8 再出発
洗濯も終わり、村へ向けて再出発した。
服はまだ乾いていないから、腰に巻く。
白金少女はちょっと無理してそのままズボンを履いたようだ。まぁ、夜とはいえ気温は暖かい。そのうち乾くだろう。
歩きながら白金少女にオレとムーコは名乗り、彼女の名前を訪ねた。
「あ、あたしはナタリ。ナタリ・アルフォンス。エメラルダ地方から来たの」
「……!」
多少予期してはいたが、やはり白金少女の出身地は聞いたことがないところだった。
エメラルダ、地方? どこの国だろう。っていうか、やはり彼女も自分とは別の世界から来ている?
「ナタリちゃん。これまた個性的で可愛いお名前ですね。それにエメラルダ地方というのも聞いたことがありません。やはり私のいた国からは遠いところのようです」
ムーコは感心したように言った。
「あ、ナタリって呼び捨てでいいよ。ムーコお姉さん」
にこっと笑って言うナタリ。
「了解しました。ナタリちゃん」
にこにこと、了解するムーコ。
天然か。
「……ムーコお姉さんは、どこから来たの?」
ナタリはそのへんスルーして、ムーコの出身地を興味深げに尋ねた。
「ハリマ国です」
「ハリマ……国? ハリマ地方じゃなくて?」
「はい。ハリマ国です」
「そ……そうなんだ……」
ムーコがにっこり答えるが、ナタリの表情は曇っている。
「フブキおにーさんは? 出身地はどこ?」
「……オレは日本って国から」
「にほん……」
ナタリが反応した。
「知ってる?」
「あ、……いや、聞いたことあるような気がしたんだけど……。勘違い、かな」
「そっか……」
一瞬、ナタリの反応から知ってるのではと思ったが……。
「えっと……オレはナタリって呼んでも?」
そう確認すると、うん、そう、そう呼んで、とばかりに頷く彼女。
「じゃあ、ナタリ、の……エメラルダ地方というのは、どこの国なの?」
国名を聞けば解るかもしれない。ありそうな気がするし。
「国名……」
「うん」
「国名は、ないの」
……へ? 国名がない?
「……その、国という境目は、ずっと前になくなってしまったから」
!? 国の境目が、なくなった!?
……そんなことがあるのか?
「そ、そうなんだ……」
「……うん」
オレが戸惑いながらも受け答えると、彼女も同様に困惑していた。
「国という境目がないなんて、初めてお聞きしました。やはりとても遠いところのようですね」
ムーコは感心しっぱなしだった。




