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56 退魔師会



 ──「じゃあ、俺達じゃ宿舎しゅくしゃは借りれないってことですか!?」

 ──「借りれると聞いて来たのにっ……!」

 ──「ごめんなさいね。状況が変わってしまったのよ」


 南区の換金所で、知らない退魔師さん(3人組)が換金所のおねーさんと話をしていた。いや、話していたというより退魔師さん達が問いつめており、おねーさんがなだめているって感じだ。


 ちなみに換金所のおねーさんの名前は『モニカ』。

 発熱うどんを買うためのお金をくれた恩人なので、その後お礼を言って、名前を教えてもらった。もちろん恩はいずれ何倍にもして返すつもりだ。


 オレが換金所内に入ると、退魔師さん達は話が終わったらしく、オレと入れ違いに出て行った。


「……どうかしたんですか?」


 オレはモニカさんに尋ねる。


「宿舎の利用条件が変わってしまったのよ」

「利用条件? 一日で骸骨がいこつ30体を狩れば使えるってやつですか?」


 ムーコの話では、確かそれが『退魔師になれる条件』でもあったはずだ。


「そうよ。彼らは骸骨がいこつ30体を狩れるようになって宿舎の入居申請をしに来たのだけど、こないだの骸骨がいこつの大襲撃以降、退魔師を始める人が増えてね、あっと言う間に宿舎は満室。だから今朝、利用条件が変わってしまったの」


 そうなんだ……。

 やっぱり、家や仕事を失った人とかが始めるんだろうか。


「……どんな利用条件になったんですか?」

「『めん山賊さんぞく』を倒せることよ」

「えっ!」


 めん山賊さんぞく……! あの神社で見た奴。


骸骨がいこつの襲撃中に、めん山賊さんぞくも何十体と確認されたの」

「何十体も!?」

「ええ、そしてその何倍もの人が殺されたわ……」


 マジか……。

 だとすると骸骨がいこつとしか遭遇しなかったオレたちは、運が良かったのかも知れない。


「宿舎の貸し出しも、慈善活動じゃないからね。なるべく国を守ってくれる強い退魔師さんを優遇することになるのよ」


 困り顔で言うモニカさん。


「そうなんですか……」

「あ、キミにも渡しておくわね、新しい『退魔師の各級かくきゅう認定条件と得られる特典&支給品表』よ」


 そう言って、モニカさんがカウンターに用紙を一枚出した。

 各級認定条件……?


「あ、ごめん。キミにはまだ『退魔師会たいましかい』について説明してなかったね」


 退魔師会……。


「あ、いえ、それは僕が初日急いでたからで……」

「今、簡単に説明する?」

「あ、はい。お願いします」


 ナタリは元気になり、ムーコも少しずつ回復に向かってきている。今後のことも考えて聞いておいた方がいいだろう。


「じゃあ、これもだね」


 モニカさんがもう一枚、カウンターに用紙を出す。

 それには『退魔師会について』と書かれていた。

 ざっと目を通す。


 ……要するに、退魔師たいまし黄泉よみがえりを狩って国から報酬ほうしゅうを受け取る仕事であり、その退魔師の活動を支援をしている組織が『退魔師会』なのだそうだ。この『換金所』も退魔師会が運営しており、支部にあたるのだとか。


 そして退魔師会が退魔師として認めた人には『退魔師証』を発行しており、それを持っていると様々な『支援』を受けることが出来るらしい。


 また支援の中には国からの『特典』もあり、退魔師・・・()階級・・によって与えられる内容が異なるそうだ。

 それは、モニカさんが最初に出してくれた『退魔師の各級認定条件と得られる特典&支給品表』というので、おおよそ理解できた。



ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー

 

■退魔師の各級認定条件と、得られる特典&支給品表(改訂版)


 ●正会員

  【一級退魔師】──(級判定員の承認が条件)──特典非公開

  【二級退魔師】──(級判定員の承認が条件)──特典非公開

  【三級退魔師】──(級判定員の承認が条件)──特典非公開

  【四級退魔師】──(級判定員の承認が条件)──『宝具3割引き』

  【五級退魔師】──(面山賊の討伐)──『宿舎利用権』

  【六級退魔師】──(一月ひとつきで骸骨500体討伐)──『治癒符配布(月10枚)』


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ●非会員

  【退魔師見習い】──(仮登録が必要)──『退魔刀などの武器』、『瘴気除け』、『ホテイ袋』など、足りないものを支給


ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー


 なるほど。

 退魔師はきゅう制度で、ランク分けされているのか……。


 オレは『退魔師見習い』の仮登録をしたから、持ってなかった瘴気除けやホテイ袋を貰えたようだ。

 だが、退魔師になるための……つまり一番下の『六級退魔師の認定条件』が『一ヶ月で骸骨500体討伐』となっている。


「退魔師の条件も変わってしまったんですね」

「ええ、『一日で骸骨30体』だと、それ以上あんまり働いてくれない人もいてね。こんな情勢だから、たくさん討伐してくれる人じゃないとってことでそうなったのよ」

「なるほど……」

「でもその分退魔師となれば、より多くの治癒符ちゆふを受け取れるようになったわ。以前は月3枚だったから」


 そうなのか……。

 治癒符。ナタリの怪我に医者が貼ってくれた治療用宝具ちりょうようほうぐだ。オレも、モニカさんが足に貼ってくれたのをまだ付けている。

 これ……実際どのくらい効果があるのか、後でナタリにも聞いてみよう。


「あ……既に骸骨がいこつ30体を狩って宿舎を借りてる人は、どうなるんですか?」


 興味があったので聞いてみた。


「しばらくは借りたままでいられるけど……めん山賊さんぞく討伐とうばつをして『五級退魔師』になった人達が宿舎申請をするごとに、順次入れ替わりで出て行ってもらうことになるわね。階級も、改訂された六級退魔師の認定条件をクリア出来なければ、翌月から『見習い』扱いになるわ」

「そうですか」


 シビアだな……。でもまぁ、そうだよな。必要な人が優遇される。当たり前なことだ。

 そしてここは生きていくのも大変な世界。なおさらだろう。


「キミも『退魔師宿舎』を考えてた?」


 モニカさんが少し心配そうに聞いてきた。


「あ、いえ……それは大丈夫です。一応テントがありますので」

「そう? それならよかった」


 そうだ……今は『結界テント』がある。

 結果的にではあるが、テントを買っておいて良かった。

 骸骨がいこつ30体ならともかく、めん山賊さんぞく討伐とうばつが条件じゃ、とても『退魔師宿舎』を借りられそうにない。


 毛布も追加で購入して保温性も問題ないし、治安面もテント街には正義感の強い退魔師さんが多いらしく、まぁ大丈夫だろう。

 昼はどうせ狩りに出てるし、夜に休むだけのテントだ。


 男女同室なのがちょっと問題だが、それはオレが配慮すれば済む話。

 それよりも、骸骨がいこつの大襲撃でめん山賊さんぞくがたくさん確認されてるって方が問題だ。あんなのに遭遇したら、たぶんオレは殺される。


「でもま、キミも気をつけてね。『見習みならいのもり』は骸骨がいこつしか出ないって言われてるけど、今後どうなるかわからないからね」


 マジか……。最悪、めん山賊さんぞくと遭遇する可能性も考えられるのか……。



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