<マカインにて - 敵か味方か2>
<マカインにて - 敵か味方か2>
外界がどうなっているのか建物の中から窺うことはできなかったが、
ここよりはかなり明るいらしい。
逆光を背に扉から現れたのは、
中世の騎士を思わせる堅牢そうなメタルカラーの鎧を纏い、
腰にはしっかり長剣を装備している男性が3名。
兜を小脇に抱えているあたり、ひとまず攻撃する意図はないらしい。
『我らは、デイリング帝国の騎士である。
私は、聖騎士団のギャリスと申す』
3名の中央に位置する、精悍な顔つきの金髪青年が名乗り出た。
『我が偉大なる国王オクタデリヌス様に謁見を願い出ているのは、
そこにいるお前達で間違いないか』
ギャリスと名乗るリーダー風の戦士は、
ボクたち四人を値踏みするように見回した。
『確かに、謁見を申し込んだのはボクたちです』
ボクは、案内人が向こうから来てくれたと内心喜んだ。
それなら話しが早いじゃないか。
このままマカイン領主と暗黒雲の件ではなしができるなら、
マスターへ報告する内容も実のあるものになるだろう。
もしギャリスが敵意のない人物ならば、このまま彼等の後に付いていけば良い。
『正確に言えば、入り口で話したのはあたしなんだけどねぇ』
頼んでもいないのに、例の如くマオマオがしゃしゃり出て来た。
マオマオは腰に手を当て、ぐいとばかりにぺったんこの胸を突き出した。
『ほう、ただの小娘にしか見えないが、
其方がリーダーということで宜しいのかな』
ギャリスは、ボクたちの立ち振る舞いを慎重に伺っている。
両脇の戦士は、明らかにギャリスの護衛だろう。
隙の無い物腰と立ち振る舞いからみて、
ギャリスに危険が迫った場合いつでも長剣を引き抜く体制だ。
『そんなことより、
国王の居るところまであたしたちを案内してくれる保証はあるのかしら』
そうきたか、マオマオの混ぜ返しは天才的だな。
『・・・私の質問に答えるなら答えよう』
ギャリスもなかなかのくせ者だ、マオマオのペースに嵌まらず、
真っ直ぐジャブを打ち込んできた。
『貴方があたしたちを罠に嵌めようとしているから、
そんなこと言うんでしょ。
私がリーダーだったらなんなのよ』
マオマオは、更にギャリスに一歩近づきながら啖呵を切った。
明らかに帝国軍の兵士に喧嘩を打っているっぽいマオマオ。
こんなところで揉めるつもりはないぞ、おい。
『ま~て、まてまて、お二人とも冷静になろうじゃないか。
リーダーはこのボクだ、名をジグと言います。
まずは、この小娘の無礼をお許し頂きたい』
ボクはマオマオの両肩を後ろから押さえ、
ひょいと持ち上げると、キャロラインに引き渡した。
『あいつに言われるならともかく、ジグにまで小娘って誰のことよ!』
キャロラインに抱えられ、半ば拘束状態のマオマオを背に、
ボクはギャリスに向かって言葉を続けた。
『森の入り口からここまでの道のりですが、
決して友好的なものではなかったようです。
ギャリス殿、国王の元までボクたちが安全にたどり着ける保証が、
いったいどこにあるのか、お示し頂きたい』
ボクは、マオマオの言い分をそのまま預かりギャリスに問うた。
ズゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッ
そのとき建物の外で大きな物音がし、建物全体が大きく揺れた。
『ふっ、間に合ったか、我が最強の仲間たちよ』
ギャリスは僅かにその顔を扉の外に向け、
再びボクたちのほうに向き直ると、
表情を大きく歪め、見下すような態度で恫喝した。
『これからお前達全員を拘束する、ダークサイドの汚物どもが。
抵抗すれば殲滅しても良いとの勅命だ。
無駄なあがきは止めて大人しく投降するが良い。
この建物の周囲は、
私の仲間が既に包囲している。
投降か、それとも死か、そなた等が決めれば良い』
ダークサイド?
