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Descartesの備忘録  作者: Descartes2018
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<マカインにて それぞれの強者たち4>

<マカインにて それぞれの強者たち4>


 ボク達は、そこからかなり離れたところでキャロラインの長剣を発見。

 剣先は、地面に対し垂直に半分ほど突き刺さっていた。

キャロラインは無言で近づくと、地面から一気に剣を引き抜いた。

しばし沈黙が辺りを支配する。

キャロラインは首を左右に小さく振り、持った剣を鞘に収めた。

敗北の瞬間が脳裏を過ぎったのだろうか。

それでも、ボクを見てにっこり頷いた。


 これまで、どれだけのパネレンタ攻略チームを撃退したのだろうか。

なにしろ、グリストルダンジョンでも第50階層という、

重要領域を守る歴戦の強者である。

聞けば、勝利の広場に繋がる最終ゲートが待つ第100階層まで、

キャロラインの後に10階層毎5人のボスキャラが存在するらしい。

だがこれまで、キャロラインを倒し次に進んだ攻略チームはいなかった。

ということは、実質彼女がラスボスだったという考え方もできよう。

仮にボクがダンジョン内で彼女と闘うはめになったら、

どれだけ危険であるのか、想像するだけで冷や汗が止まらなかった。


彼女の所有スキルは、恐らく剣術のみではないだろうと推察。

 先ほどじじいとの対戦で見せた<会心の一太刀>だけでも、

幾多のチャレンジャーがゲームオーバーとなったはず。

それにしても、じじいがアレを素手で受け止めるとは、

なかなか食えないやつかもしれない。

ボクの場合は、ソラのアシストがあった。

咄嗟に詠唱した<剣豪宮本武蔵>と<ものまね倍返し>という、

ある意味反則技を併用することで辛くも難を逃れたわけだ。


このあと、他のボスキャラを追加で召喚することも可能だが、

誰を召還するにしろ、彼女より深層の守護者たちなのだ。

もしも、召喚する度にあのようなチャレンジイベントが発生するとしたら、

例えソラのアシストがあったにしても、

相手が納得できる対応ができる確証はなし。

キャロラインに説得させるという選択肢も考えたが、

彼女よりクセのあるメンバーが、

それで納得できるのかどうか。

そんなわけで、残りの召還は今回パスすることにした。


ボク達一行は、森の入り口から蛇行した細い道をゆっくり奥へ進む。

道中、辺りに敵対する存在が隠れていないか細心の注意を払う。

そこで出逢ったのは、マカインに生息する小動物だけだった。

それにしても、少々静かすぎやしないか。

暗黒雲は、確実にこの世界にも浸食してきている。

何かがおかしい、映画で例えれば怪獣が出没する前のあのピリリとした緊張感。


こんなときはソラ頼み。


《ソラ、何か感じないか、このまま進んでも大丈夫なのかい》


《ジグ様、前方に少し開けたところがあるようです。

 ですが、今のところ攻撃される危険性はありません》


《よ、よし、早速現場を調査しよう》


 哨戒を兼ね、先導するキャロラインにその旨を告げる。

間もなく、彼女は道の先に広い空間を発見し戻ってきた。


『ジグ様、道の先が急に広がりその先に不明の建造物を確認しました』


ボクはキャロラインの報告に頷くと、そのまま前進の合図。

そして、森の中に人為的に草を短く刈り取ったような広い空間にたどり着いた。


『・・これは遺跡なのか、それとも墳墓のようなものか』


それは、広場の中央にあたる地点に立つ、

大きな石を繊細に積み上げたような高さ20mほどの巨大建造物だった。

正面には入り口と思われる両開きの扉が確認でき、

訪れる者を全て拒むかのように閉ざされていた。


『殿、ワシがセイブルのDMダンジョンマスターであるがゆえ申し上げられること。

 それは、ここがマカインのダンジョン入り口であるということ。

 暗黒雲の勢力が、この中で暗躍していなければ良いのじゃが・・』


じじいは、顔を曇らせそう告げた。


『マカインにもダンジョンがあったのか。

 でもセイブルと違うところは、この世界がまだ存在しているということだ。

 ボクの使命は、マカインの世界を調べマスターに報告すること。

 早速内部を捜索する、行くぞ!』


 ボク達三人が構築物の扉に向かい一歩踏み出そうとしたそのとき、

扉の付近に何者かを発見した。

性別不詳の人物は、外套についた焦げ茶色のフードを頭から深く被り、

石造りの壁面にもたれるように座っていた。


『何者、そなたの身分を明かすのだ』


先頭のキャロラインが、その人物に駆け寄り誰何した。

相手は座ったままフードを静かに頭の後ろにずらし、

ボク達に顔を向け微笑した。


『初めまして、わたしの名前はマオマオと言います。

 これからどうしようか迷っていたの』


年の頃は10歳前後の小さな少女が、首をかしげて挨拶する。

綿製のチェニックと質素なズボン、革製の小さな靴を履き、

少し長めの黒髪を三つ編みで左右に束ね、いかにも村人といった容姿だ。

特に怪しい雰囲気は感じられないが、顔立ちはビスクドールのように美しく、

その華やかな笑みには誰もが魅了されるかもしれない。


『マオマオと言ったな、誰も居ないところになぜ一人で居るのだ』


キャロラインは、村人風の無力な少女に疑問を投げかけた。


『みんな、みんな中に逃げ込んだのよ、守るものも守られるものも。

 わかるでしょ、逃げないと全員捕まっちゃうんだから。

 捕まったらもう逃げられない、ふふふ』


 ・・ふふふって何だ


《ジグ様、マオマオの全身からごく僅かな<黒い霧成分>を観測いたしました。

 それは、暗黒雲の構成物質に似ております。

 今のところ有害ではありませんが、分析では危険に対する継続的観察が必要です》


 だろうな。


現れたのが凶悪な怪獣でなく美少女だったというオチだったけど、

中身はそれ以上に厄介かもしれない。


『私を一緒に連れていってくれるなら、扉の開け方を教えてあげるわよ?』


マオマオはその場に立ち上がると、誘いのポーズをキメながら人指し指を立てた。

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