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鳥居のむこうは別の世界(旧:異世界でヒロインとサバイバル共同生活する話)  作者: ふすまを閉めてく猫。
第3章 力になれることがあるのなら、力になりたいと思う
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89 不可抗力的な……




「身体()きたい」


 夕食後、テント内で一休みしてるとナタリが言った。


「あーオレも」


 実は昨日も、寝る前に水筒すいとうの水を使って3人身体を拭いた。

 今日なんかは昨日以上に過酷かこくな道のりで、身体がべとべとだ。

 本当ならシャワーでも浴びてさっぱりしたい。


 だが今は水筒にたくさん入っているとはいえ、水は貴重だ。ふんだんには使えない。

 水をひたした手拭てぬぐいで、身体を拭くだけで我慢するしかない。


 さわでも見つけられれば良かったんだが……。


「今思えばジド国の銭湯せんとうってありがたかったな」

「うん。シーラ国にはあるかな?」

「あるだろ? ジド国より小さいらしいけど、それでも3分の2くらいの大きさはあるらしいし」

「そか。楽しみだね」


 オレは手拭てぬぐいとおけ水筒すいとうを持って、テントの外へ出る。

 当たり前だが、ナタリとムーコが身体をくときオレは外だ。

 外に出て、黄泉よみがえりを警戒しながら身体をぬぐうのだ。


「フブにいのぞいちゃだめだよ」

「のぞかねーよ」


 アホなことを言うナタリを適当にあしらう。

 これで覗く奴いたら勇者だろ。

 バカ相手にしてないで、さっさと洗おう。もし面山賊めんさんぞくとかが来たら面倒だ。


 ちなみに先ほど面山賊とバトったところから、少しだけテントを移動した。

 なんでも奴らは縄張なわばり意識が強く、活動範囲が結構決まっているらしい。出るところには出るが、出ないところにはそうそう出ない。こないだ面山賊から助けてくれたザッシオさん達が、そう言っていた。


 だから遠目からでもすぐ見つかる草原地帯そうげんちたいけて、少し戻った木々がしげり出すポイントにテントを設置しなおしたのだ。

 念のため──少しでも見つかりにくくする為に。


 オレは上半身(はだか)になり、水を浸した手拭いで拭いていく。

 汗くさいとあいつらに悪いし、オレ自身も不快だ。

 しっかりぬぐう。


 ……。

 …………。

 ふと気配に気づく。

 ナタリがテントから顔を出してオレを見ていた。


「フブにい……いい身体になってきたね」


 ふふっと笑うナタリ。


「てめっ。のぞくなっつってお前が覗いてんじゃねーよっ」

「男でしょ。……気になるの?」

「なるわ!」


 なるんだよ。オレみたいに身体に自信がない奴は……。

 武芸教わり出してから引き締まってきているとはいえ、まだだらしない身体だ。腹もまだ少しぷにってる。くそっ。

 っていうかお前もさっさと身体を拭け。お前らが終わんないとオレ、テントに入れねーんだぞ。


 オレはナタリから見えないテントの側面に移動して、身体を拭く。

 下半身も、上半身ほどでなくともあせってる。軽くでいいからぬぐいたい。

 ズボンを足下におろして、手拭いを水にひたして気づく。

 この視線……。


 またかっ! ──と思いテント入口の方を見るが、ナタリはいない。

 気のせいか?

 そのまま何気なく周りを見回すと──


「……っ!」


 面山賊めんさんぞく

 それが1体!

 いや、2……3体!

 こっちに走ってきている!


 すでに30メートル程!

 やばい!


 オレはズボンをあげて退魔刀たいまとうを抜く。

 が、ベルトをしっかりしめてなくてズボンが落ちる。ちょ。


「む、ムーコ! 面山賊めんさんぞくだ!」


 オレは敵襲を二人に知らせる。

 が、見れば面山賊めんさんぞくは全部で6体ほどに!


 ──っ! 無理だ!

 オレはおけ手拭てぬぐいもそのままにテントのなかへ──


「あっ」


 出てこようとしたムーコにぶつかり、そのままテントに転がり込む。


「ご、ごめんっ」


 起きあがると目の前にははだかのナタリ。


「あ……う……あ…………で、でていけフブにいーーーーーーーーー!」

「い、いや無理! 無理無理無理っ! 面山賊めんさんぞく! たくさん!」

「えっち! えっちえっちえっち! へんたーーーーーーーーーーーーーい!!」


 ナタリが水筒とかいろいろ投げてくる。


「いたい! やめて! マジ無理!」

「無理じゃない! あっち向いて! ていうかムーコねえ押し倒してる!」

「あ、ああ! ごめんムーコ!」


 オレはムーコの上から退いて後ろを向く。

 耳をませば、テント周りを面山賊めんさんぞくが囲む足音。

 そして──ぐいんぐいんと奴らの攻撃をはじく、結界テントの音。


 こえぇ……。


「何体ですかフブキくん」


 ムーコが起きあがる。

 彼女はすでに服を着ていた。寝間着ねまき姿だ。


「6体……いや7体かも」

「テントを飛び出して戦うには、少し面倒ですね」

「ああ……このままやり過ごそう」

「そうですね」


 さっき結界テントを試せたのが良かった。

 怖いけども、なんとか落ち着いていられる……。


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