<マカインにて - 敵か味方か6>
<マカインにて - 敵か味方か6>
守護者たちが構築した堅牢なるバリアは、荒れ狂う渦の刃に粉砕された。
獲物を喰らうことができる悦びの余りか、
刃は鋭利な刃先をガチガチと噛み合わせ、
濁流のようにうねりながら押し寄せてくる。
セイブルダンジョンの守護者たちは、それでも落ち着いていた。
単独ではあるが、最高レベルの守護シールドをバトルスーツの周囲に展開。
だが、これまでのエクストラバリアとは違い、
シールドを維持できる時間は限られていた。
暗黒雲のパワーは、個々の力で凌げるほど容易いものではない。
いわばこれは、噴霧器噴射のための時間稼ぎだった。
『野郎ども、いくぞー!!』
通常ならヴェルキアにグーで殴られそうな野暮ったいタルカスの賭け声。
しかし、この状況にはフィットしていた。
三台のマスター特製噴霧機から大量の白い小麦粉が、
360度の範囲で一斉に放たれる。
刃はあと少しで各々のシールドを突き破り、守護者たちを八つ裂きにする直前だった。
だがひとたび小麦粉が刃に触れるや、
触手は凍結するようにピタリと動きが止まった。
さながら、蔵王名物樹氷のオンパレードといった景観が広がって行く。
三人はしめたとばかりに白化した渦のシュプールをすりぬけながら、
それぞれのノズル散布角度を更に拡大し、
散布圧力をMAXまでブーストアップさせた。
巨大な暗黒雲による渦の窪みの内径が、
小麦粉噴射によりあっという間に白化されていく。
暗黒雲は白化されていない外郭エリアを切り離し、
再度突入を試みるも結果は同じことだった。
マスター特製の小麦粉の威力が本物であることは間違いなかった。
ここで三人は、飛空能力を活かし分散した。
白化により著しく消耗した暗黒雲の残存部分を、完全に仕留めるためである。
黒雲の渦は濁流状態のまま白化させられたため、
できの良い盆栽のような侘び寂びを感じさせる出来映えとなっていった。
『ふぅぅぅそろそろだな、仕上げにかかるか皆の衆』
守護者三人の中で、最も大暴れしていたのがタルカスである。
確かに危機一髪の瞬間までは、
それぞれが自己責任で戦っていたものの、
渦の動きが完全に止められ形勢が逆転してからは、
持ち前のコンビネーションで白化が一気に進展していった。
ハイラインは最も効率の良い噴射エリアの指示に徹し、
ヴェルキアは後方支援というかたちでタルカスをアシスト。
暗黒雲は残り少しを残し、白い造形物となっていた。
僅かに生き残った切れ端のような黒雲が、
じくじく蠢きながら白化した自らの身体を切り離し、
緊急脱出装置のようにポーンと彼方に逃げようとする。
『ふふん、逃げようたってむだむだ、
きっちり落とし前つけてもらおうじゃないの』
タルカスが、逃げようとする黒雲の切れ端に先回りして道をふさいだ。
後ろからヴェルキアが噴射スイッチを入れる。
と思われたそのとき、黒雲が蝙蝠の形に変形した。
『お、お助けくだせえ、お代官様』
蝙蝠は空中でピタリと静止し、タルカス達に向かいひれ伏した。
それは、完璧な土下座であった。
有無を言わせぬ土下座の破壊力。
小麦粉による恐怖の余り、その身体は小刻みに打ち震えている。
『お前・・・話しができるんかい』




