ベタな恋のおちかた
「危ない!」
そう叫んで私の腕を掴んで引っ張った男の横顔がとても格好見えてしまった。
鼓動がいつもより数倍速い。顔に熱が集まるのも感じる。
昨日はなかったもの。数分前は確かに無かったと断言できるのに、
いま、この瞬間、確かにこの胸に感じ、巣食った感情の名は………。
それ、を自覚した途端私は己の眼球と脳の機能低下を本気で疑った。
「と、言う訳で病院に行こうかと思う」
「そんな状況で何でそんな結論に達しちゃうかな?そして何故、それを俺に報告しちゃうかな、この子は!」
それが後に結婚まですることになる相模高等学校三代目生徒会長 巳波 ハルと副会長 喜田 由の「ベタ」な恋の始まりだったりする。
「それって恋でしょ!」
「……私が君に?……やはり脳か、眼球の異常……」
「そんなに俺に恋したことを認めたくないのか!」
恋の落ち方は「ベタ」なのにその過程はどうやら「ベタ」とは程遠いようであるが。