


その2、優柔不断な僕の性格。

いつだって出掛ける時は、行く先を決めるのはシェリーだった。

僕が着てゆく服だってシェリーが選んでくれた。


その3、僕はけっして怒らない。


ケンカになってもシェリーがキャンキャン騒ぐだけで、

僕は冷静にその波が頭の上を通り抜けるのをゆっくりと待つ。

波が治まるのを待つだけだ。



いつだって僕らは頭をクールにしておかないといけない。


その4からは、「だめだ。」

何もみつからない。



「いったいどうしてしまったんだろう。」僕はそう言って途方に暮れた。



歯を磨こうと、洗面台で歯磨き粉のチューブを捻る。

洗面台の鏡に紅いルージュで書かれた“捜さないで”の文字に気づいた。

“捜さないで”と言われれば、捜すのが人というもの。



携帯電話で友人から知人までシェリーの行方を知らないか訊いてみた。

もちろん彼女の携帯にだって掛けてみた。彼女は携帯に出ない。

結局彼女の居場所を知る者は誰もいない。

曇った気持ちをかなぐり捨てて、真昼の町を捜し回った。

鏡に残したルージュの言葉が頭に残る…。



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