72 少年
翌日。
ムーコに武芸を教わり始めて、ちょうど一ヶ月が過ぎた。
「今日は順調ね」
ナタリが伸びをして言った。
「ああ、そうだな」
午前中から調子よく、2体、4体、3体、2体、2体と少数の骸骨を見つけテンポよく狩ってこれた。ナタリも調子がいい。
「でもイノシシはでないね」
イノシシか……。
オレはあいつに吹っ飛ばされた後、怒りで絶対狩ってやると思いもしたが……。
よく考えるとオレも一人じゃ狩れないし、やっぱり怖い。
それよりも──
「それよりも、仲間募集に応募がこないのが気になる」
「仲間かー……」
オレのつぶやきにナタリが反応する。
換金所で仲間募集用紙を貼って一週間ほどが経つが、一向に応募がない。新しい武器の方はまさかのあと20万ポウほどで買えるようになったが、こっちは全く進展なしだ。
「募集条件とか良くなかったかな?」
「どうだろ」
オレの問いに首を傾げるナタリ。
うーむ……。
「きっとそのうち何か縁がありますよ。それよりも、あと20体ほどで骸骨500体狩り達成ですよ」
ムーコが言った。
骸骨500体狩り。つまり、退魔師見習いから六級の退魔師となれる。
六級の退魔師となれば、毎月治癒符が10枚もらえる。1枚2000ポウするから2万ポウもお得となるのだ。
治癒符はなんだかんだとちょいちょい消費するから、なれるなら早く六級になりたかった。
「そうだな。あともうちょっとで六級退魔師だ。がんばるか」
「そうだね」
ムーコの言葉にオレとナタリはモチベを上げる。
ふとムーコが上空を見上げた。
「どーしたムーコ」
「煙が……」
ムーコが見ている方を見ると、確かに煙が立ちのぼっているのが見えた。
そんなに遠くはないが、オレたちが住んでいるジド国とは方角が違う。
「あれ、狼煙かも知れません」
狼煙……?
「はい。煙が濃く、炊事などで出る煙とは異なります」
そうなのか……。
オレは狼煙なんて見たことがないからわからない。
「何か来ます。……沢山」
ムーコが何かを察知した。
こいつは耳というか、感覚全体が鋭く、自然の環境下においてそれは更に研ぎ澄まされる。
「骸骨です!! 骸骨の足音!!」
30メートル前の茂みから、骸骨が飛び出してきた。
1、2、3……多い。
20体程だろうか。
以前、50体以上の骸骨から逃げた時と似ている。
どうする!?
オレ達はまだ、強力な武器も仲間も出来ていないままだ。
…………いや、だけど前とは違う!
この一ヶ月、オレは腕を上げた!
部活とは違う、本気の殺し合いをしてきた一ヶ月!!
それに骸骨20体くらいなら──やってやる!
「ムーコ! ナタリを守りながら頼む!」
「はいっ!」
ナタリは、ムーコを付けとけば大丈夫。
そしてムーコも、敵の殲滅の為に突っ込ませるより、守りに活かした方があいつは怪我せず鉄壁をほこる。敵の数が多いときに、オレたちがとるようになった陣形だ。
あとは、オレが──
オレが骸骨を蹴散らせばいい!
迫り来る骸骨たちを前に、オレは退魔刀を構える。
──が。
「…………」
「あれ?」
骸骨達はオレ達を無視して去っていく。
「えっ…………」
「どういうこと?」
「骸骨って、人間をみたら襲いかかってくるんでしょ?」
「ああ…………そう聞いた」
明らかに、奴らの視界にオレたちは入っていた筈だ。
なのに目もくれず……。
「何か聞こえませんか?」
ムーコが、骸骨たちが走ってきた茂みの方を見る。
また、何かを察知したのか?
オレとナタリは耳を澄まし、茂みを注視する。
「…………」
「…………」
「────っ」
どこかで人の叫び声が聞こえた。
そう遠くない。
ムーコが駆けだす!
「ムーコ!?」
「……誰かが襲われていますっ!」
茂みをさけて坂を下って、40メートル程先。
そこに子供がいた。十歳くらいの少年。
その子が、木を背に退魔刀を構えている。
その向かいには──
面山賊。
肌が灰色で、ボロい着物姿のお面野郎。
両手に大きな日本刀を持っている!
ムーコが飛び出す。
面山賊が、少年の退魔刀を弾いた。
そして振り下ろされる刀。
──ギィン!!
間一髪。ムーコの薙刀がそれを防ぐ!!
そして即、
「はぁ!!」
面山賊に斬りかかるムーコ。
──ギィンギィンギィン!!
ハイレベルな斬撃の応酬。
だ、大丈夫なのか!?
オレとナタリは少年の下に駆けつける。
「大丈夫か? 歩けるか?」
「う、うん……」
足は痛めていないようだ。
だが、見た感じあちこち怪我をしている。
とりあえず、目立つ痛々しい怪我に治癒符を貼ってやる。
「やぁ!!」
ムーコの一撃が面山賊をとらえた。
傷口から黒煙を噴き出しながら、崩れ落ちる面山賊。
地に伏し、ピクリとも動かなくなった。
すげぇ……。ムーコが面山賊を倒した。
やっぱりムーコすげぇ。
「よかった」
ナタリがほっと胸をなで下ろす。
「あぁ……」
ムーコが無傷で倒してくれた。
ムーコが勝てなければ、オレ達は全員、殺されていたかもしれない。