ひょっとして、暗黒雲の勢力のことか・・
もしや、ボクたちはあの勢力の一味と勘違いされているのかもしれない。
『少し待って欲しい。
ボクたちは、貴公が仰られる<ダークサイド>のものではない。
入り口で<異世界>と申し上げたとおり、
セイブルという異世界からやってきたのです。
ボクたちがあなた方に敵対するような意図は、
全くないことをボクがお約束します』
ボクは、今にも剣を抜き斬りかかろうとする左右の護衛を抑えるように、
両手を広げ無防備さをアピールしながら話しを進めた。
『そうやって今まで何度も、お前達は我らを欺し続けたではないか。
欺された結果がこのザマだ。
残されたマカインの僅かな領地に、
世界の国々で唯一生き残った我が国王と我ら聖騎士、
そして世界中から集まった善良な民たちを、
お前達が喰らおうとしているのではないか?』
ギャリスは忌々しそうにセリフを吐き、自らも剣を抜いた。
そうか、マカインもセイブルとそう変わりないということか。
<ダンジョン+ごく僅かの民>
こっちのほうが、生きている人間が残っているだけ状況は悪くない。
ならば、ここでギャリスたちと無駄な戦いを繰り広げることは、
事態を更に困難にするだけだ。
ボクたちが味方であることを、なんとか証明せねばならない。
《ジグ様、じじいの杖なら風のパワーでアレができます》
ソラが突然アシスト。
アレって何だ、良くわからんけどアレをさせようかい。
『じじい、この三人を外までなんとか吹き飛ばせ!』
『うほほーい、ならばこれで・・』
じじいの杖が一閃。
『な、なにをするっ!』
杖から発する強烈な空気の渦が三人を包み込み、
全員があっという間に扉から外へ吹き飛ばされた。
そして、今まで開け放たれていた扉は恐ろしい早さで閉じられた。
《ソラ、この建物の外壁全体にバリアを張れ。
ちなみに難攻不落のバリアだぞ、いいな》
《ジグ様、それですと余り長い間は持ちませんが》
《構わない、ボクに少し考えがある。
ここにバリアを張っている間に、
セイブルのダンジョンから三名のボスキャラを呼ぶんだ。
60階層・70階層・80階層でいいだろう。
森の入り口まで転送すれば、自力でここまで一気に来れるはず》
《了解しました、ではその旨じじいに命令を、早速転送準備に入ります》
『じじい、60・70・80階層の守護者を今から呼んでくれ、
ソラが転送をアシストする』
『御意、殿の大いなるご英断のままに』
じじいはそう言い放つや、杖を∞に廻し始めた。
今まで一度も逢ったことがないダンジョン守護者たちだが、
果たしてこの局面で即戦力になるのかどうか。
迷ってる暇はなく、ボクはボクの意思とやり方で、
この難局を乗り切るしかない。
『あ~あ、やっちゃったわねぇ、
やっぱ闘うっきゃないか、あたしたち』
マオマオが人ごとのように嘯く。
どこまでも本心を現さないな、まあ何れは・・・
一方、バトルモードのギャリスたち三名は、
じじいによる突然の<追い出し>に怒り心頭。
吹き飛ばされた勢いで、建物の周囲で
待機していたグレイトナイツと交錯した。
『あいたたた、ギャリスぅ、何やってるのよ、
ドジって恥ずかしくないわけ?』
聖騎士No3のドギミアが、
汚いものを避けるようにギャリスを放り投げた。
序列としては、No7のギャリスより格上といえよう。
『ま、まて、少し油断しただけだ。
こうなれば我ら全員で、建物ごと吹き飛ばしてやろうぞ』
ギャリスは地面と格闘したのち剣を納め復讐に燃える。
『それがどうもね、困ったことになっている』
No2のゼドギアが、
建物全体にコーティングされたエネルギーの膜を指さしながら、
肩まで伸びた銀色の頭髪を指で掻いた。
『うむ、バリア解除には少し時間がかかりそうだな』
No1のオストレッサが頷いた。
『それでは、各自バリアの属性分析と、
解除のための対策にかかりましょうか』
No4のベアバルトルは調整タイプの聖騎士らしく
作戦を進めるべく、
眼鏡型のゴーグルからキラリと英知の光を放った。
『じじい、三人は間に合いそうか?
これって結構キープが大変なんだが』
無謀にも<難攻不落>という条件を選択しただけあり、
使用するエネルギー量が半端でないこと痛感。
『殿のご指名は、60・70・80階層守護者ということ。
これからシャトルバスに乗り込むもようじゃ』
バス・・・冗談ですよね
今も凄い勢いで、体力(HP)が減っていく感じがする。
《ソラ、いったいあとどれくらいこのバリアは持つんだ》
《ジグ様の根性次第ですかね》
根性だと、ボクにそのようなスキルがあったのか。
このままでは、グレイトナイツとガチンコ死闘になってしまう。
それを防ぐには・・
意識が薄れそうになるなか、誰かがボクに小瓶を渡した。
『これでも飲みなんせ、根性が元気になるわよ』
なんだマオマオか、ん、これはなに・・
『元気溌剌、リポポタマスD』
お前はいったい何者なんだぁ。
と言いつつ、ファイトー、イッパァァァアツ




