90 口論ろん
「6体くらいなら倒せたんじゃないのフブ兄?」
腕を組んで、ナタリが問いつめてくる。
あれから20分。面山賊は意外にも早く立ち去った。
「無理だよ」
「フブ兄。前にムーコ姉守るために10体以上倒したんでしょ?」
「そうだけど……」
あの時は捨て身だったからだ。
肉を斬らせて骨を断つ。
それくらいの覚悟で、怪我を代償に戦ったからこそ出来たのだ。
まともに──怪我をせずに何体も倒すなんて、とても出来ない。
「なら、戦って倒せないこともなかったよね」
「テントに逃げ込まずに戦えと!?」
「そう!」
「お前が身体拭いてるだけで?」
「拭いてるだけじゃない! 裸だった! 入ってくるならくるで、一言言えたでしょ!?」
「いやそれは……」
言ったハズだが……。
でもパニくっていてよく覚えていない。
ていうか、元はと言えばナタリのアホのせいで警戒がゆるんだせいだ。
しっかり警戒してれば、もっと早く気づけて余裕もあったかも知れない。
「あたしのせいにするの!?」
「いや、ナタリのせいとかじゃなくてだな……」
っていうか、口に出してないのに、なんでこいつオレの考えがわかるんだ!?
思考を読まれてる!? ナタリのくせに……っ。
オレ達が醜く言い争っていると、ムーコが仲裁に入ってきた。
「まぁまぁ、良いではありませんかナタリちゃん」
「ええっ!?」
「フブキくん、ですよ?」
「…………だから!? ちっとも良くないよっ」
「そうですか?」
「ムーコ姉は見られてないからそう言えるんだよっ」
「私は別に、フブキくんに見られても良いですよ」
「ええっ!?」
「ええっ!?」
オレとナタリの叫びがダブる。
「なに驚いてんのフブ兄」
ぎろっと睨んでくるナタリ。
「いや……」
「ナタリちゃん。殿方と共に居れば、こういうこともあります。故意ではないので許してあげてください」
「むぅ……」
「本当に故意でないなら……まぁ仕方ないけど…………本当かな」
ナタリがジロっと疑いの目を向けてくる。
「む。ていうか、お前がオレを覗いてないでさっさと身体を拭いていればこうはならなかったんじゃ……」
「そうですね。一理あると思いますよナタリちゃん」
「ええっ!」
「お互い様、ということでどうでしょう?」
「割に合わないよムーコ姉!」
「なにを!」
「なによ!」
みにくい口論は続いた。
◇




