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鳥居のむこうは別の世界(旧:異世界でヒロインとサバイバル共同生活する話)  作者: ふすまを閉めてく猫。
第3章 力になれることがあるのなら、力になりたいと思う
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99 ナタリと見張り




「なにもこないね……」

「ああ……」


 最初の一時間の見張りはオレとナタリ。

 主戦力のムーコには、休めるときに優先して休んで貰いたくこうなった。


「たいくつだね……」

「ああ……」


 村の入口で最初うろうろしていたナタリだが、それも飽きたのか金剛杖を使って地面になにか書き出すナタリ。

 こいつ……。

 まぁ人間の敵と違い、奴らは堂々とやってくる。このくらいのテンションでもいいだろう。


 ちなみにこの村へ来る前に襲ってきた『わらじ足』だが、あれは山頂付近でしか出没しないそうだ。一応この村では一度も見たとこがないそうで、その辺ちょっと安心した。夜間にあんなものが来られては、出現も気づかずあの世行きになりかねない。


 まぁ、あんなのが出るところじゃ生活もしないわな……。

 でも一応、頭上への警戒は怠らず見張りを続ける。


「見て、フブにいの顔」


 ナタリが地面に書いたものを見せてくる。

 見ると、意外にもなかなか上手に描かれたオレの似顔絵だった。


「うまいじゃん」

「少し格好良くしといたよ」


 そう言って、にやりと笑うナタリ。 


「いや……そんなもんだろオレ」

「いや……そんなことないよフブにい


 ふるふると何度も首を横に振るナタリ。

 こいつ……。

 うーむ……。ていうか緊張感の欠片もない。


「怖いくないのかナタリ?」

「んー?」


 また何か描き出すナタリ。


黄泉よみがえり、怖くないのか?」

「あー、怖いけどー」

「……そうは見えないぞ?」

「まー死ぬときは死ぬし、まーなんとかなるよー」


 なんかテキトウに答えるナタリ。

 これはあれか……。過去2度も骸骨に噛まれて、ある意味達観したのかもな。うん……。なんか強い……。


 オレなんか村に出たことないって言われても、未だに頭上の警戒を辞められない。だって怖くね? 一瞬でぺちゃんこだぞ。ぺちゃんこ。あいつにだけは殺されたくない……。


「見てー、ムーコねえ


 今度はムーコを描いたらしい。


「おお、上手いじゃん」


 ムーコのキリっとした表情がよく似てる。

 ナタリってデザインセンスとか良さそうだな。


 また次に何かを描きだすナタリ。

 今度はナタリ自身かな。


「フブにいー」

「んー?」

「北国シーラを目指してくれて、ありがとね」

「えっ……」

「あたしの為に北を選んでくれてありがと」


 ああ……。


「まぁ、約束したしな」


 ナタリとはこの世界に来た当日、『元の世界』に戻る方法を探すことを約束している。先日はそれを果たすために北国シーラ行きを選んだ。


「でも、ごめんね。あたしだけの我が侭で、危険な北を目指すことになって……」


 ナタリが申し訳なさそうに言う。


「あー……、いや、でも北を目指したのは、それだけが理由でもないからいいぞ」

「えっ、そうなの?」

「ああ、北を選んだのはもちろんお前との約束もあるけど、生きていく為だよ」

「生きていくため? なら逆じゃないの?」

「いや……なんていうか、ほら。最初ムーコに骸骨がいこつりを提案されたとき、オレは危険だからと反対しただろ? でもその結果、骸骨の大襲撃に遭って痛い目を見た」

「ああ……」

「その後も、面山賊めんさんぞくとは戦わないようにって取り決めしたけど、結果的に戦うことになって死にかけた」

「うん……」

「それで悟ったんだ。この世界、逃げてるだけじゃ生きていけない。最低限、まともに生きていくためには戦えなきゃいけないってな。だから、安全の為の南か、挑戦の北かってなったとき、北を目指してたくましく生きていくのが長い目で見て逆に安全かなって思ったんだ」

「なるほど……」

「まぁ、でもそれですぐ死んだら意味ないけどな」


 少し笑い、自嘲気味に言うオレ。


「だね」


 と、微笑むナタリ。

 そしてまた、地面の落書きを「見て見てー」と言ってくる。


 見ればそこにナタリの似顔絵はなく、ムーコ絵からオレ絵に伸びる矢印とハートマーク。そしてオレ絵から同じようにムーコ絵に伸びる矢印とハテナマークが描かれていた。


「なにこれ?」

「ムーコねえ、フブにいが好きなんだなって思って」

「そうか……」

「フブにいは、どう思っているのかなって思って」

「……そうか」


 どう思っているのか……。

 尊敬の念と、親しみを感じているとはムーコにも言った。

 けど、こういう風に聞かれるとどーなんだろう……。


 少なくとも、ガキの頃に好きになった女子に対する気持ちとは違う気がする。ああいう『過剰などきどき感』とか『見てくれに対する変なこだわり』とかそういうものがない。

 強いて言えば……『大切』──だろうか。


 オレはナタリが描いたハテナマークを足で消して、なんとなく『たいせつ』と指で書いた。なんか照れくささもなかった。


「ほわぁあああ……」


 ナタリが変な声をあげた。


「何だその声は」

「いや、なんとなく……」


 ふん。ガキンチョめ。

 オレは落ちてる木の枝を拾って絵を描き足す。

 ナタリの似顔絵をかいて、そこにオレから矢印を延ばしてハートマークを描いてやった。


「なにこれ」

「ナタリと、オレから伸びるハートマークだ。うれしいか?」

「う、うれしくないわ!」

「ははは」


 からかってやると少し赤くなって狼狽えるナタリ。


「可愛さも少しサービスしといてやったぞ」


 オレはナタリ絵の目もと部分を指し示す。


「いや……、ぜんぜんかわいく描けてないけどあたし」

「いや、そんなもんだろお前」

「いやいや、そんなことないよフブにい


   ◇


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