51 死線
それに……こいつの槍。
他の骸骨の刀と違って、ボロくない。
綺麗な槍だ。
倒せば……金になるかも知れない。
だがこいつ、オレなんかより明らかに強い。
槍の扱い方が武芸経験者のそれだ。
それをどうやって倒す!?
『槍持ち骸骨』が独特の構えをとり、じりじりと寄ってくる。
怖い──。
オレは少し下がる。明らかに圧されている。
考えろ。
どうやって倒す?
「……!」
そうだ。別にこれは試合とかじゃない。
武芸経験者だからって馬鹿正直に戦うことはない。ようは倒せばいいのだ。
それには……ここじゃ駄目だ。
もう少し広い場所。
ぱっと身を翻して走る!
案の定、骸骨は追いかけてくる!
だが、奴はそんなに速くない! 素早さこそあるが、しょせんは骸骨。身軽だが加速する力がないのだ!
これまで進んできた道。茂みを縫うように走る。
骸骨は追ってきてる。
もう少し!
もう少しだ!
開けた場所に出た。
ここだ! 手頃な太さの木もある!
オレは一転、身体の向きを変えて立ち止まる。
骸骨も止まった。
オレは退魔刀を左手に持ち替え、右手でロープをぐるぐると回す。
骸骨集団をやり過ごした後、罠が間に合わないときもあると気づいて、ロープの先に『拳大の石(長め)』を巻き付けておいたのだ。
遠心力でぐるぐる回る。
チャンスは一度。
左肩は軽く刀を振るくらいなら出来る。やれる。先手必勝。
「おおおおおっ……!」
オレは骸骨に、真っ向から突っ込む!
奴がオレを間合いに入れさせないよう、槍で突いてくる!
それをかいくぐって、奴に退魔刀で攻撃することはできない。
だが──それで構わない!
ギィン。──と退魔刀で奴の槍を上にかちあげる!
ここだ! ここに石付きロープを、奴の足首めがけて振る!
ビンゴ!
ばっちし骸骨の足に石付きロープが巻き付き──絡まる。
そこをすかさず引き寄せる!
思いっきり!!
骸骨はすっころんだ! よし!
あとは、奴の槍を持ってる腕をぶった斬って、ロープでぐるぐるぶん回して木に叩きつけてやる!
槍さえ手放させれば……っ! ──もらった!
──ガッ! スパッ……!
「なっ……!?」
オレの退魔刀による攻撃は骸骨の槍に受け止められ、
「痛っ……」
逆に足首を切られた。
奴の足に巻き付けたロープも、即、斬られる。
こいつ……一瞬で槍を短く持ち替えやがった。
やばい。
やばいかも知れない……。
右足首から血が流れる。痛い。
いざとなったら走って逃げられる、という選択肢を奪われた。
もう逃げられないっ。
奴が突いてくる!
「くっ」
──ギィン!
奴の攻撃を弾く。
ギィン!
ギィン!
ギィィン!
なんとか刀で弾くが……やばいっ。
槍を弾くのが、難しい!
しかも足が痛くて、満足に下がることも出来ないっ。
お、圧される……っ。
どうすれば……!
ギィン!!
ひときわ強い力で、刀を弾き飛ばされる。
しまった!
そして──突かれる……っ!
「ぐっ!」
咄嗟に片足で後ろに跳ぶ。
バキキキキキ……ッ!
茂みに倒れ──埋もれる。
痛てててて。
枝であちこちを切った。
目の前に骸骨。
奴が槍をまっすぐ構える。
あっ……。
やばい。
──『十人に一人は、亡くなるからね』
換金所のおねーさんの言葉が、脳裏をよぎる。
嘘…………死ぬ?
茂みに埋もれて、身動きができない。
槍を防ぐ、刀もない。
完全無防備。
コンマ数秒先に待っているのは──
死?
だ、だめだ……っ!
ここでオレが死んだら、誰が2人を助ける!
テントで震えながら、あいつら待ってる!
今──オレは死ぬわけにはいかない!!
──『ギシュアアアアア!』
骸骨が奇声をあげ、突いてくる。
死。
「ぬ、わけにいくかーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
オレは咄嗟に袋を広げる!
ホテイ袋だ。
奴の槍がオレの胸元に刺さる直前、それで受け止める!
ホテイ袋へ吸い込まれるように入る奴の槍!
今だ!
槍が根元まで入ったとき、オレは奴の腕をつかんで起き上がり──そのまま背負い投げをする!
オレと入れ替わるように、茂みに背中から埋もれる骸骨。
すぐさま、オレはホテイ袋から奴の槍を取り出し、「おらぁ……!」と容赦なく殴る!
頭蓋骨を壊した後、退魔刀を拾い、それでボディにも一撃!
いや、二撃! 三撃! 四撃!
……それで、骸骨は動かなくなった。




