<マカインにて それぞれの強者たち6>
<マカインにて それぞれの強者たち6>
『気をつけろ、全員一時待避!』
ボクの指示とほぼ同時に、各自それぞれのやり方で立ち位置から離れる。
キャロラインは、マオマオを抱えたまま大きく後ろに跳躍した。
じじいは杖を上下に動かすと、ふたりの近くまで瞬間移動した。
ボクは落下する物体を観察しながら後ずさりした。
物体は複数それも5体確認できた。
高さ3メートルはあろうかという人型の戦士、
彼等は直立したまま落下しており、膝を少し屈める程度でそのまま一斉に着地した。
重量の影響からか、着地による衝撃で地面が揺れる。
彼らに生命反応は感じられない。
彼らは建物の扉をボクたちから遮るよう一列に並び、
バトルモードで剣と盾を構えた。
そして、一斉に前進を開始した。
《ジグ様、マカインの守護ロボット<MONBURN type01>です。
本体は、マカインの超鉱物フラムライトで構成されており、
特に打撃に対する防御力が優れております。
また、フラムライト製の長剣には注意が必要です。
さきほど侵入アラートが発動されました。
私どもの排除任務にあたるものと思われます》
《了解した、ボクに<宮本武蔵>を装備してくれ》
ソラは、あうんの呼吸で応戦の準備完了。
これまでの経験を信じ、こいつらに相対してやろう。
ボクは脇差しから二本の剣を素早く抜き、
両手を左右に広げ<悟りの剣>を発動した。
すると、二本の刃はコバルト色に輝き始め、
剣先にマスター直伝のパワーが宿るのを感じた。
一方キャロラインは、マオマオをじじいに手渡し保護を依頼。
すぐさまボクの隣に立ち長剣を構えた。
どちらかというと楽しそうなキャロラインの表情に、
連戦連勝の片鱗を感じた。
マオマオは、意味深な表情でじじいにしがみついている。
ボクたちと共に闘う意志は全く感じない。
そもそも、<村娘>に頼ろうというのもアレだけど。
『ジグ様、相手はなかなかの手練れ。お気を付けて』
『お前もな、ボクは右の3体、キャロは左の2体を頼む。行くぞ!』
二人は同時に<MONBURN type01>に立ち向かった。
『はぁぁっ!!』
キャロラインがかけ声とともに2体に猛進し、
<会心の一太刀>でまず左の1体の盾を粉砕。
相手の剣の反撃を電撃のフットワークでかわすと、
もう一体の盾も一撃で粉砕した。
二体の防御力は大幅にダウンし、
剣撃では遙かに勝るキャロラインに一刀両断、
敢えなく倒れていった。
さすがは第50階層守護者、この程度の門番に負けるはずがない。
『やるなキャロライン、美しい演舞だったよ』
ボクは、いつの間にかキャロラインの隣に居た。
『あら、ジグ様のお相手はどう・・・』
二体を葬ったばかりのキャロラインは、
剣を納めながらボクの背後を確認し絶句した。
そこには細かく寸断された三体の<MONBURN type01>が、
無造作に散乱していたからだ。
その間およそ0.3秒、むろんソラに代わって貰ったからできたことだけど。
『パチパチパチ』
背後から拍手の音。
『お二人とも、無駄のない動きと圧倒的な剣撃に感無量ですわ、ふふふ』
マオマオめ、結局自分は手の内を見せず、
ボクたちにマカイン側のトラップを片付けさせたわけだ。
『この罠がわかってて事前説明無しか、マオマオ。
これで中に入れるんだろうな』
ボクは余計な詮索はせず、マオマオを問い詰めた。
ボクらにとって、マオマオはまだまだ役に立つはず。
『一応中には入れるわよ、扉は既に開いているはず。
でもねえ、そこからがまた難しいのよ』
マオマオはそう嘯きながら扉に近づき、
華奢な自分では重すぎることから、キャロラインに扉のノブを引くよう促した。
『構わないキャロライン、扉を開けてくれ』
指示に従って、キャロラインは重厚な扉を片方ずつ開けていった。
ボクたちは、解放された扉から建物の中に入り内部の様子を伺った。
内部は全くの暗闇で、入り口から差し込む陽光が細長く伸び奥へ消えていた。
僅かな光を頼りに確認したかぎり、内部は殆どがらんどうになっているようだ。
もしや、中にもトラップがあるかもしれない。
ボクの気持ちを察したか、じじいが杖から<灯り虫>を生み出すと、
それを数匹屋内に放った。
虫は羽根を広げ、内部をゆらゆらと飛びながら壁のあちこちに止まると、
松明のような淡い光を一斉に放ち始めた。
淡い光に照らされ、建物の天井まで容易に確認できる。
天井は、ドームのように流麗な曲線をみせ、
石造りを感じさせないつるんとした光沢を帯びている。
その表面には、極彩色の塗料により様々な造形が、
窓のない壁面まで連続して描かれていた。
『美しい、まるで教会芸術のようだ。
この建物のなかに危険はないようだが・・』
マオマオは、ボクの問いに小さく頷いた。
これは<MONBURN type01>のようなトラップを設置せずとも、
敵対する浸入者は先に進めないという自信の現れなのか。
このがらんどうの屋内でたった一つ佇むのが、
高さ3メートルほどの祠だった。
灯りが無いために祠の内部がどうなっているのかはわからない。
じじいが灯り虫を一匹、祠の中にも放った。
祠には扉がなく、誰でも自由に入ることができるようだ。
全体は釣り鐘をイメージさせる、内部は平坦な床面のみとなっており、
十名も入れば満員になる程度だ。
『ジグ様、ワシにはなんとなく想像できるんじゃが、
この祠は、第二の入り口ということでしょうかのう』
じじいは、祠の床を杖でツンツンと軽くつつきながら言った。
『そういうことかもしれないが、この祠の意味がわからない。
教えてくれマオマオ、
ボクたちはマカインの民と話し合うためにここに来た。
キミの意図は別にあるかもしれないが、
これからもボクたちと一緒にいたいのなら・・』
ボクはマオマオの前に立ちと、
ガラス細工のように輝くマオマオの瞳を覗き込んだ。
『ふん、まーだまだ先は長いわよ。
なにしろ<大殺戮>から見事に逃げのびた人たちだもの。
だからこそ価値があるんだけどねえ』
マオマオはじじいの袖を摘まみ、
キャロラインの腕をとり祠の中へ招き入れた。
『ささ、じいじもおばさんも一緒にいこいこ』
こいつは、オンとオフの差が激しすぎる。
『うほほーい』
じじいの嬉しい悲鳴。
『おば・・』
キャロラインは、人生初のおばさん呼ばわりで動転。
マオマオのペースだ、完全に乗せられている。
ボクには何も細工せずってか。
祠の中に全員揃ったところで、女子アナのような声色のアナウンスが響いた。
『ただ今から転送用カプセルをスタートいたします。
みなさまどうぞ、お近くのつり革にお掴まり下さい』
ブーン
おお、壁がブーンって鳴ったぞ
つり革ってなんだ、壁から何か出て来た、これか・・
各自、アナウンス後に壁から出て来た取っ手のようなものを手にする
天地がひっくり返るような振動を全身に感じつつ、
この祠は今何処かへ向かっている
『ほほほほ、三世代で遊園地に来てるみたい。
妾は楽しすぎるぞ』
はしゃぎすぎだ、マオマオ、この先はいったいどうなる




