68 貯金&節約生活
翌日から、薙刀を買うための『貯金&節約生活』が始まった。
昨夜、あれからテントでミーティングし、やはりあの薙刀を買おうということになった。
何ヶ月かかるかわからないが、ムーコがあの薙刀をいたく気に入ったことと、オレ的にも中途半端にオレやナタリの装備を強化するよりも、いざという時の為にチーム一の実力者であるムーコの戦闘力を、アップさせた方が良いと考えた為だ。
あの薙刀の付加効果はすごい。
ムーコがあれを使えば、こないだの50体の骸骨相手だろうと蹴散らしてくれるだろう。そう思える程の威力だった。
名付けて『ムーコ一騎当千作戦』。
ただ……ホント、何ヶ月かかるのかが問題である……。
◇
「今日はお風呂入る?」
夕方、骸骨狩りを終えてナタリが言った。
「昨日入りましたし、今日は手ぬぐいの水洗いで済ませましょう」
ムーコがそう答える。
手ぬぐいの水洗い──井戸水を使って、体を拭くだけで済ますことである。
昨日武器屋の後に、商店街で『手拭い×3(2700ポウ)』と『風呂桶×1(800ポウ)』を買ったのだ。長期的にみて、銭湯代を節約するためである。
本当は替えの下着や肌着なども買いたかったが、パンツ一枚8000ポウ、肌着一着1万5000ポウもしてとても買えなかった。オレの元いた世界と違って、機械で大量生産とかがないからだろうか。
これまで下着は水洗いで夜のうちに干して、服は重ね着を分けて使い回している。なかなか面倒ではあるが、仕方ない。
食費や治癒符代のことを考えると、余裕はないのだ。
「ま、明日もうまく稼げたら入ろうぜ。薙刀買うために、貯金していきたいしな……」
「そっか……そうだね」
ちなみに今日の成績は──
ムーコが8体、オレが11体、ナタリが8体の、合計27体。
換金金額は5800ポウ。
現在の所持金は、合計2万550ポウとなる。
◇
2日後。
「今日はお風呂いいよね」
「うーん。あまり汗もかきませんでしたし、今日もやめときましょう」
「えー。もう3日も入ってないよムーコ姉」
「ですが、今日も節約すると、お風呂代一人160ポウですから、3人で480ポウも貯金できるんですよ」
「たった500ぽっちじゃん」
「ちりも積もれば山となるですよ」
口をとがらすナタリに、ムーコが微笑んでそう言った。
「うー……」
うなだれるナタリ。
ムーコの発言力は強い。
この貯金&節約生活は、ムーコの薙刀を買うためではあるが、そもそもその薙刀でムーコにいざという時に守ってもらう為なのだ。
自然、彼女の言葉は重くなった。
「うーじゃあ、あたし、夕食少な目にするからお風呂入っていい?」
ナタリは口をとがらして言う。
「そこまでお風呂に入りたいのですか……」
ムーコが驚く。
そこまで驚くことじゃないと思うが……。
「まぁ、ナタリ入りたいなら入ってこいよ。オレがそのぶん節約するし」
「いいの!?」
「ああ」
まだ温かいから、オレは井戸の水で洗えばなんとかなる。
「ありがとうフブ兄!」
そして湯屋へ駆けていくナタリ。
「フブキくん、甘やかしすぎでは?」
「毎日楽しくいくのも大切だろ?」
「しかし、お風呂くらいそんなに入らなくても……」
ポリポリと頭をかくムーコ。
「いや、お前こそ頭洗え。前から思ってたけどちょっと臭いぞ」
「えっ! 臭い!? 臭いですか私!?」
「ああ……ちょっとな。3日前に風呂に入ったときも、おまえ頭洗ってねーだろ」
女の子だから言うのを遠慮していたが、こいつは言わなきゃ駄目なやつだと、ここ数日の暮らしで気づいた。布団一緒なんだから、ちょっと困るのだ。
ガーンとうなだれるムーコ。
「く、臭い私はいやですかっ?」
「…………」
なんと答えれば、いいんだろう…………。
「わ、私もお風呂、行ってきていいですか!?」
「いっといで」
◇
夜。
3人でミーティングをし、お風呂は3日に一回となった。
「おやすみなさいです」
「おやすみー」
「おやおやー」
照明とかないので、暗くなるとすぐ眠りにつく。たぶん夜の8~9時頃だろうか。
ちなみに夜寝るとき、オレはテント用の大きな布団の真ん中で寝ている。
ムーコとナタリの間である。
なんかテント生活初日に、二人が骸骨の瘴気でダウンして温める為に真ん中で寝てから、そこが定位置となった。
けっして両手に花とかしたいわけじゃない。
一度端っこで寝ようとしたら、
──「フブ兄は真ん中」
──「フブキくんは真ん中です」
と、なぜかそう決められてしまったのだ。
個人的にオレは、端っこでのびのび寝返りをうって眠りたいのだが、女二人が決めたことに逆らえるほどの発言力はなかった。
今日もおとなしく真ん中で眠る。
夜中、うとうとしてると、隣から小さな声が聞こえた。
「うー。お金欲しいよぅ。お風呂入りたいよぅ……」
ナタリの……寝言だろうか。
頭を抱えて呟いていたのが印象的だった。
◇
翌日、ちょっとした奇跡が起きた。
「ちょ、ちょっとフブ兄、ムーコ姉、これ!!」
ナタリが、倒した骸骨の鎧裏を確認してると、特大の小判を見つけた。
いや、特大だから大判か。
一万ポウ金貨の20倍くらいでかい。
これ……見たことないけど、何ポウの価値があるんだろう。
さっそく換金所に持って行って聞くと、『20万ポウ通貨』と言われた。
すごくね!?
「やったねムーコ姉! これで薙刀まであと50万ポウよっ」
「はい、ナタリちゃん」
きゃっきゃと喜ぶ女子2人。
「ねぇ、お風呂2日に一度入ってもいいよね。いっぱいお金入ったし」
「うーん、そうですね。じゃあそうしましょうか」
お風呂が、2日に一度のルールになった。
◇
さらに翌日。
「またあったぁ!!」
ナタリがまた大判金貨を見つけた。
今度は兜の内側にあったらしい。
換金所に持って行くと、また20万ポウと言われた。
……すごい。
「あと30万ポウだねムーコ姉」
「はい、ナタリちゃん」
また喜ぶ女子2人。
「ねぇ、お風呂毎日でもいーかな、ムーコ姉」
「うーん、そうですね。ナタリちゃんお風呂好きみたいですし……」
「またきっと見つけるから。お願いムーコ姉」
「そうですね。フブキくんも綺麗好きみたいですし、そうしますか」
お風呂は毎日でもOKとなった。
ナタリの発言力が一番強くなった瞬間である。
というか、ナタリ。なんかもってんなコイツ……。
守護霊というか、福の神的なのが……。




