61 日暮れの戦い
ムーコに武芸を教わりはじめてから、8日目。
「ナタリそっち一体行った! やれるか!?」
「うんっ!」
ナタリは金属製の棒、金剛杖と言われる八角の杖を引き──遠心力に乗せて思いっきり振る!
──バキン! ぐしゃめき!
骸骨を粉砕し、頭蓋骨も叩き割るナタリ。
「ナタリ、上手になったな」
「えっ……そ、そう?」
「うん。正直驚いた」
「えへへ」
と、照れるナタリ。
もともと動ける奴なんだろう。最初の方こそなかなか戦えなかったが、一度倒すとあっという間に動けるようになった。
そして──
さらに驚くべきはムーコ。武芸をやり始めて、彼女のすごさが解る。
いや実際には、オレにはムーコのすごさのほんの一端しか解っていないのだろう。解っている事と言えば、骸骨ごときはムーコの敵ではないという事。少なくとも彼女が退魔刀を持って骸骨との前に立つのを見ても、何も心配に思わなくなった。
一度、骸骨7体と突然遭遇してしまった時、オレが一体倒す間にムーコが6体を瞬殺してしまったのを見て、圧倒的な力の差を知ったものだ。
ちなみにナタリは逃げまどっていた。
「今日は結構倒せたんじゃね?」
「うんっ。かなりやっつけたよ!」
「数えてはいませんが、30体程でしょうか」
まじか。一日で30体オーバー。
規定変更前の、退魔師条件を達成ではないか! 規定変更前の……だけど。
ざっと計算して一体200ポウ×30で、6000ポウ。
しかも、運良く『ポウ持ち骸骨』も2体いて、鎧から1000ポウと、2000ポウを手に入れている。
もうちょっと頑張れば、一日で1万ポウオーバーの稼ぎとなるが……。
「今日はもうやめとこか」
少し日が暮れはじめてる。夜遅くまで骸骨狩りをするのは危険だ。
こっちは暗闇で視界が悪くなるが、骸骨は全然視えるらしい。
熊狩りに、わざわざ夜に山に入る奴がいないのと同じだ。
「そうだね……あんまり暗くなると町にも変な奴出てくるし」
「では、帰りましょうか」
二人が同意したので、オレたちは今日の骸骨狩りをやめることにし、来た道を引き返す。
一日動いて適度な疲労感。
適度、と言えるのがこの生活に慣れてきた証だろうか。オレもおおよその骸骨は狩れるようになってきたしな……。
もうしばらくで見習いの森の入り口付近へ降りられる、というところで骸骨の団体と正面から遭遇した。
オレ達を認識するなり、ガチャガチャと這い上がってくる骸骨達!
その数、20は超えるだろうか。
「えっ、な、なんでこんな所にこんなにも!?」
「マジかよ!」
「私が蹴散らしますっ! フブキくん、ナタリちゃん、無理しない範囲でっ」
ムーコが薙刀を手に、坂を駆け降りる。
そして先手必勝とばかりに、先頭の骸骨からなぎ倒す!
「わかった!」
「う、うん!」
オレとナタリも、なるべく1対1で戦えるように、それぞれ左右の端っこにいる骸骨に斬りかかる!
そして最初の一体を倒して、すぐ現状のマズさに気づく。
見渡す限りの骸骨。
軽く50体以上。
茂みからどんどん出てくる。
な、なんだこれは……っ! ありえねぇ!!
だが躊躇っている余裕はない。すぐ2体目骸骨が斬りかかってくる。
受け止め弾き──仰け反ったところをぶった斬る!
「ムーコ!! 無理だっ! 逃げよう!!」
オレは前方のムーコに叫ぶ。
「……! わかりましたっ!」
3体目。槍持ち骸骨!
そいつが槍で突いてくる!
「くっ……」
オレは槍持ちが苦手だった。動きも防御重視か、なかなか間合いに入らしてくれない。
だが──ムーコに攻略法は教わった。
感覚を研ぎ澄ます。
突いてくる切っ先を──刀で逸らすっ!
一気に間合いに入る!
そして骸骨の顎を蹴り上げっ!
仰け反ったところをボディ!
──よし!
「いくぞナタリっ!」
「う、うん!」
「ムーコ! 左から迂回して村へ逃げ込む!」
「わかりました! 先に行ってください! 殿を務めます!」
「わかった!」
ムーコが後方を担ってくれるというので、追っ手は大丈夫だろう。
とにかくオレは左側の、骸骨のいない方へいない方へとナタリとともに逃げる!
「うわっ!」
前方、茂みからいきなり骸骨が現れた!
斬りかかってくるのにとにかく合わせるっ!
──ギィン!
「任せてっ! ──やあッ!」
ナタリがすかさず金剛杖を真上からぶちかます!
粉々になる骸骨。
「ナイスだナタリっ」
「うん!」
振り返るとムーコの背が見える。
骸骨達を足止めしつつ、こちらへ来てるようだ。
あいだにはほとんど骸骨はいない。よし!
オレとナタリはすぐにまた駆ける。
茂みが多いが、なるべく近寄らないようにして走る!
もう少しで森の入り口付近──という所で立ち止まる。
目の前の少し開けた場所。
そこに骸骨が十数体!
これ以上、左側へはいけない。確か5~6メートルはある崖にぶち当たる。かと言って右は深く生い茂った藪だ。到底踏み込めない。
この骸骨達は──突破するしかないっ!




