<マカインにて それぞれの強者たち5>
<マカインにて それぞれの強者たち5>
『ジグ様、この娘は危険です。
ここで簀巻きにして、そのまま転がしておきましょう』
キャロラインが、いまいましげに言い放つ。
『ワシもキャロと同じ意見じゃ、表と中身に看過できぬ乖離がございまする』
さすがはセイブルの強者たち、ソラの分析に頼らずとも、
マオマオの異様な言動とごく微量だが全身から漏れ出る負のオーラに、
警戒を最大値まで引き上げたようだ。
『マオマオさん、それともマオマオちゃんかな。
何処から来たのか知らないけれど、
ボク達と一緒に中へ入りたいのなら、もっと真面目に化けたらどうなの』
こうなれば、結果を気にせず一気にたたみ掛けるしかない。
ボクはマオマオの最初から正体がバレるような登場の仕方に、
甚だ疑問を感じていたのだ。
『あ~らみなさん、随分なお言葉ですこと。
せっかくあたしが一緒に入ってあげると言ってるのに、
簀巻きにするだのバケてるだの、
まるであたしが妖怪変化みたいな言われ方ですわ』
マオマオはその場にゆっくり立ち上がると、
質問には直接答えず腰に両手を当て、
ボク達三人を見回しながら眉を顰めた。
ボクはやれやれといった感じで両手を広げ、
もう少しだけ、この茶番劇に付き合うことにした。
マオマオには某かの策略があり、且つ建物に入る術を知っているのだとすれば、
ボクたちがここに来る以前に、悩むことなく単独で潜入しているはずだ。
更に彼女はこうも言っている。
建物の中には、多数のマカイン住民が逃げ込んでいると。
つまり彼女は、この世界に於けるこれまでの出来事について、
ボクたちが必要としている重要な情報を持っていることになる。
ここはひとつ、必要以上に彼女を刺激することは控え、
できるだけ情報を引き出す作戦にいくべきではないかと考えた。
《ジグ様、実に素晴らしい考察です。
あの娘から情報を収集できれば、
それを私が分析し対策としてお示しいたします》
《分かったソラ、ボクに任せてくれ》
ソラの後押しもあり、マオマオに対する接し方が決まった。
『マオマオ、先ほどは少し失礼な言い方をしたかもしれない。
代表してボクが謝罪する、すまなかった。
それにしても、キミはなぜボクたちとわざわざ一緒に入りたいのかな。
もう一つ、最初に扉の開け方云々言ってたけど、
扉には何か特別な開け方があるということなのかい』
『ふふん貴方は少しだけ話しが分かるようね、いいわ教えてあげる。
この扉だけど、実は内側からしか開けられないようになっているのよ』
マオマオは、ボクからの謝罪で機嫌が直ったようだ。
この調子で知っていることをどんどん喋って貰おう。
『ほほう、面白い仕掛けじゃのう。
どれどれ、ワシが少し気合いを入れて・・』
マオマオの言葉を聞き、じじいが扉に近寄ると、
自慢の杖で扉をガシガシ叩き始めた。
だがじじいの打撃に扉はビクともせず、部分的に破損することもなかった。
じじいの杖の威力は、見た目以上に強力であることは承知の通り。
例え無造作に叩いたにしても、ここから入ることの難しさを見せつけられた。
『お爺さんたらせっかちねぇ、
そんなことやったって、その扉はビクともしないわよ』
マオマオはウンザリしたような流し目で、
じじいと扉の格闘を揶揄した。
『ならば其れがしが・・』
自分の番だとばかりじじいを押しのけ、
今度はキャロラインが長剣の柄でガシガシと。
『やめ~い!相当バカにされているぞボクたち』
ボクは、意気込むキャロラインに一喝した。
キャロラインも、しばらくして扉の堅牢さに納得がいったらしく、
肩で息をしながら扉から退いた。
『で、どうすればいいんだ、マオマオ』
ボクは困ったような表情で腕組みし、マオマオに問いかけた。
『とりあえず、4人で扉の前に並びましょうか』
マオマオはそう言いながら、扉の前にスッと直立した。
彼女に習い、ボクたち3人も並列に立つ。
扉は高さ3メートル、扉の幅はそれぞれ2メートルとかなり大きい。
マオマオはキャロラインに身体を持ち上げて貰い、
マオマオの顔と同じくらい大きなドアノッカーを、
両手で四度叩いた。
『コンコンコンコン・・』
すると、まもなく扉の中から地響きのような野太い声が応えた。
『誰だ、ここは既に閉ざされた門である、
何人たりとも開けるわけにはいかない、帰れ!』
キャロラインに抱えられたまま、マオマオが答える。
『我らは異世界からの来訪者。
<大殺戮>から逃れたマカイン住民の<最後の砦>を、
<あの方々たち>から守るべくやって参りました。
デイリング帝国国王オクタデリヌス様に、謁見を希望いたします』
マオマオの言葉に、しばらく何も返答がなかった。
<あの方々たち>って言ってたな。
言葉に敬語が入っているところみると、
やはりマオマオは殺戮者の一味と言えようか。
このままコイツを中に入れてしまうことは、
殺戮者の片棒を担ぐことになるかもしれないな。
ぼんやりとそう考える間に、扉の向こうから大きな声が響いた。
『よかろう、ではひとつ質問がある』
声の主は、構築物に入場する条件として質問を投げかけてきた。
『お前達に、開門のカギを渡すとしよう。
そのカギは、次の3つのうちどれが正しいか答えよ。
ひと~つ、金のカギ、ふた~つ、銀のカギ、みっつ・・』
おや、どこかで聞いた話しだな。
これって、最後のやつが正解に決まってるやん。
『みっつ、・・・どうでもいいカギ』
ええええええ、話しが違う、ちょっと違う。
動揺するボクをよそに、マオマオは即答した。
『どうでもいいのよね~、だって全部不正解なんですもの?』
マオマオの答えとほぼ同時に、建物の上から大きな何かが落ちてきた。




