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短編集 冬花火

夏歌

作者: 春風 月葉

 この身の腐ってしまいそうなジメジメとした嫌な暑さと蝉によるミンミンとうるさい合唱が、夏の訪れたことを私に知らせる。

 気の早いテレビ場面の中の住人達はもう一週間以上も前から夏を特集していたが、ようやく本当にその夏が訪れたようであった。

 お隣さんもお子さんと海に行くのだとはりきっていたし、郵便受けの中の広告も浮き輪や水着なんかのものが増えてきた。

 眩しすぎる日光を避け窓から離れ、駅前で受け取った家電屋の広告が描かれた団扇をパタパタとする。

 どんなに扇いだところで、吹くのは熱のこもった嫌な風だったが、それでも幾分かはマシだろうと手が疲れるまではそれを続けた。

 そうやって毎日を無駄に擦り減らし二、三週間が過ぎたある日の昼、自室の小さな網戸に一匹の蝉が止まっていた。

 それはミーンと鳴くわけでも、どこかへ飛ぶわけでもなかった。

 やがて私はそれが本当に止まっているのだということに気づいた。

 この蝉にはもう冬が訪れたのかと思うと、少し羨ましくも思えた。

 私はまだ、もう少しこの夏の終わりを待つことになるだろう。

 青いラムネの棒アイスをシャリシャリと囓り、空いた方の手で団扇を扇ぐ。

 今日は少し、蝉の歌が聴きたいと思った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] セミの鳴き声をBGMに一部の夏の風物詩たちを遠望し、一部の夏の風物詩たちを手元に置いて過ごしているような主人公の光景が浮かびました。 [気になる点] 夏が終わってほしいのか続いて欲しいのか…
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