49 選択
南区の換金所についた。
「早いわね。早速狩ってこれたの?」
「はい。一本だけですがお願いできますか?」
「もちろんよ」
おねーさんは、すぐに査定してくれた。
「はい。200ポウね」
「ありがとうございます」
200ポウ。
安いけど、事前に聞いていたので落ち込まない。
予定通りだ。
「あの、次もたぶん『呪物』はちょっとだけかもですけどいいですか?」
「もちろんよ。遠慮しないで持っておいで」
「ありがとうございます」
お姉さんに頭を下げて、すぐ換金所を後にする。
ムーコとナタリが帰りを待っている。だけど、まだ200ポウ。
目標は、出来れば『発熱うどん2杯分』の、1400ポウ。急がなくては。
オレはすぐに、換金所の近くにあった『雑貨店』に入る。
開店しているのは、換金所に来たときに確認していた。買う物も決まっている。
ムーコが倒れた以上、骸骨狩りを1人でやることになると思っていたのだ。
店内を見回して、都合の良さそうなものを見つけ、購入する。
ロープ。
高くてしっかりしたものは買えないが、180ポウで6m程の細い『紐ロープ』が買えた。
すぐさま店を出て、また『見習いの森』へ走る。所持金は残り20ポウ。
◇
さっき骸骨を狩ったところへ戻ってきたら、近くに新たな骸骨が2体うろついていた。
両方とも手ぶらで『刀持ち』ではない。ツいてる。
オレはすぐに、少し離れた木々の間の、低い位置にロープを縛る。
骸骨を転ばせる為だ。
草が生い茂っていて、まず走っていたら気づかないだろう。
しかもロープの色は、枯れた草と同じ色だ。いける。
そしてオレは再度、骸骨の側までゆっくり接近する。
気づかれてない。なら先手必勝だ。
不意打ちで『拳大の石』を投げつける。
命中。
頭蓋骨が派手に割れて一体倒れる。
すぐにもう一体がオレに襲いかかってくる。
即ひるがえって、さっきのロープのところへ。
そしてロープを飛び越え、そのまま適度に距離をとる。
──ずしゃあ。
骸骨がロープで転んだ。
オレはすぐに反転して、退魔刀で殴りかかる。
頭蓋骨を割って、腰椎を折って、脚も折る。
そして、最初の一体のところへ戻る。
「──!」
頭蓋骨が直りかけている!
割れた部分が振動しながら、本来の位置へ戻っていく。
そして、骸骨が立ち上がろうとする。
早いっ。
テント売りから『退魔刀での攻撃が、黄泉返りの復元能力を遅らせる』と聞いていたが、ただの石だとこんなにも早く復元するのか……っ!
オレはすぐに、それを叩いて阻止する。
そして腰椎を折って、脚も折る。
念のためすぐロープで倒した骸骨のところへ戻る。
確認すると、問題なく倒せている。
しばし待つと煙が出て、骸骨が消えた。
最初と同じく『ボロボロの鎧』と『黒い骨』。
またひるがえって石で倒した方を見に行くと、ちょうど骸骨が消えたところだった。
同じく『ボロボロの鎧』と『黒い骨』。
「……うまくいった」
一応、計画通りだった。
上手く行き過ぎて、ちょっと拍子抜けなくらい。
だがまぁ、こんなもんなのかも知れないな。骸骨、あんまり賢い感じしないし……。
とにかく『黒い骨』が二本手に入った。
すぐに『ロープ』と『拳大の石』を回収して、また骸骨を探す。
それから30分ほど。
なかなか見つからなかったが、ようやく次の骸骨を見つけた。
だが……。
1、2、3……4、5、6、7……
骸骨は7体からなる集団だった。
それもデカい『刀持ち』が4体もいて、そいつらはみんな鎧、拗ね当て、籠手としっかり防具に身を固めている。さらにうち一体は、兜まで……。
……どうする?
茂みに隠れながら考える。
運良く、オレがまた先に奴らを見つけられた。
奴らの進行方向から、おそらくオレの3~4メートル前を横切っていくだろう。
そうなれば、不意打ちが出来る。
うまいことやればトドメは刺せなくても、退魔刀で2体分の行動は止められる。
そしてすぐに距離をとって『拳大の石』で、残り5体を攻撃。
石は途中、手頃なのをさらに3つ拾っておいた。
合計4つあるから、最低でも1体の頭蓋骨は割る自信はある。それでさらに1体。
不意打ちするのなら、今回ロープの罠設置は間に合わない。
つまり残り4体……石がもっとうまく行けば残り3体だが、それだけは自力で戦わなければいけない……。
あ……『刀持ち』はどうなる?
最初の退魔刀での不意打ちで『刀持ち』を狙うが、『都合良く2体とも刀持ち』は無理かもだな……。『刀持ち』は1体だ。
次に『拳大の石』で、さらに『刀持ち』をもう1体。
つまり最後に残る3~4体のうち、少なくとも2体は『刀持ち』になるだろう……。
2体……。
手ぶら骸骨が2体と、『刀持ち』が2体。
……やれるか?
距離をとりながら一体ずつ戦えば、やれるんじゃないか?
……いや、これらの計算はおおざっぱな予測だ。
実際、骸骨がどう動くかはわからない。
中央区に逃げるときも、兜をかぶった骸骨は他の骸骨に指示して、『武器持ち』だけを前に出してきた。
アイツを……ただ単純に襲ってくる雑魚骸骨と同じように考えたら危ない。
…………でも。
もしここでこいつらを倒せれば、7体×200ポウで最低1400ポウは手に入るだろう。
そして、ロープを買ったおつりの20ポウと、さっき狩った2体分の骸骨でおそらく合計1800ポウ。……少なくとも1700ポウ。
『発熱うどん』が一杯700ポウで、2人分で1400ポウだから、確実に二人に温かい食べ物を買っていくことが出来る。
……どうする。
骸骨達はもう近くまで来ている。
決めるなら今だ。
今、決めろ。
…………。
──っ。駄目だ。
リスクが高すぎる!
時間がかかれば、不意打ちした骸骨も『復元』してしまうのだ。
しかも、石で頭を破壊した程度じゃ、20秒ほどで立ち上がってしまう。
速攻で倒しきる自信がない以上、相当な危険がつきまとう……っ!
ムーコやナタリが心配だが、ここでオレが大きな怪我でもしたら、食べ物を買って行くことも出来なくなる……。それは駄目だ。
テントを出てから、おそらく2時間。
そろそろやばいのは解ってるが……ここは引くべきだ!
オレはじっと茂みに留まる。
骸骨達はぎしぎしと身体を軋ませながら、隠れているオレの前を通り、去っていった。




