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9 村


 

 村に着いた。


 村の正面入り口には、石垣で出来たごつい大きな門があり、その上にこじんまりした三階建ての城があった。まるで要塞ようさいのような雰囲気だ。要塞ようさい城門じょうもん

 村と言うより、ちょっとした小国といえるかも知れない。


 門には門番の人がいて、最初は少し警戒されたが、ビャクさんから伝言を頼まれた事と、鳥居をくぐってこちらに迷い込んでしまったことを話したら中へ入れてくれた。


 そして伝言内容の『ヒスイ神社でめん山賊さんぞくが出た。生き残りはビャクだけ』というのを伝えたら、あっという間に大きな騒ぎになった。


 次々と刀や槍など武装した人たちが集まって来て、ある程度の人数ごとにどんどん村を出て行く。オレたちがいたヒスイ神社に行くらしい。おそらく既に100人近くは出て行った。


「なんだか、凄いことになったね」


 ナタリがぽつんと言った。


「うん。思ってたより大事になった」


 考えてみれば何十人も亡くなっている事件なのだ。当然かも知れない。

 だが、オレ達もオレ達で困ってる。いつまでも遠慮してはいられない。


「すみません……あの、僕たち元の世界に帰る方法を探しているんです。何か知っていたら教えてくれませんか?」


 オレは忙しく立ち回っている門番をつかまえて聞いた。


「ん? 一度この世界に来た奴は戻れんぞ」

「ビャクさんからも、そう言われました。けれど何か方法があればと思いまして……」

「ないな。ここにゃそういう奴はごまんといる。けれど誰も帰れちゃいねー。悪いが諦めるんだな」

「そんな……」

 そして門番はすぐに、武装している人たちに声をかける。

「支給品のチユフだ。ほいよ」


 御札おふだのような紙切れを、数枚ずつ配っている。


「──ってなわけでおれぁ忙しいからよ。そういう事なら誰かほかの奴に聞いてくれよ。あっ、そっちのアンタも『チユフ』忘れてるよっ! これ忘れちゃいざと言うとき困るぜーっ!」


 そう言って門番さんは去っていった。

 チユフって一体なんなんだろう……。


「……どうしましょうか?」


 ムーコが言った。


「あ、えっと……どうしよっか」


 誰かにこの村のことを教えてもらいたい。

 元の世界に戻る方法……あの鳥居の現象に詳しい人はいないだろうか。もしくは自分たちと同じように、鳥居をくぐって来た人がいるのならその人達から話を聞きたい。


 だが、ここに集まってくる武装した人たちは、みな真剣な面もちで忙しそうだ。とても声をかけられる雰囲気じゃない。ていうかガタイが良く、怖そうな人も多いので、積極的には話しかけたくない。


「あの……とりあえず『換金所』ってのを探さない? あのビャクって人がそれをくれた時に言ってたじゃない」


 ナタリが、オレの腰に下げているお面セットを指して言った。


「あ、忘れてた。換金所でお金になるって言ってたね」

「では、まず換金所に行きましょう」

「そうだね……換金所の場所は、途中誰か話しやすそうな人に聞こうか」


 とりあえずオレ達三人は、武装した人たちをわき目に村の中へ進む。

 要塞ようさい城門じょうもんの正面から続く道は広く綺麗に保たれており、街灯はないが両側に立ち並んでいるお店から明かりがこぼれている。そして、いくつかの飲食店と思われる店から、香ばしいご飯の匂いが漂ってくる。晩飯時なのだろう。匂いをかいだらおなかが空いてきた。そういえば、夜はまだ食べてない。


 ムーコとナタリも飲食店を気にしてる。お腹空いてるのかな。


「その……換金所でお金貰えたら、まずご飯にする?」

「そうしましょう」


 二人に聞くとすぐにムーコが賛成した。ナタリも元気よく頷く。


「あ、いや、まだどれだけお金を貰えるかわからないから、そんなに食べれないかも知れないけど……宿やどのことも考えなくちゃいけないかもだし」

「きっとなんとかなりますよ。いざとなったら野宿をすれば良いのです」


 オレが不安になって言ったら、ムーコが問題ないとばかりに答えた。


 宿よりご飯優先?

 それにはオレだけでなく、ナタリも戸惑った。

 


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