87 遭遇
「フブキくん、面山賊です」
「えっ」
ムーコの視線の先を見ると、400メートルほど向こうからこちらに走ってくる者達がいる。
ボロボロの着物に、白いお面。
面山賊だ。それが──
「3体か」
「はい」
「ナタリ。テントに入ってろ」
オレはすぐに結界テントを広げ設置する。
「顔出すなよ」
「う、うん! 気をつけてね」
そう言ってテントに逃げ込むナタリ。
ナタリに面山賊は荷が重い。
っていうか、オレもギリなんとか戦えるってレベルだ。
出来ればごめん被りたい。
「結界テントの性能を試す、良い機会ですね」
ムーコが落ち着いて言った。
「ん? あ、そうか。……じゃあテントより下がっとくか?」
黄泉返り相手に結界テントは『絶対』らしいが、オレ達はまだ一度も実践で試したことがない。
「はい。一度様子を見てみましょう」
そう答えて、ムーコはテントより少し後方に移動する。
「ナタリ聞こえたな!? テントの性能を試すからな!」
オレもテントの中にいるナタリに伝えて、後方に下がる。
「ええっ!? あ、あたし中にいるんだけど!?」
「いなきゃ試す意味ないだろ! 大丈夫! 何かあればすぐ助ける!」
「ま、マジ……!? 信じらんないっ。あたしオトリ!?」
「そんな感じだ!」
「そんな感じだじゃねーっ!」
ナタリの叫びが聞こえるが、わりと安全を確保した上でテント性能を試せるチャンスなのだ。いざという時、結界テントが頼れるかどうか、確認しておく必要があるのだ。
…………。
でも、3体は必要ないか。
ナタリにもしもの事があるといかん。
「ムーコ、やっぱテント試すなら1体で充分だ。先に2体やろう」
「それもそうですね……。了解ですっ」
そう応えるや、ムーコはすぐ前へ飛び出し駆けていく。オレもそれにつづく。
見れば、およそテント前方10メートル地点で、駆けてきた面山賊とぶつかる感じだ。
最初は鉈を持った面山賊。すぐ後ろに刀持ち。
そして40メートルほど遅れて、ゴツい大斧を持った面山賊って感じだ。
ムーコが鉈持ちと接触する!
──ズバンッ!
出会い頭の一振りで、ムーコがそいつを斬り伏せる!
そして返す薙刀で──
──ズバン……ッ!
2体目の刀持ちも地に伏した。
すげぇ……。
ムーコがオレの横に戻る。
「これで良いですかっ?」
「あ、ああ……」
オレはなんにもしてないけど、とりあえずこれで残り1体。かなり安全にテント性能を試せる!
すぐにオレ達は、またテント後方に下がる。
なにかあっても、すぐナタリを助けられる距離だ。
「ナタリ! 残り1体にした! 一応、武器構えてテントの奥に!」
「もうそうしてるよ!」
ナタリが返答した直後、斧持ちがテント前に!
────が、
そいつはテントをスルーして、オレとムーコのところに向かって来た!
テント内に人がいるって、気づいてないのか!?
これじゃ性能が試せない!
大斧持った面山賊は、オレに襲いかかってきた。
くそっ。
オレはそいつを引き連れて逃げる。
そして、くるっと周りテントの方へ──
「ナタリ! 顔出してテントの中にいるってアピールしてくれ!」
「ええっ!?」
「これじゃテントが役立つかわからない!」
「本気!? うー、わかったわよ!」
ナタリがテントから顔を出す。
「面山賊こっちだこらぁー!!!!」
叫ぶナタリ。
なんかヤケクソだった。
だがオレを追いかけていた面山賊が、がばっとナタリの方を振り返る。
まるで、顔を出すまで気づかなかったような反応。
すぐに面山賊はナタリへ襲いかかった。
「ひぃっ」
ナタリがびびってテントのなかへ引っ込む。
──グィン!
面山賊の振り下ろした斧がテントに弾かれた!
おお! すげぇ!
あんな大斧を弾くなら大丈夫そうだ。
奴はさらに2~3回斧を振るって無駄と判ると、またオレを狙ってきた。
だが、そこをすかさずムーコが一閃!
斧持ち面山賊は一度ぐらりとゆれ、そのまま地に伏した。
無事……実験をすることが出来た。




