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鳥居のむこうは別の世界(旧:異世界でヒロインとサバイバル共同生活する話)  作者: ふすまを閉めてく猫。
第3章 力になれることがあるのなら、力になりたいと思う
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82 事情



 二人をテントで休ませ、オレは2日前に薙刀を買った武器屋へ事情を聞きにいった。


 店主のじいさんが言うには、烈風の発生には使用者の『気力きりょく』を消費するとの事。

 というか、戦闘用せんとうよう宝具ほうぐ付加効果ふかこうかのエネルギー源は、使用者の『気力』。

 この世界の常識なのだそうだが、オレ達がマレビトであるというのを失念して説明を忘れてしまったらしい。



 ──『烈風れっぷうを多用すればすぐに気力を使い果たす。最悪意識を失うから注意してくれ』



 そう言われた。

 もちろん『烈風れっぷう』は出すつもりがなければ出ないので、通常使用には問題ない。要するに、考えて運用してくれということだった。


「なるほど……気力かー」


 テントに戻って説明すると、ナタリがそう呟いた。

 気力。


「ああ、おじいさんが言うには『やる気』とか、『精神力』とか、そういうものと考えてもらえばいいってさ。だからまぁ、ぐっすり休めば回復するってさ」


 横になっているムーコに伝えると、「そうだったんですか……」と納得した様子を見せた。


 うん……。

 運動量的にオレやナタリとそう変わらないはずだが、明らかにムーコが一番疲労している。


 なるほど。烈風の薙刀で骸骨を蹴散らしながら三人で倒していくの、凄い良いなと思ったけど、限りがあるか……。まぁ、考えてみれば当たり前かもしれない。そう簡単に黄泉よみがえりを倒していけるのなら、この国の西区だって落ちはしなかっただろう。


「すみません、私にもっと『気力きりょく』があれば……」

「なにいってんだムーコ。ムーコだからあんなにも烈風を出しまくれたんじゃん」

「そうよムーコねえ

「およそ20回は烈風を出したんじゃないか? たぶんオレなら5回でバテるな」

「じゃああたしなら6回かな」

「おい、なんでオレより多いんだよ」


 ボケるナタリにつっこむオレ。

 ふふふとムーコが笑う。


「でも実際使ってみて、とても良い買い物をしたと思いました」


 元気はないが、満足げな様子でムーコが言った。


「そうなのか?」

「はい。薙刀の戦闘において『間合まあい』を維持することがとても重要なのですが、この『烈風の薙刀』だとそれがとても簡単なのです」

「……要所要所で風で蹴散けちらせるからか」

「そうです」

「はっきり言って、骸骨なら100体相手でももう負ける気がしません」

「おぉー!」

「すごいムーコねえっ!」

「あ、『気力きりょく』の続く限りは、ですが」

「だな」

「なのでフブキくん、ナタリちゃん。薙刀を買ってくれてありがとうございます。大切にします」


 そう言って、烈風れっぷう薙刀なぎなたに触れるムーコ。


「いや、ほとんどムーコが稼いだお金だしな」

「そうよ」

「ですがお二人は何度か大判小判おおばんこばんを」

「ああ……そんなラッキーもあったな」


 たしかナタリが、骸骨の鎧裏よろいうらから大判を2枚。そして実はオレも、小判(5万ポウ通貨)だかを地味に2枚ゲットしていた。


 だがムーコは、大判の20万を遙かに上回る『面山賊・かしら』を2体も倒している。それがそれぞれ130万ポウと、120万ポウにもなったのだ。それに比べたら数枚の大判小判などささやかなものだ。


 でも──


「まぁ、チームだし」

「そうよ」


 チーム『同心どうしん』。

 オレ達は三人組の退魔師として換金所──もとい『退魔師たいましかい』に登録した。

 命がけの戦闘を前提とする退魔師において、仲間は一心同体……とまでいかなくとも運命共同体だ。


「強いムーコがより強くなって助かるし」

「そうよ」

「実際、今日は新しい薙刀を試すだけの狩りで、40体も呪物化じゅもつかできたしな」

「そうよ」

「…………そうよしか言ってねーぞナタリ。眠いのか?」

「だって……そうなんだもん」


 口をとがらすナタリ。

 これまた、ふふふと微笑むムーコ。


 それからは今日は早めにお昼をとり、昼過ぎまでお昼寝。そして午後からは先日に続いて買い物三昧、食事処で夕ご飯、銭湯でお風呂と、優雅に一日を終えた。




 夜、布団に入ってふと思う。

 黄泉よみがえりが骸骨だけなら、こんなふうに楽しく生きていけそうだ。


 たまのめん山賊さんぞくも少数なら倒せるし、手に負えないほど多ければ国に逃げればいい。屈強な門番さんたちが助けてくれる(聞くところによると、彼らにとっても稼ぎになるらしく、大群でない限り歓迎してくれるとの事)。


 こないだは少し、森の奥地へ入りすぎたのだ。

 今後は国から離れすぎず、安全第一にやっていけば生きていける。


 そう思い、眠りについた。



 5日後。

 この国が落ちた。

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