<マカインにて ダンジョンそれぞれの強者たち1>
<マカインにて ダンジョンそれぞれの強者たち1>
『オッスただいま到着致しましたぁー、立花ですっ!』
身長180センチ、男性、がっちり体育会系、年齢30代、
上下ともに有名ブランド偽物ジャージを着用、同じく数本線の入った運動靴。
意志の強そうな、というか校則に例外は一切許さない規律遵守一筋の性格を、
そのままあらわしたような短髪もみあげ弁当型のおっさん顔。
ヤツは、直立不動でじじいの前に立っていた。
『おいじじい、ボクをからかっているのかひょっとして』
ボクはなんとなく見覚えのある彼の容姿を確認し、
いつもよりずっと低い声色で尋ねた。
『殿のお気に召しますように、腕によりを掛けたカモフラージュじゃったが、
ひょっとしてお気に召しませんでしたかの』
じじいは思わぬボクからの叱責を喰らい、
白金に輝く杖を振り上げたまま視線をあちこちに泳がしている。
思えばボクにマスターが設定した、
江戸山区立未来ヶ丘中学校3年B組学級担任である出で立ち(スーツ着用)もどうかとは思うが、
ヤツの外見は設定上の同僚にうり二つではないか。
『神宮先生、お久しぶりでっす。また一緒に仕事ができて嬉しいなあ』
ヤツは、右手で頭の裏を掻きながら屈託無く挨拶した。
ないない、この展開は無い。
ボクにはこの後、えらく低姿勢の木下教頭とか、
全員エリートで構成されたA組担任御法川先生が登場し、
ヤヤこしい展開になることが予測された。
『じじい、今ならまだ引き返せる、というか引き返せ。
でないと、セイブルのお前たちがどうなろうと、
ココがどうなろうと知らんぞ、ボクはエスケープする!!』
『と、殿ぉ、お許し下され、手前どもが勘違いしてしまいました。』
土下座してひれ伏すじじいと立花先生(のような存在)。
《ジグ様、落ち着いて下さい。転送後のカモフラージュは、
こちらの指示で変更可能です。いかがなさいますか》
ソラはできの良いセクレタリーに違いない。
ボクがミッションを失敗しないよう、コケる前に先回りをしてくれる。
『じじい勘違いも甚だしいぞ、早速だが、ボクがこの立花先生モードをリファインする。
もちろん、異存は無いな?』
『ははぁ、御意』
じじいたちは、全く動こうとしない。
余程ボクの叱責が恐ろしいのだろう。
《カモフラージュ・リファインコマンド、実施いたします》
ソラの案内と共に、立花先生はゆっくりと変容を遂げていく。
もきゅーん
『神宮せんせ、お久しぶり』
驚愕の展開、ありえねぇ・・
立花先生の容姿に代わって現れたのは、江戸山区立未来ヶ丘中学校の制服を着た女子中学生だった。
学校ナンバー1の美少女は、千年に一度と言われる人気タレントに似ていた。
え、あ、お、おおおお?!
『3年B組出席番号1番、相川七尾だよ』