<マカインにて - 聖騎士No.10-3>
<マカインにて - 聖騎士No.10-3>
『やるのか、おいっ』
交戦好きのタルカスが、まず二人の一歩前に出る。
『にゃーっ』
頭上のテツが、合いの手を入れるように肉球を振り上げ加勢した。
『やるのかと聞かれ、やりませんと答えるのは愚か者しかいない』
マキャラートは、タルカスの啖呵に応えやり返した。
うむ、我ながらセンス溢れる<返し>だ。
自分以上に沸騰点の低そうな敵が現れたことで、
今のところ、理性が感情を僅かに上回っている。
その相手も、いきなり攻撃という雰囲気ではない。
侵入者の容姿と身を纏う高密度のオーラから察するに、
三人ともかなりの能力者であることが覗えた。
『タルカスよ、目の前の御仁はどうやらこのゲートの番人らしい。
言動から察するに、このままゲートをスンナリ通過させるとは思えない。
そこでだが、私とハイラインは先に行くことに決めた。
御仁の相手を宜しく頼む』
ヴェルキアが、タルカスの後ろからおもむろに指示した。
チームの優先事項が、ジグ達の救援であることを忘れてはならない。
『・・随分過小評価されたものだ。
この俺様がマカイン防衛の頂点に立つ、
聖騎士No.10と知った上で言っているのだろうな』
マキャラートは、風神剣を持ち上げ舞うようにポーズを取った。
『貴公はマキャラートと言うのか。
私は、セイブルから来たハイラインと言う。
たいへん申し訳ないが、私とヴェルキアは先に出発させて貰う。
緊急の用事があるので、ここで足止めを食うことは許されないのだ』
ハイラインは<MONBURN type01>越しに、
第1ゲートの位置を確認しながらマキャラートの問いをやり過ごした。
『だ・か・ら、お前達二人をなぜ俺様がすんなり通すことになっているのか、
全く勝手な思い込みをしているんだが』
指揮官の動きで<MONBURN type01>が一歩前進。
三人の包囲網を狭めた
『お前もだいたい分かるだろう?
俺たちがよってたかって本気になったら、
あっという間にボコボコにされるということを』
タルカスは、聞き分けの悪い幼稚園児を諭すように静かに言った。
『俺はなマキャラート、アンタとサシで良い勝負をしたいんだよ。
もちろん勝つのは俺様だがな。
丁度お前にゴツい護衛が付いてるように、俺にも<テツ>が居るし』
『にゃーっ』
テツは、合いの手がうまい。
『先に行かせて貰う』
ヴェルキアは、ハイラインを従えマキャラートを避けるように向きを変えた。
ヴェルキアたちの動きに合わせるように、MONBURN type01>が移動する。
『テツ、この門番どもを喰いたいか?』
タルカスが、頭上のテツに問うた。
『許してくれるにゃら、全部いただくにゃ』
テツは、タルカスの頭を肉球でポンポンと叩いた。
『お前も体力を補給しないとこの先持たないだろうしな。
よし俺はこいつ(マキャラート)、お前はそっちでいこう』
なんとなくコンビっぽくなってきたタルカスとテツは、
互いに思い切り暴れる口実ができたことを歓迎しているもよう。
『ふっ、やれやれ、どこまでも畏れを知らぬものどもだな』
マキャラートは<風神剣>にパワーを充填し、
眼光鋭く敵を一気にゾーン内に取り込み斬撃すべく、
思い切り踏み込んだ。
それと同時にタルカスが、テツを<MONBURN type01>に投げつける。
テツは一旦蝙蝠に変身し更に黒い霧と化して、
<MONBURN type01>を片っ端からガシガシと喰らい始めた。
その圧倒的なスピードと勢いに為す術も無く、
<MONBURN type01>が次々と喰らわれていく。
一方マキャラートの必殺<ディレイゾーン>に嵌まってしまった三人。
しかし、漆黒のバトルスーツを纏ったタルカスは意外にも鋭く応戦。
ガキーンッ
超硬度の剣同士がカチ合う金属音が辺りに響き渡る。
『バ、バカな・・・なぜお前たちは動けるのだ』
あり得ない光景を目の前にしたマキャラートは、
思わずうめき声を上げた。
<自分の時間>に取り込まれているはずの三人が全く普通に動いており、
更にタルカスは、必殺の斬撃をガッチリ受け止めている。
一方ヴェルキアとハイラインは、
テツの暴食によりズタズタになった防衛網をすり抜け、
スタスタと歩きながらゲートに向かっているではないか。
『お前の剣は先ほど研究させて貰った。
ハイラインが全部解析し対策は万全なんだよ』
タルカスは、一旦合わせた剣を振り払い、
マキャラートはよろよろと後ろに引き下がる。
タルカス達は、マキャラートとスズメバチの対戦を観戦することで、
<ゾーン>内のディレイされた時間をヴェルキアが再加速し、
無効化する対策を講じていた。
これによりマキャラートの優位性は完全に失われ、
ハイライン達ふたりは、マキャラートに一切構うこと無くこの場を脱出。
同時に、残ったタルカスとマキャラートによる剣と剣の戦いが始まった。
二人の周囲では、<MONBURN type01>をテツが絶賛食事中。
どうやら、究極に腹が減っていたらしく実に容赦ない。
タルカスとマキャラートは、いつ果てるともない剣と剣の鍔ぜり合いを続ける。
基本的な剣術に於いては、セイブルとマカインに大きな差は無かった。
だが見慣れぬ剣筋に驚くこともある。
これをギリギリ受け流すことで、互いの剣術スキルは向上していった。
いわば、生死を賭けた訓練とも言えようか。
<MONBURN type01>を<完食>したテツは、
既に猫の姿に戻り毛繕いしている。
一旦はバトル中のタルカスに加勢しようとしたが、
後ろからハイラインに止められフリーズする。
『テツ、お前は<待て>だ、タルカスに<良し>と言われるまでな』
『うにゃにゃ』
剣撃の凄まじい音を背に、ヴェルキアとハイラインが第1ゲートの門前に立つ。
すると、まもなく扉の中から地響きのような野太い声が応えた。
『誰だ、ここは既に閉ざされた門である、
何人たりとも開けるわけにはいかない、帰れ!』
いつもの如く、侵入者を追い返す段取りが始まった。
だが<MONBURN type01>は、全てテツに完食されてしまっている。
ひょっとして、まだ奥の手があるのだろうか。
『戯れ言に付き合う暇はない、今すぐここを開けなければ、分かるな?』
ヴェルキアとハイラインは、おもむろに究極の剣を抜いた。
めくるめく大量のエネルギーが放出され、
目映いばかりの光が門を照らした。
『・・・い、いらっしゃいませー、お客様二名様ご案内でーす』
ギ・ギ・ギ・ギ・ギ・ギーイィィィッィ
『タルカスよ、後は任せた。
万が一負けそうになったらテツに頼むがいい』
珍しく、ヴェルキアが面白いことを言った。
ハイラインは、銀縁眼鏡を整えつつヴェルキアと共に救援に向った。




