<マカインにて - 敵か味方か4>
<マカインにて - 敵か味方か4>
いつの間にか、ハイライン達の上空に黒雲が発生していた。
それは、みるみるうちに渦を巻きながらを上空を覆い尽くし、
その渦はドリルの先端のような形状を整えつつ、三人めがけて突進してきた。
『エクストラバリア展開、全員同期』
声を発する前にハイラインが先んじて、
周囲10メートルほどのドーム型バリアを瞬時に張り巡らす。
それとほぼ同時に、タルカスとヴェルキアがドームラインを強化。
ドリル状のどす黒い雲の渦は、
恐ろしい早さで三人を取り巻きその中に取り込もうとしたが、
エクストラバリアの障壁に跳ね返され放射状に分散した。
分散した黒雲は、再び上空に集結し渦を描きながら蠢いていた。
『さてさて、守りから入ってしまいましたが、
バリアではあちらを消滅させるまでには至らぬか』
ハイラインは三角布陣の先頭に立ち、
突然の来襲者を見定めようと上空を窺った。
『ハイラインよ、あれは暗黒雲の勢力に違いない。
なぜなら、我がセイブルを飲み込んだ化け物と同じ波動を感じるからだ』
ヴェルキアは、忌々しげに上空の渦を睨んでいる。
『御意。ということは、あの雲を撃退することができるのなら、
暗黒雲本体を攻略することも可能ということか』
ハイラインはヴェルキアの考察を受け、更なる次の一手をイメージした。
『やってやろうじゃねぇか、ワクワクしてきたぞ。
ハイライン、ヴェルキア、俺があれを吹き飛ばしてくる、いいだろう?』
上空に向け両腕を振り上げながら、タルカスが吠える。
全身黒ずくめのタルカスだが、もともと防御より攻撃のほうが得意だった。
先手必勝が座右の銘というだけあって、
相手に先手を打たれたことが悔しくて堪らないらしい。
『まてタルカスよ、闇雲に突っ込んでも返り討ちに遭うだけではないのか。
攻撃するなら我ら三人全員で行うと決めたであろう』
ヴェルキアは、冷静にタルカスの突進を窘めた。
防御はできても、相手を殲滅させることは相当に難しい。
攻守共に高いレベルの能力を持つヴェルキアならではの判断である。
『私に考えがある』
ハイラインは不満げなタルカスを余所に、
手近な空間から見慣れない器具を3つ取り出した。
それは直径80センチ高さ1メートルほどの金属製のタンクであり、
タンク内に貯蔵された物質は、小麦粉である。
それは、コンプレッサーによりノズルから噴出する仕組みであった。
ノズルはフレキシブルホースでタンクに繋がれ、
小麦粉の噴出方向を自在に変えられる。
どこかで見たことのあるそれは、
マスターがダンジョン外壁の攻防で使用した噴霧機と同一であった。
『なんだそりゃ、奇天烈なもん持ち出してよう』
タルカスは、訝しげにタンクを見遣った。
『これは、我らがダンジョンを離れる際ジグ殿の師匠から預かったものだ。
なんでも、暗黒雲の勢力には効果覿面の装置らしい』
ハイラインは、二人に噴霧機を手渡しながら説明した。
『なるほど、そういうことなら俺様のパワーアタックよりイケそうだが、
万が一、あれが暗黒雲勢力からの刺客でなかった場合はどうする』
タルカスは、使い慣れない道具より、
あくまでも自力で相手を粉砕したいようである。
『まあ・・・そのときはプランBでいきましょうか』
ハイラインは、思わせぶりに眼鏡の位置を再確認した。
『うむ、私はその線で構わない』
ヴェルキアも、さも分かったような相づちをした。
『お、おお、プランBか、いいともぉ』
成り行き上それ以上の質問もできず、
ひたすら噴霧器を背負うタルカス。
大丈夫か、おい。
『・・では、この体系を保ったまま上空に移動する。
移動後ノズルを攻撃対象に向け噴射。
相手のダメージ具合を鑑みつつ、
私の合図でノズルを逆回転させ一気に対象物をタンクに吸収する。
いいな?』
ハイラインの号令で、三人は一気に上空まで駆け上がっていった。




