どうせなら勇者の方が良かった
この世には如何にもならなぬ理不尽がある。
PS,勇者って快楽殺人者じゃね?
「あぁ〜。」
彼はため息のような声をあげた。
豪華な装飾の施された大きな革製の椅子から滑り落ちながら。もうその椅子に座っているのか、もたれ掛かっているのか、寝ているのか。
遠くを見つめ黒く濁った彼の目は真っ直ぐ蜘蛛の巣だらけの天を見上げる。
「死にてぇー…。勇者まだかよ。何回コンテニューすりゃ気がすむんだよ。」
彼は魔王であった。しかし、いかにも魔王かというとそうでもなく、大人しめなただの青年に見える。
一時は世界征服とやらをやってみようとはした。が、したところで先がない。
国を治めるのも面倒だし、反乱なんか起こされたらたまったもんじゃない。
子供や魔物は元々の力で創り出せるため、性的な楽しみもない。人間界のゲームも少しはやったが、すぐ飽きてしまった。
「神よなぜ私なのですか。他にいたでしょ。何事にも楽しみを見出せず、部下も放置して毎日同じ愚痴を垂れる私より。もっとやる気満々の悪党が。」
彼は一度座り直すと肘掛けに頬杖をつき続けた。
「だいたいなんで魔王として生まれただけで魔物達がやった悪事全部私のせいなんだよ。生まれる前からいて言うこと聞かない魔物もいっから!」
おっと、ついつい大きな声で独り言を言ってしまった。そんなことを一人で思っていると、外からさびれた門の開く音がしてきた。
それでも魔王は生き続ける…。死ぬの怖いし。
PS,あっ人じゃないから快楽殺魔者?