<マカインにて されど戦士は剣を振る-1>
<マカインにて されど戦士は剣を振る-1>
ハイラインとヴェルキアは、目指すX地点に繋がる地上の門を難なく通過。
『情報によれば、先に進む移動手段はあれだな』
ハイラインはヴェルキアと徒歩で建物の中に侵入し、
迷うことなくジグ達がシャッフルされた壷のような祠に入る。
すると、間もなくアナウンスが入り、壁からつり革が出現した。
『まいどご乗車ありがとうございます。
次はDゲート2・・なのかどうか。
道中たいへん揺れますので、つり革にしっかりとお掴まり下さい』
ブーゥゥゥン ブブブブブ
鈍い振動が続き、転移用の祠が三次元レベルで駒のように廻り始める
しかし、中の二人は地獄のような振動に左右されることなく、
祠の中央に身体を浮遊させたまま目的地への到着を待った。
『・・・殺す。
案内といい乗り心地といい、ホスピタリティーの欠片も感じない』
ヴェルキアは、眉間に皺を寄せ愛剣の柄を握り締め少し剣を抜くと、
ゆっくりと確かめるように戻した。
ここからはいかなる変化にも対応できるよう、
バトルモードを維持せねばならない。
『そもそも、侵入者を排除するためのトリックなのだろう。
これぐらいやらんと設計者のクビが飛ぶ』
ハイラインがは眼鏡の位置を修正しながら、
マカイン技術陣へ多少の理解を示した。
グウォォォォン、ザズゥゥー ズンッ
突如、祠が移動を停止した。
つり革に掴まっていたら、
慣性の法則で身体が壁に激突し即死するレベルの急停止だった。
だが、ハイライン達にそのような心配はない。
ふたりは、ゆったりと祠の中央に浮遊したまま状況を窺った。
『どうやら、当初の目的地に着いたわけではなさそうだ。
ジグ様たちがお待ちかねだというのに、困ったものだ』
ヴェルキアは、凄みのある形相で祠の外部を窺った。
これまで散々妨害を受けながらも辛抱強く作戦を遂行してきたが、
最後の最後で到着先を変更されるとは。
暗黒雲勢力から侵略を受ける立場の者同士。
マカインには少なからず敬意を払いこれまでやってきたが、
ここからは<郷に入らずんば>という概念を捨てよう。
ヴェルキアは、能力を解放し強制的に直行すべきと結論づけた。
一方ハイラインは、興味を持ってなりゆきを見守る。
常に沈着冷静なヴェルキアを怒らせたらどうなるのか。
テツとの戦いでヴェルキアの戦闘力をある程度は把握できたが、
ダンジョン守護者としての真の能力を知る絶好のチャンスかもしれない。
『如何なされますかな?
これ以上到着が遅れれば、ジグ様もさすがにお怒りかと』
ハイラインは、静かにヴェルキアへ問うた。
ヴェルキアの物腰から、凡そ結論は分かっている。
『ここは私に任せてくれ、遠慮無くやらせて貰う。
繰り返すが遠慮無しにな』
ヴェルキアは愛剣を抜くと、刀身に凄まじいエネルギーを満たしていく。
赤と金、鎧と同じタペストリーの光が刀身を包み込み、
この後対峙するはずの敵勢力に、完全なる破壊と死を予告する。
『御意、わたしは貴方の支援と回復に廻らせて貰う』
ハイラインは出口に進むヴェルキアの少し後を歩き、
いかなる攻撃やトリックにも対処できるように警戒を緩めない。
暗黒雲との戦いでも使用した共有防護バリアを再び張り巡し、
攻撃でダメージを受けた場合はエネルギー補給を担当することにした。
《くわばら、くわばら、こういうタイプを敵に回したらホント面倒だ。
頼りにしてますよ、ヴェルキア》
そんな呟きを余所に、ヴェルキアは先に祠から出た。
建物の内部は基本的に全て同じ設計になっており、
来訪者が場所を知る手がかりは殆ど無い。。
しかし、仮にここがX地点であるならば、
建物入り口付近に戦闘中のジグ達が確認できるはず。
残念ながら、ジグ達はそこに居なかった。
それどころか、危惧された大勢のマカイン戦士や、
<MONBURN type01>の部隊が待ち受けるわけでもない。
二人はそのまま入り口に進み様子を伺うと、
外にはたった2名の戦士が立っているだけだった。
『私はデイリング帝国聖騎士No8のスキッドと申す。
こちらはNo9のガイルズ。
先ほどお調子者のマキャラートが大層お世話になったようでお騒がせいたしました』
身長3メートル以上、赤髪赤髭のゴツい身体が自慢そうなスキッドは、
大ぶりな長剣を地面に突き刺し、相手を威嚇するように名乗った。
ガイルズと紹介されたもう一人の戦士は、
言うなれば、2メートルほどの案山子と表現できようか。
案山子のような一本足ではなかったが、
針金のように細い手足と骸骨としか表現できない顔立ちに、
黒いぼろ切れのように見える上下のスーツを着用していた。
剣の装備は見られない、凡そ戦士とはほど遠い出で立ちの奇人である。
『世話した覚えはない、むしろ今頃は酷い目にあっているだろう。
お前達も同じ目に遭う前に、今すぐ我らを目的地まで案内したほうがいい』
ヴェルキアは淡々と事実を述べたまでだったが、
相手はそのように理解しなかったようである。
『こちらはデイリング帝国軍の聖騎士が2名。
帝国軍一個師団を瞬殺するほどの我らを前にして、
身の程を知らぬ愚か者よのう』
No.1のオストレッサを経由し王から受けた勅命は、
第2ゲートの防衛ラインに向かう敵勢力を、
この蟻地獄にて殲滅せよというものだった。
そしてスキッドは、
この世に自分たち以上の能力者はいないと確信していた。
《・・ふふん、口上だけはあのマキャラート並に良く滑るな》
後方のハイラインは、状況を冷静に観察しながら待機。
ヴェルキアは既にバトルモードに入っており、
合図があれば自分もブーストできる。
『瞬殺するなら、わざわざ自己紹介は必要なかろう。
恐らく、我らをかなりレベルの低い格下と見間違え、
ネズミを嬲り殺すように恐怖を与え葬るつもりなのであろうな』
ヴェルキアは、まだスキッドの猿芝居に付き合うつもりらしい。
ハイラインは、発車時刻が迫るバス時間にそわそわする添乗員のように、
一触即発のタイミングを窺った。
『こふ こふ こふ・・もう良いでしょう、スキッドよ。
彼等もジレているようです。
私が彼等を3ミリ刻みに寸断し楽にして進ぜよう』
これまで寡黙を貫いてきたガルシアは、枯れ枝のような両腕を大きく広げた。
すると右手付近に背丈ほどもある首切り鎌が現れ、ガルシアはその持ち手を握り締めた。
殺るか 殺られるか
マカインvsセイブル
X地点でお待ちかねのジグたちを余所に、ここでも死闘が始まった。




