セイブルとマカイン
<セイブルとマカイン>
私はミッション<SH-1176>に於けるふたつの世界を、
それぞれセイブル、マカインと名付けた。
これからセイブルとマカインを探査し私なりの価値があると判断すれば、
世界を温存しつつ癒着を剥離する初めてのチャレンジとなるはずだ。
正直どちらが先でも良かったが、成り行きでまずセイブルを調べることに決めた。
ところが潜入にあたり、問題が一つ発生。
思えば私の質量は餃子の皮よりも遙かに大きい。
そのまま中に入れば、たちどころに世界が崩壊してしまうだろう。
そこで私は、潜入先の世界に適応できる大きさの分身を生み出すことにした。
分身を、便宜上ジグと名付けよう。
ジグは私と菌糸状の精神エネルギーで繋がっており、
探査中に遭遇するあらゆる情報を私に転送することが可能だ。
少し工夫すればリアルタイムの接続も可能だったが、
精神エネルギーによる膨大な情報をオンライン化すれば、
他の次元世界全てを統括する私にとって、結構な負荷がかかってしまう。
そんなわけで、ジグは自分のタイミングで状況を報告することとなった。
また道中のトラブルを避けるため、ジグにはある程度の自我と能力の一部を分け与えた。
更に潜入時の情報分析ツールとして、AI《SOLA=ソラ》を内部に搭載。
これにより、世界の分析及び対策立案はソラが分担することにした。
準備が完了したところで、
私はセイブル表層に菌糸状のエネルギーを利用し、
表層に僅かな裂け目をつくり、ここからジグを潜入させた。
『マスター、行ってきま~す。何かわかったら報告するね』
ため口かい
主人に対する態度としては落第だが、私の一部なので我慢しようと思う。
ジグは、表層通過の僅かな間に、
セイブルとマカインの癒着が進行しつつあるエリアを観察した。
癒着部分では、それぞれの固有な表層同士が強引に結合されることで、
一種の暗黒物質に変質しつつあることがわかった。
二つの世界の接合部分に広がるどす黒い渦巻く雲の領域。
それはあたかも意志をもつ生物のように領域を拡大しつつあった。
『う~ん、思ったより事態は深刻だ』
ジグは、情報を集めながらセイブルの世界に突入した。