<マカインにて - 敵か味方か6>
<マカインにて - 敵か味方か6>
ハイラインはヴェルキアによるとどめの小麦粉噴射を咄嗟に制止した。
余り時間はかけられないが、この者から背後にある存在の情報を得ることで、
将来何かの役に立つかもしれない。
『ヴェルキア、私はこいつに少しだけ尋問する。
その間タルカスと、白化した残骸を噴霧機で回収してくれないか』
『わかった、こちらのほうは任せておけ、タルカス行くぞ』
ヴェルキアは噴霧機のノズルをクリーニングしながら、
一見芸術作品にも見える白化した渦を吸い込みにかかった。
『おう、きれいさっぱり片付けてやるぜ』
先ほどの致命的な失敗を糧に、
タルカスも噴霧機の操作を完全に把握していた。
ふたりは、噴霧機の機能をOUTからINに切り替え、
直径1キロにも及ぶ巨大な白化した渦の造形物を、
ノズルの吸引力で回収していった。
一方ハイラインはひれ伏したままの蝙蝠を前に、
X地点に早急に集結せよとの勅命と、
暗黒雲の情報源を手に入れることを両天秤に考察中。
インテリ守護者の結論は早かった。
『お前の名は、なんと言う』
『はっ、テサルス・ウィルグレン・ジャゴジャゴゲッサーと申します』
蝙蝠は、ひれ伏したまま自らの名を名乗った。
マスター制作の必殺小麦粉により壊滅的な打撃を受けたものの、
通常の戦闘であれば、ハイラインたちでも勝ち負けぐらいの相手であろうか。
『・・・・長いな、殺すぞ』
ハイラインが、眼鏡の位置を修正しながら一言。
『ご無体な、名前がアレでしたら、
私めを<鉄ちゃん>と呼んで下されば有り難いです』
『・・・随分慣れ慣れしいな、やはり殺す』
ハイラインは、噴霧機のノズルを弄りながらスイッチに手を。
『あっ、鉄と呼び捨てでもいいんです、全然大丈夫です、はい』
蝙蝠は土下座のまま二三歩後ずさりし、
隙あらばトンズラしようという気配。
『宜しい、それではテツとやら、もし私から逃げようものなら、
死ぬより酷い目に遭うことになる、いいな』
今や子羊ぐらいのパワーしか残っていないテツには、
選択の余地などまるでなかった。
『御意、お代官様』
テツの頭の中では、憤怒と復讐と策略と、
それらを全て打ち砕く絶望が渦巻いていた。
ハイラインは土下座するテツの首元に、銀色の細い首輪を装着した。
『とりあえず、我らには時間が無い。
お前には、このままX地点まで同行して貰う。
道中万が一脱走を試みた場合だが、
この首輪から、小麦粉がプシューッと全身に降りかかることになる』
テツの返答は、親指と人差し指でつくるOKのサインのみ。
『おーしハイライン、全部回収してやったぞ、こんな作業チョロいもんさ』
タルカスが、首に巻いた手ぬぐいで汗を拭きつつ帰還した。
ひょっとして、マスターから貰った逸品かもしれない。
『とんだ道草だったが、土産もできたしこれからX地点へ移動する』
ヴェルキアたちは、指示のあったX地点に再び視点を戻し、
GJたちの待つダンジョンポイントへ出発した。
『おいいいいいいいい、じじい、まだヤツらは来ないのかぁぁぁ!』
デイリング帝国の騎士たちに包囲されたまま、
耐え難きを耐えまくるジグの叫びが、建物の中にこだまする。




