62 乱戦
「ナタリっ! オレが切り開くからなんとか逃げてくれっ!」
「えっ! む、無理だよこんなにも! あたしも戦うっ」
オレの指示にすぐナタリが反対する。
たしかに無理かも知れない。いや、無理っぽい。
「──っ。すぐにムーコが来る。無理すんなよっ!」
「うんっ!」
向かってくる骸骨。
オレは数の多めな右側。
ナタリは左側で応戦する。
応戦してすぐに、判断ミスに気づく。
ムーコが来てくれるって頼ってるけど、殿のムーコが来る頃にはその後ろから来ている骸骨達も来るんじゃないのか!?
「~~~~~~~~~~~~~っ」
考えている暇もないっ!
目の前で振り下ろされる刀を受け止め弾き──ボディ!
一体壊す。
すぐ二体目。
これまた振り下ろしてくる刀を受け止め弾き──ボディ!
単調な攻撃。ワンパターンで倒せるザコ骸骨だ。
もちろん頭もしっかり壊す。
トドメを刺さないと、20秒程で復元してしまうのだ。
一体ずつ確実に壊していかないと、キリがない。
「ふ……フブ兄……っ!」
三体倒したところで、ナタリがオレを呼んだ。
見ると5、6体の骸骨の向こうで、ナタリが奴らに囲まれている!
大木を背に、金剛杖を振り回している!
「ナタリ……っ!」
オレはナタリとの間に立ちふさがる骸骨に斬りかかる。
くそっ! しっかりガードされる!
「ナタリちゃんっ!」
ムーコの声!
ムーコもナタリの救援に向かう!
だがオレ達とムーコの間には、いつの間にか骸骨の群。
──20体はいるだろうか。
ムーコがそいつらを蹴散らしながら、ナタリに近づいていく!
ムーコはオレが1体倒すあいだに3体は倒すから、おそらくもう10体以上は倒しているだろう。どんどん蹴散らしていく!
だが、背後からも攻められ──包囲され、なかなか突破できないでいる!
「……痛ッ!」
後ろからの奴に背中を少し斬られたっ! 痛ぇ!
なるべく囲まれないように気をつけてるが……数が多いっ。
オレも突破……できないっ。
くそっ! これじゃあの時と同じじゃないか!
このままじゃナタリが……っ!!
「くっ……やぁ!」
金剛杖が骸骨を砕くのが見えた。
ナタリが頑張ってる!
あの時と違う!
そうだっ!
あの時と違って、オレたちはムーコに武芸を教わった!
何日も実践を積んだんだ!
オレだって──
「あの時とは違うっ!」
続けざまに骸骨を2体倒す!
ちょっと攻撃重視で無茶したから、肩先に刀がかすった。痛い──
けど、これくらいなら問題ないっ。
それよりも……早くナタリのところへ……っ!
「あっ……!」
ムーコが斬られた!?
彼女がもう少しでナタリにたどり着く──というところで、変な骸骨に腕を斬られたように見えた。
「だいじょうぶか!? ムーコ!」
ぱっと見だが、二刀流で全身フル装備の骸骨! しかも動きが異常に疾い! ムーコが防御に回ってる!?
骸骨の中には、ごく稀にああいう厄介なのがいる。
オレにはまだ倒せないレベルの骸骨。
ムーコでも、倒すのに少し手間取る相手だ。
しかもよく見りゃ『槍持ち』の奴が2体も、『二刀流』の奴と一緒にムーコを責め立てている。
……だいじょうぶなのか!?
ムーコからの返事がない。律儀なムーコが返事もしないなんて──余裕がないのだ!
広い場所ならともかく、今はたくさんの骸骨に囲まれている状況。
ムーコでもやばいんじゃ!?
助けに、いくべきかも知れない……っ!
でもナタリも──、
「う、うわ……っ!」
ナタリが骸骨につかまった!
ナタリっ!
「くっ! ……おらッ!」
オレは目前の骸骨の、刀を持っている方の腕をぶった斬る!
そして、その骸骨につかみかかり、
「おお、おおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
盾代わりにして、他の骸骨達を押しのけてぶち進む!
「──オラァ!」
最後に盾にした骸骨を、ぶった斬って蹴倒す。
「ナタリっ!」
ナタリの下にたどり着けた!
──が、骸骨がナタリの肩に噛みついている!
こいつっ!
「なにしやがんだ、ボケェ!!」
その骸骨の顔面をぶん殴って、ナタリから離れたところを押し倒す!
刀の柄底で頭を砕き、その後ボディも破壊。
「ナタリ交換!」
肩を押さえてるナタリに、退魔刀を渡し金剛杖を受け取る。
そして、ナタリまわりにいた骸骨共の足を、全力でなぎ払う!
「おら……っ!」
倒すことは出来なくとも、誰もナタリに近づけさせない!
──ぐしゃあん! バキドカメキッ!
ムーコが来た!
よかった! 無事だったようだ!
「はぁっ! やぁっ!」
一振りで2体! 場合によっては3体同時に薙払うムーコ!
オレとナタリ周りの骸骨を粉々にしていく!
「はぁぁぁああああああああああああああ……っ!!」
ムーコが5体まとめてボディをへし折った! すげぇ!
「行きましょうっ!」
すぐムーコが村の方角を示す。
「ああっ!」
反対方向からは骸骨の大群が追ってきている! 一面骸骨だらけだ!
もう50体どころじゃないだろこれ!
「走れるかナタリっ!?」
「だ、だいじょうぶっ!」
ナタリは肩を押さえつつも走れそうだ!
先に行かせてオレが最後尾で逃げる。
先頭はムーコ。多少、骸骨がいても蹴散らしてくれる!
よしっ……。これなら逃げきれるっ!
それから程なくして、オレ達は『見習いの森』を抜け、骸骨達から逃れることが出来た。
◇
村の入り口前。
オレ達は息を切らして立ち止まる。
「ナタリ……大丈夫か?」
「う、うん…………だいじょうぶ」
「いや、でもお前……」
肩がっ……。
「これくらい平気よ。治癒符あるし……」
「すぐ貼る」
オレはポケットに入れてあった治癒符を、すぐにナタリの肩に貼る。
しゅうう、と治癒符から煙が出る。
少し痛むようだが、これですぐに傷は塞がる。
「ムーコも斬られてなかったか? だいじょうぶか?」
ムーコを確認する。
「少し斬られましたが、大丈夫です」
見るとやはり腕を少し斬られているようだ。血がちょっと出てる。
オレの傷と同じくらいか……。他に傷は見当たらない。
すごいな……。あれだけの骸骨の群の中で戦って、これだけの怪我で済んだのか……。
「他にはないよな?」
そう確認して、ムーコの腕に治癒符を貼ろうとすると、
「わ、私はいいです。フブキくんが使ってくださいっ」
「いいから」
「いえ、大丈夫ですからフブキくんが、」
「いいから」
オレはムーコの手をとって、さっと治癒符を貼る。
女、怪我させたままにしとくなんて、あり得ねぇ。
よし。これで大丈夫なはずだ。
「フブキくん……」
「門番さんに事情説明して、換金所で少し休もう……。ナタリ、動けるか?」
「うんっ。もうだいじょうぶ」
オレたちは門番さんに事情を説明し、換金所へと向かった。




