48 見習いの森
国の出入り口で門番に『退魔師見習い証』を見せてから、城門を出る。
別に南区は、中央区と違って壁で囲われてないからどこからでも国の外に出られるのだが、『退魔師見習い証』を提示して帰る時間を伝えておけば、それよりも半日経っても戻ってこない場合、熟練の退魔師などに捜索してもらえるそうだ。
まあ登山の時に、入山名簿記録をつけるのと同じ様なものだろう。遭難や怪我などで自力で帰れなくなった場合、捜索してもらえるようになるやつだ。
とりあえず今は五時半頃なので、『午前9時』としておいた。
換金所のおねーさんの言うとおり、出口からまっすぐ──おそよ1キロほど先に森が見える。
あれが弱い骸骨しか出ないという『見習いの森』だろう。
オレはさっそく走って向かうことにした。
◇
『見習いの森』へ入って5分ほど。
オレは退魔刀を片手に、森のなかをゆっくり進んでいく。
綺麗な森だった。
日の光も適度に入り、早朝ゆえのひんやりとした空気が心地いい。
こんなところに、あんな骸骨達がいるのだろうか……。
もうしばらく慎重に進んで行く。
チッチッチッチッチ。
鳥のさえずり。
色とりどりの野花。
苔むした石。
……のどかだ。
やっぱりこんな森に、あんな不浄な感じのものがいるとは思えない。
あれって実体化してるとはいえ、悪霊……なんだよな?
そういうのが出るのって、お墓とかお堂とか、曰く付きのトンネルとかじゃないのか?
とても骸骨などいそうになく、不安になってくる。
いや、いたらいたで怖いけど、なんとか骸骨を狩ってお金に換えて、温かい食べ物を二人に買っていかなきゃいけないんだ。
それもなるべく早く。
さらに5分ほど進むと、森が深くなってきた。
草木が鬱蒼と茂り、辺りは薄暗い。
そういえばこの世界って、熊とか野犬とかいたりするのだろうか……?
少し考えなしだったかもしれない。
見渡しの悪い茂みだらけのなかで、ちょっと怖くなる。
そのとき、わずかに物音がした。
ぎしっ、ぎしっと軋む音。
聞き覚えがある……骸骨の歩く時の音だ。
オレはそっと、近くの大きな茂みに隠れる。
ぎしっ。ぎしっ。
およそ20メートル先。
向こう側の茂みも大きくよく見えないが、何かが動いている。
ぎしっ。ぎしっ。ぎしっ。
軋む音が大きくなってくる。
こっちに来ている……。
自然と息を止める。
ぎしっ。
…………。
軋む音が止まった。
この茂みのすぐ向こう側だと思う。
だが、ここからは相手の姿が見えない。
……顔を出して確認したいが、この距離。
出した瞬間ばれるかも。
ていうかもうバレてるのか!?
どうする?
そんなの、やるしかない。
骸骨を狩る為に来たんだ。
オレはポケットにそっと手を入れ、前もって拾っておいた『拳大の石』を握る。
よし。
3《さん》──2《にい》──い
──『ギシュアアア!』
骸骨が飛びかかってきた。
「──っ!!」
石を頭蓋骨めがけて投げる!
──ガッ!
半分砕けた。
骸骨がよろける。
退魔刀で腰椎をぶっ叩く! 折れた!
倒れる骸骨。
畳みかけて頭蓋骨に一撃!
いや、二撃! 三撃! 四撃!
……粉々になった。
一応脚も壊す。
骸骨は完全に動かなくなった。
「……や、やった?」
息を吐く。
呼吸を止めたままだった。
苦しい。
辺りを確認する。
他にはいないようだ。
しばし骸骨を見下ろしていると黒い煙が出てきた。
そして骸骨が消える。
残ったのは、『ボロボロの鎧』と一本の『黒い骨』。
刀は持っていない奴だった。
一応、手を合わせてから『黒い骨』を拾う
あまり触りたいものではないが、我慢した。
……少し熱い。熱を帯びている。
この骨が呪物……、骸骨の魂が宿っているモノ。
……やった。
やったぞ!
神社の時も中央区へ避難する時も、襲ってくる骸骨を退けた事はあるが、自分から狩りに来てちゃんと倒したのは初めてだ。
さっそく『黒い骨』をホテイ袋に入れ、換金所まで走る。
少し考えがあった。
まず一体倒して、一度すぐ戻る計画。たぶん10分くらいで着くだろう。
ボロボロの鎧はそのまま捨て置いた。
しっかりしたまだ使えそうなものなら買い取ってくれるらしいが、ボロは駄目だと換金所のおねーさんから言われていた。




