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鳥居のむこうは別の世界(旧:異世界でヒロインとサバイバル共同生活する話)  作者: ふすまを閉めてく猫。
第3章 力になれることがあるのなら、力になりたいと思う
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96 ムーコとの関係




「何かあれば、なんでもおもうし付け下さい。私はフブキくんの側仕そばづかえですからっ」


 そう言って、改めてオレとの関係性を主張してくるムーコ。

 その表情には、若干じゃっかんあせりのようなものが見えた。


 こ、これは…………。

 もしかすると、オレがまだ一度もムーコを側仕そばづかえとして扱ってないからかも知れない……。


 うう、む……。

 側仕そばづかえ……か。


 ムーコ曰く、自らの主人と認めた人に仕える側が契約を申し入れ、その身を主人の為に役立てるお役目。たしか基本的に主人に絶対服従で、主人からの見返りはとくになし。ただひたすら心に決めた主人に『忠義』を尽くすのみという……。明らかに従う側に利点のない関係だが、自身が心から信じられる主人に尽くす事にこそに、意義があるのだとか……。


 うむ……。

 これで何も頼まないのは……以前と同じままの扱いをするのは、ムーコの覚悟に対して失礼か。

 仮にも一度引き受けた身。

 ちゃんと(・・・・)側仕・・()として(・・・)()ことも(・・・)、大事なのかも知れない。


 でも……。

 側仕そばづかえとして扱うってどんなだ? 側仕そばづかえって家来けらいってことだろ?

 家来なんかもったことのないオレには、どうして良いのかわからな

い…………。

 ……あ。あれか! 『暴れん坊将軍』の上様みたく振る舞えばいいのか!? 『じぃ、後は任せた』、とか『忠介、頼むぞ』みたいなアレか!


 うん……。なんかちょっと解った気がした。

 なるほど……。


「わかった。じゃあこれからは色々と頼むぞムーコ」


 オレが試しにそう応えると、彼女は「はいっ」と答え、安堵した様子を見せた。

 うん……。これで良かったようだ。

 期待に応えられたようでなにより。


 まぁ、一応オレはチームリーダーで男だしな。どのみち、ある程度は色々決定を下したり頼んだりする必要も出てくる。そういうのにも少しは慣れないとな……。それにいつかは仲間も増えるかもしれないし、協力的な仲間がいるのは、チームで動いていく上でとても助かることだ。ムーコの気持ちに感謝である。


 …………。

 でも、オレが何か頼んだことで、ムーコが怪我をしたらやだな……。

 オレが決めたことで、こいつが危ない目にあったら嫌だ。

 どうすれば……。

 …………………………。


「ムーコ。新しい黄泉よみがえりだけど、お前が手に負えないって思ったらすぐに教えてくれ。撤退てったいする」

「わかりました」

「オレじゃ、本当に危険かどうかの判断も危ういから、頼む」

「了解です」

「……」

「…………」

「……あ、あとムーコが怪我するのはナシな。一応、退魔師たいましだから多少の怪我は許容するけど、大怪我はナシ。だから……無茶はしないでくれ。……いい?」


 命令──というよりは伺うように聞いてみる。

 そんなオレに、ムーコは「はいっ」と嬉しそうに答えた。


 ……よし。

 これでこいつは無茶しないでくれるだろう。

 これならいい……。

 ………………。


 それにしてもムーコ。疑問も挟まず、すぐ了解していったな……。

 オレが村を見捨てたりするのかとか、不安に思わないのだろうか……。


「あ……、あともう一つ。村人よりもムーコとナタリの安全優先で」

「はい」


 もちろんそんなことはムーコも心得ているだろうが、こいつは夢中になると周りが見えなくなることがある。ナタリを守ることはともかく、いざという時、村人の命を救うために自身の命を投げ出しかねない。本当に大切なものを守るためには、優先順位をしっかりさせておくことが大事だ。


「あっ、いた」


 ナタリが家から出てきた。


「どしたナタリ」

「なんか気づいたらいなかったから」

「ああ、少し食休みしてた」

「村の人たち気にしてるよ?」

「そか……。じゃあ戻るか」

「はい」


 もう少しムーコとしたいこと(・・・・・)()あったが(・・・・)、また後にする。

 今すぐどーのって話でもないだろう。


「……あ、ナタリ。一時的にこの村を守る方向で動くけどいいか?」

「もちろん」


 まるで当然のことのように、あっさり即答するナタリ。

 ふむ。なんかちまちま自分達の安全を考えるおのれが小さく見えるぜ……。


 オレ達は宴会の席に戻る。

 村人たちは楽しそうに話し、ナタリがアホな受け答えをする。

 場は笑いにつつまれる。


 うん……。悪い感じはしない。

 きっと気のせいだろう。



 ──漠然ばくぜんとだけど、この村は居心地が悪い。



 そう思ったのは、オレが人付き合いが苦手だからかも知れない。



   ◇


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