<マカインにて されど戦士は剣を振る-2>
<マカインにて されど戦士は剣を振る-2>
首切り鎌の大ぶりな刃先は、
ガルシアの言葉が終わる前にヴェルキアの首元まで到達していた。
振り下ろされる鎌の超人的なスピードは目で追うことが困難なレベルであり、
これまで対峙してきた敵は全て一瞬にして斬首され命を落としていた。
言うまでも無く、彼等は歴戦を共にした堅牢な盾で身を守ろうとした。
だがガルシアの刃先は、柔らかなチーズのようにそれらを切り裂いた。
そして今まさに鎌の一撃は、
冷徹にヴェルキアの首を切り落とすはずであった。
だが斬首目前の刃先は突然あらぬ方向に弾き飛ばされた。
ガギィィィィィンッ
『・・・・? なにっ!』
ガルシアは、想定外の衝撃に驚愕の声を漏らしたが、
間髪を入れず取っ手を再度握り締め渾身の一撃を放った。
ギョイィィィィィィン
だが、今度は身体ごと勢い良く飛ばされてしまった。
ガルシアは目の前で起こったことを理解できず、
為す術も無く首切り鎌を構えるのみ。
ヴェルキアのバリアは、バトルスーツと同化するほどにタイトに稼働していた。
ガルシアは、ヴェルキアの身体は超硬度であると錯覚したかもしれない。
『なかなか、面白い道具を持っているではないか』
ヴェルキアは、首切り鎌の鋭い刃先を興味深げに眺めつつ、
お返しとばかりに愛剣を水平に鋭く一閃した。
すると、赤と黄色の光が織り成すエネルギーの波動が二人に襲いかかる。
これに対し、スキッドはヴェルキアの死の波動が到達する直前に、
半円のシールドを瞬時に張り巡らした。
シールドに直撃したヴェルキアの死の波動は、
目映いばかりの光の粉塵となり粉々に四散した。
『ほほう、私の剣戟を受け流すか。少しは楽しませてくれるか』
ヴェルキアは、再び同じ波動を放った。
だがこれもスキッドのシールドに阻まれ四散した。
『ヴェルキアよ、少し攻撃が単純すぎやしないか』
ハイラインが後ろからおもむろに揶揄する。
本来のヴェルキアは、このような<遊び>で済ますような存在ではない。
ハイラインは、次の一手は相手が防御不可能な剣の連続技を見せてくれるだろうと期待していた。
だが、現実にはそうはならなかった。
『案山子男の一撃で、全て把握できた。
この二人、私一人でも十分コントロールできることをな』
ヴェルキアは、少し肩を竦めてみせた。
一見互角のように見えなくもない両者の手合わせであったが、
実際は大きな隔たりがあったと言えよう。
ガルシアの攻撃は、ヴェルキアのバリアに全く歯が立たなかったが、
それに対し、死の波動を受けたスキッドは、
ガルシアも含めた防御シールドの維持に、
自らの全能力を注がざるを得なかったのである。
このことで、スキッドが反撃を仕掛ける余力が全く無くなった。
むしろ度重なるシールドの過負荷により、
スキッドの体力はみるみるうちに消耗していったのが事実である。
仮に同じような攻撃に再び晒された場合、
これまでのようにスキッドのシールドが耐えられる保証は何もなかった。
このことは、歴戦連勝を誇るスキッドにとり最大の屈辱であった。
いつしか脂汗がこめかみに浮かび、動悸は限界まで高まっていた。
このまま死を待つしかないのか、スキッドは自問を繰り返した。
『ヴェルキアよ、このまま粛正するか?』
ハイラインは、促すように提案した。
『・・・いやまて、私に考えがある。
この二人のうち一人を、ジグ様たちとの合流地点まで道案内をさせよう。
どちらにするかは、今からこの二人を戦わせ勝ったほうを選ぶことにする』
ヴェルキアの言葉を聞いたスキッドは、目を見開きガルシアを見た。
《同士討ちをさせるだと、ふざけるな!》
憤怒に苛まれるスキッドであったが、
ここまで実力差があっては抗いようもない。
ガルシアもまた、首を僅かに左右に振りスキッドを見ている。
『すまんな、俺たちマカインの聖騎士は、
命を賭け同士討ちするほど落ちぶれてはいない。
最後の最後まであきらめず攻撃あるのみ、ガルシアよ、良いな』
ガルシアはスキッドの言葉に頷き返し、首切り鎌を大きく振り鳴らした。
こうして、セイブル守護者による、
マカインNo聖騎士たちへの一方的な殺戮が始まった。




