71 大きな獲物
翌日。
オレ達は、少しでも早くムーコに『烈風の薙刀』を持たせようと、真剣に骸骨狩りに勤しんだ。
面山賊とその『頭』が怖いからである。
そんな生活が2週間ほど過ぎた。
「気をつけて下さい。何かいますっ」
骸骨狩りの最中、ムーコが囁くように言った。
彼女が何かを感知したのだ。
な、なんだ!? 面山賊か!?
骸骨なら骸骨だとムーコは言う。『何か』というのはそれ以外の可能性が高い。もし面山賊なら『戦わず即逃げること』と三人で決めてある。
オレとナタリはそれぞれ武器を構えつつ、いつでも逃げられるような姿勢をとる。
直後──少し離れた所の大きな茂みが、激しく揺れた。
──何かいる。でかい。
やはり骸骨ではない。
経験上、骸骨じゃこんなに大きく茂みは揺れない。
茂みの揺れが、近づいてくる。
──来る。
そいつが茂みから出てきた。
──でかい。
高さ1・5M、体長2Mはあろうか……。
巨体の持ち主が『ブルルルル……』と鼻息を鳴らした。
こ、これって……。
「イノシシ、だよな?」
オレはムーコに聞く。
「フブキくん危ない!!」
「えっ」
直後、天地が逆さまになった。
◇
「ひどい目にあった」
オレはあれからイノシシに体当たりをくらい、吹っ飛ばされた。
半分はかろうじて避けたから打撲くらいですんだが、かなり痛かった。
治癒符も一枚消費する。
「くそっ。あのクソイノシシ、今度見つけたらぶっ殺してやる」
「フブキくん……」
ムーコが少し、可哀相な者を見る目で見てくる。
イノシシはオレを吹っ飛ばしたあと、今度はムーコ達に身体の向きを変えたのだが、ムーコが薙刀を構えて威嚇したら逃げていったそうだ。
野生の動物は、自分より強い物に襲いかからない。
つまりイノシシのなかで、
オレ<イノシシ<ムーコ
──という図式が出来たのだろう。
「いや、でもな。アイツ狩れば肉として食えると思うんだよ」
オレはムーコとナタリに主張する。
「肉ですか……そう言えば昔、シシ鍋を食べたことがあります。あれは美味しかったです」
そう言って、ムーコは一人幸せな顔になる。
「でも、あんな大きいの食べれなくない?」
ナタリが首をかしげた。
「いや、食べない分は売ればいい。金になる」
「あ、そっか。いくらくらいになるかな?」
「オレの元の国では、イノシシ一頭15万って聞いたことがある。さっきの奴は普通の奴の倍以上でかかったから、30万くらいはいくんじゃないか? わからんけど」
「30万!? 狩りたい!!」
ナタリが食いついた。
「30万なら、あっという間に薙刀買えますね」
ムーコも食いついた。
「ムーコ姉、さっきのイノシシ倒せる!?」
「そうですね……。体当たりさえ気をつければ倒せると思います」
「よし。今後イノシシを見つけたら狩ろう!!」
ナタリがそう決定した。
「ていうか、フブ兄そうゆう事は早く言ってよ」
「えっ、あ、ごめん。ってゆうか、いきなりでそんな余裕がなかった」
「頼むよフブ兄ー。チャンスは逃しちゃダメなんだからね」
口を尖らせて言うナタリ。
「……はい」
こいつ……。自分じゃ狩れないくせに。
オレも口を尖らすことにした。




